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120.捨てられた決別

「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。

お題:捨てられた決別 必須要素:小説

「うーん」と唸りをあげながら、ミツヒロは一冊ずつ小説の本を重ねていく。

 いずれも話題となった名作ばかりであり、一度ページをめくれば終わりまでぶっ通しで読んでしまうだろう。

 そんな珠玉の本を開かずに、ただ意味もなく積み上げていくミツヒロ。

 買ったはいいが忙しさにかまけて読むことをせず、時間が空いたと思えば読書に費やそうとはしない。

 結局一度も目を通していない本ばかりが並んでいる。いまも読もうと決心したのだが、どうにも億劫になり積み木へと役割を変えていく。

 あくびをしつつ、ミツヒロはふと考える。こうした積み本が増えていくのはいつからだろう。


「ごめんね、私、文学的な人が好きなの」


 小説を読み始めたきっかけは、とある女性にフラれてから。漫画ばかりの読書から小説を手を出した。

 始めは活字のみの構成に慣れないでいたが、段々と想像力、理解力が高まり、日々の読み物といえば漫画ではなく小説になるまでに。

 新作だけでは飽き足らずいつしか図書館に足を運ぶようになり、ついには自らも筆を執ろうともした。しかし、読むと書くでは別物であり、結局挫折をしてしまうが。

 すっかり文学的になったと自負するミツヒロ。改めてフラれた女性に再アプローチを仕掛けるも。


「ごめんね、正直あなたが好きじゃないの」


 それ以来、ミツヒロは本を読めなくなった。

 ところが、どうしても本を買うのをやめられない。もうとっくにフラれた女性には未練がなく、読書自体が好きになってしまったから女性に関係なく読もうと試みるのだが、どうしてもページが開けない。

 深層心理でミツヒロをそうさせているのかはわからないが、数年経ったいまもまだ払拭できないでいた。


「…………」


 大量の積み本を前にして、ミツヒロは決心する。


「捨てよう」


 本を読まなくても生きていける。このままほこりをかぶるくらいなら、捨てるなり売るなり寄付するなりしたほうがずっとマシだ。

 そう思った瞬間、ミツヒロの心が一気に軽くなる。

 未練は、本の数だけあったのだ。


「……よし!」


 両手で頬を強く叩き、ミツヒロは立ち上がった。

 ――本とは決別し、次からは野球にしよう。

 ミツヒロがいま恋焦がれている女性は、野球観戦が趣味であった。

過ちは繰り返す。

次は野球がトラウマになることでしょう。

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