18.気持ちいい馬鹿
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:気持ちいい馬鹿 必須要素:体の一部がシャコになる
「次、山田、いきまーす!!」
大声とともに斜めから助走をつけていく山田。対峙するのは自分の背丈よりもやや低い位置に設定されたバー。
ジャンプの瞬間、背中を反るようにして飛び込むも。
「いでっ」
失敗。バーとともに着地し、山田をため息をついた。
「まただめかー。俺は何度挑戦すればいいんだ」
「どんまいどんまい、もう一回やってみようぜ」
同じく走り高跳びの練習中である佐藤が手を叩き、仕切り直しを告げる。
二人は陸上部というわけでもないし、別に体育で走り高跳びがあるわけでもない。
ただなんとなくやりたくなったから、無理を言って放課後器具を借りただけである。
「じゃあ次はオレな、いくぞー!」
なにを血迷ったか真正面から全力疾走し、届くはずもないジャンプでバーと衝突する佐藤。
「お前バー超える気あんの?」
「一回試してみたかったんだよね」
本能に忠実。怪我がなくてなによりである。
続けて山田。背面を諦めて今度はベリーロールで飛び越えようとするも、またしてもバーは倒れてしまう。
「空が飛べればこんなもん簡単なのになあ」
マットで大の字をしたまま、山田は大空を見上げる。
なんとなくで始めた走り高跳びだが、やっぱり成功しないと悔しい思いがある。
思わず手に力が入る。今度は膝をぐっとバネのように伸ばす感じで飛んでみよう。
次は上手く跳んでみせる。そう決意した瞬間――
――佐藤が降ってきた。
「おわあ!?」
「あ、悪い」
この佐藤、バーを戻さずそのまま背面飛びをかまし、まだ山田がマットにいるにも関わらず飛んできたのである。
危険極まりない行為に、山田は心臓をバクバクいわせながら怒った。
幸い、お互いに怪我はない。
「ば、ば、バカタレ! あぶな、危ないだろ!」
「いやー面白かった! 見た? オレの背面飛び。結構反ってたぜーまるで体の一部がシャコになったみたいだ!」
「そこはエビじゃねーのかよ……」
やり遂げたかのように爽やかな笑顔を見せつける佐藤。失敗成功とか彼にとっては二の次であり、一番は面白いか楽しいかだ。
山田はすっかり怒る気力を無くしてしまった。
「まったく、お前ってほんと馬鹿だよな」
「おう! 馬鹿上等! 次はお前の番だからなー!」
「……ああ、見てろよこのやろー」
山田は確信する。
残りの高校生活、この馬鹿と過ごせば絶対に退屈しないだろう。
シャコになったところで15分オーバー。
食べたことはない。




