125大好きな嘘
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:大好きな嘘 必須要素:即興イラストのステマ
「ねえねえこの絵知ってる? これっていま話題の絵描きさんなんだよー」
アイハライズミは、今日も学校でスマホから保存している画像を友達に見せつける。
その画像とは、名前を聞いてもピンとは来ない、どこにでもいるような絵描き。それでもイズミはその絵描きの投稿イラストを欠かさずチェックし、それを友達やネットの知人に広めていた。
イズミの宣伝は大した効き目はなく、絵描きの人気も知名度も上がることはなかった。
「ほら、こんなたった三十分で描いたんだって。すごくない?」
「すごいとは思うけど……ねえ、それよりさ」
イズミの友人は苦笑いで話題を変えていく。友人としては正直、イズミの推す絵描きはお世辞にも上手いとは思えず、どちらかといえば苦手の部類である。
それでもイズミが有り余るほどの熱意をもって推してくるので、悪く言うことはできなかった。
ただ友人が思えるのは、イズミはこんなにもこの絵描きが好きなんだなというのはわかっている。
その情熱が友人には少し羨ましかった。
「はあ、今日もダメか」
「あのさ、もういいって」
イズミの部屋で、普段は見せない落胆顔のイズミともう一人。
イズミの推す絵描きであった。
「でもでも、本当にあなたの絵は素敵だと思うもん。これが評価されないのは見れくれる人が少ないからだよ」
「んなわけないから」
筆は速くとも単純に画力不足であり、人を惹きつけるようななにかが足りていない事実を、絵描き自身は重々承知している。
イズミと絵描きは幼馴染みであり、ふとしたきっかけでネットに絵を上げているのがイズミにバレてしまった。
それ以来イズミは絵描きとは接点がないかのように、ステルスマーケティングもどきを仕掛けているのだが……結果は全くもって奮わない。
「イズミもさ、無理に私の絵を推さなくたっていいんだからね。私はただ描ければそれで充分なんだからさ」
「えー、どーせなら世界中の人に見てもらおーよ! あなたの絵がいずれゴッホやピカソに並ぶくらいにさ!」
「……できると思う? 私に」
「できるよ! あなたならきっと!!」
絵描きは笑う。励ましにしては大袈裟極まりないが、なんだか心が楽になる。
「あ、そうそうこれ伝えるの忘れたよ!」
「なに?」
「この前ね、あなたの絵がすっごく好きって言う友達が一人いたんだよ! これでまたファンが新たに増えたね!」
まるで取って付けたような嘘であるが、絵描きは思わず「ありがとう」と返す。
イズミにとって、それは大好きな嘘だった。
終わり方がイマイチ。
まとめあげる難しさよ。




