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123.怪しい不動産

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:怪しい不動産 必須要素:チョイ役

 見るからに怪しい不動産の営業マンからしつこくおすすめされ、観念するように購入してしまった格安賃貸物件。

 初めこそは憂鬱な気分が一向に晴れないヒロシゲだったが、住めば都か早三年、すっかり愛着のある住居へと化していた。


「なあ、歯磨き粉知らない?」


 ある日の休日。熟睡中のヒロシゲを起こすように野太い男の声が響き渡る。

 寝ぼけ眼で時計を見やり、ヒロシゲはあくびを何度も唱えた。


「なあ、歯磨き粉」

「洗面所の二番目の棚に買い置きがあるよ」

「さんきゅ」


 野太い男の声は止み、ヒロシゲは再び二度寝を敢行する。まだというかもう朝の十時ではあるが、ヒロシゲにとってはまだまだ起床時間には早すぎる。

 ちなみにヒロシゲは独身であり、同居人など存在しない。

 だが、この家には何百人もの幽霊が住み着いていた。


「早く起きなきゃ昼だよアンタ」


 今度は不機嫌そうな女性の枯れた声。いまにも叩き起こされそうな圧を感じたヒロシゲはしゃきっと起き上がった。


「トイレ……」


 まだうとうとしなががらもトイレに向かうも、内側からノックをされてしまう。


「入ってまーす」


 爽やかな声でそう返事されてしまえば待つしかない。数分経ってノックし返しても返事はなく、気にせず中へ入ると誰もいなかった。


「シャワー浴びたい」

「野球が見たいんだけど」

「ここ電波悪すぎない?」

「宅配便今日こないのかなあ」


 千差万別、幽霊の波は絶えず沸き、ヒロシゲの家は鎮まることを知らない。

 格安賃貸にはワケがあるというがここまでとはさすがのヒロシゲも思わなかった。

 だが、別に嫌という感覚は全くない。

 むしろヒロシゲにとって、とても懐かしい気持ちになるくらいだった。


 ヒロシゲは五男六女の三男であり、実家は叔父叔母の子どもを含めれば二十人を超える大家族。

 毎日が慌ただしく静寂とは無縁の環境だったため、逆に静かな空気だとどうしても落ち着かない。

 ここの家にいる幽霊達はほとんどが新顔チョイ役のように入れ替わりで現れるため、一人一人は覚えていない。

 特にヒロシゲに対して害を成す者はいなく、話しかけてきたり生活感あふれるような振る舞いをされたりするばかり。

 それがヒロシゲにはにぎやかでとても楽しかった。


「さて、買い物行ってくるか」

「オレ留守番するわ」


 ヒロシゲは苦笑しつつ着替え、玄関へ向かう。

 そして、ドアを開けて一言呟いた。


「じゃあ、いってきます」

「いってらっしゃい!!!!」


 何百人もの送る声が、ヒロシゲの耳をつんざいた。

 今日もヒロシゲ家は元気である。

ちょっと15分オーバー。

昨日のがあまりにも不甲斐なさ過ぎたのでリベンジ。

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