138_ぐちゃぐちゃの小説
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:ぐちゃぐちゃの小説 必須要素:ちょんまげ
「これは……小説?」
小川後輩は目を丸くして、開かれた本の見開きページを覗き込む。そこには構成なんてあったもんじゃない、余白を許さないように無数の文字が乱雑に散らばっていた。
縦に横に斜めに、挙句の果てには逆さま反転とあらゆる角度視点で読める読めない文字様々。
「なんつーか、ぐちゃぐちゃなんですけど」
「まあ、もっとよく読んでみたまえ」
織田町先輩に催促されるまま、小川後輩は怪訝な顔でもう少しこのぐちゃぐちゃのページに目を向ける。
いくつかの部分から読み始めようとしたのだが、いずれも文章にはなっていない。それどころか熟語や言葉として成り立つ文字構成とも思えないものばかり。
ただ一つ、小川が理解できた文字は。
「……ちょんまげ」
『ちょんまげ』と文字が並べて表記されているわけではない。しかし、少し目を離してページ全体で見ようとすると、ち、ょ、ん、ま、げとそれぞれの文字だけが異様に目立ってしまう。
何故かちょんまげをピックアップできるような視覚効果が、このページには仕組まれていたのであった。
「辿り着いたようだね」
「……ちょんまげ」
そこに深い意味はない。小説とは名ばかりのもので、ただちょんまげだとわかってほしいだけの魂のページ。
今日も無駄な時間を過ごしたと、小川後輩は織田町先輩をちょんまげヘアーに変えて帰宅するのであった。
なにこれえ。
辿り着きとうなかった。




