139_シンプルなお天気雨
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:シンプルなお天気雨
不思議なことに、彼女は雨を降らす能力を持っている。
教室では僕と彼女は一番後ろの席であり、彼女が窓側で僕はその隣。たんなるクラスメイトでありお喋りする間柄ではないのだが、授業中退屈そうに窓を眺めている彼女がふと気になっていた。
眠たそうな横顔が妙に凛々しくもあり、頬杖立てている腕はとてもか細い。
今日のような真夏日では、彼女のような白い肌はあっという間に日焼けしてしまうのではないだろうか。
「……ふふ」
彼女が小さく笑うのを、僕は聞き逃さなかった。
次の瞬間、外は晴れているにも関わらず雨が降り出した。
グラウンドで体育中である他クラスの生徒は当然困惑し、わーわーきゃーきゃーと騒々しくなっている。
「……うぷぷ」
彼女が笑いを堪えきれていない姿を、僕は見逃してはいない。
もしかして、このお天気雨は彼女が降らせたのではないか?
何故なら僕は、この瞬間を何度も目撃しているからだ。初めは一週間前、続いて三日前、昨日、そして今日だ。
彼女はその力を使って、わざと晴れている日に外で体育をしている生徒にいやがらせをするために雨を降らせているに違いない。
理由は単純、授業がつまらないからだ。
退屈しのぎに雨を降らせては外の光景で暇をつぶしているのだろう。
実にくだらない、実に阿保らしい。
もっとなんかこう、世のため人のために尽くせるような使い道はないのだろうかと思うときもあるが、いまの彼女は実に満ち足りた表情をしている。
きっとこれからも、彼女の退屈しのぎは続くのだろう。
それをずっと見ている僕もまた、なんてくだらない男なのだろうか。
だが、席替えはしないでほしい。
僕も彼女のいたずらを楽しんでいるのだから。
日常的魔法使い。
用途は主に暇つぶし。




