128.私の魚
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:私の魚
まずは手始めに焼きそばを貪り、続いてたこ焼きイカ焼き焼きトウモロコシと焼き系を堪能する。
甘い物にわたあめとチョコバナナを挟み、ジャガバターとフランクフルト、ケバブタコスを豪快にかぶりつく。
夏祭りといえば射的や輪投げといった遊戯屋台には一切見向きもせず、ただ食べることだけに専念するトヨカワアカネ。これだけ食べても彼女の腹は大した出っ張りを見せず、見た目は華奢そのもの。
最終的にかき氷で口の中をさっぱりさせ、アカネの夏祭りは終わりを迎え……ようとはせず、隅にある金魚すくいに目を付けた。
「珍しい、あんたが食い物以外の屋台に手を出すなんて」
「たまにはね」
一緒に夏祭りに来ていた友人のマツダがひどく感心する。色気より食い気を常とするアカネがやるはずもないと思っていただけに、どういう風の吹き回しだろうと首を傾げている。
「ちなみに金魚は食べ物じゃないのよ?」
「知ってるよ食べねーよ」
そうして金魚すくいにチャレンジするアカネ。マツダは後ろで腕を組んで様子を見ている。
「あんた、金魚すくいやったことあるの?」
「ない。初めて」
「やり方はわかるの?」
「これですくえばいいんでしょ」
虫眼鏡を覗き込むようにアカネはポイを眺める。
これで水の中をすくえば金魚は容易く取れる。しかしアカネには一つ誤算があった。
「破けた!?」
「知らなかったのか……」
ポイは水につけるとふやけて破ける。その仕様を知らなかったアカネは、あっさりと三百円を棒に振ることとなった。
「それでも一匹くれた」
「よかったねやさしいおっちゃんで」
参加賞ならぬ残念賞だが、アカネは満足そうな表情で袋に入った金魚を見つめる。
「で、なんでやろうと思ったの?」
「あんた、わたしと一緒にいても全然食わない」
「私は小食だからね」
「あんた張り合いない、だからこの子にたくさんエサあげる」
「なんで急にカタコトなんだよ」
マツダがアカネを軽く小突くと、二人は笑い合う。
「この金魚がたくさんご飯食べてるときに、わたしもたくさんご飯を食べるのよ」
「ほう」
「つまるところ、大食い仲間が欲しいわけ。この子は食欲旺盛だといいなあ」
アカネの考えはよくわからないと、マツダは内心呆れている。
だけど、ご飯を食べているときはいつも幸せそうなアカネだから、きっと大食い仲間が増えればもっと幸せになるのだろう。
お前ら太るなよ、と苦笑いであるマツダであった。
夏祭りの時期。
ここ十年以上行ってないな……




