12.ゆるふわ愛され秋雨
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:ゆるふわ愛され秋雨 必須要素:学校使用不可
嫌なことがあったとき、僕はいつも秘密基地で過ごすようにしている。
ちょっと遠くの原っぱで、誰にも見つからないように作ったダンボール製の秘密基地。
雨の中、急いで僕は走る。急に降ってきたので傘は持っていない。
いつもは僕だけ使っていないはずなのに、今日はすでに先客がいた。
「あ、おじゃましてま~す」
僕と同い年くらいか少し上か、ふわふわの長い髪をした女性が手を振りまいて僕を迎えていた。
ただ、この人を知らない。
「……だ、だれ?」
「あ~ごめんさい、ちょっと雨宿りしてるだけなので」
「どうしてこんなところで雨宿りを?」
「ん~、この近くを歩いてたら急に雨が降ったから?」
僕が聞きたかったのは、どうしてこんな人気のところを歩いていたのかだが、もうどうでもいいやとため息をつく。
自分だけのために作った秘密基地なので、二人入るにはいささか手狭だ。
「あなたもどうぞ? そのままだと濡れちゃいますよ~?」
手招きされ、言われるがままに隣に座る。やはり狭く、少し肩が触れ合ってしまう。
女性は全く気にしていないようだが、僕はちょっとドキドキする。
「このダンボールハウス、あなたが作ったんですか?」
「うん、僕だけの秘密基地だったんだけど……」
「あ~……出てったほうがいいですかねえ」
「いや、いいよ別に。雨が止んだら出てってくれれば」
「優しいのか厳しいのかわからない人ですね~」
しとしと降り注ぐ雨に加え、流れるように風が吹く。夏が終わったあとの風は、少し寒い。
しかし、この女性は何者なんだろう?
「わたし、秋雨って好きなんですよね~。夏で溜まった暑さを冷やしてくれる感じがしますし、雨の音を聞いてると落ち着くんですよ」
「なんとなくわかる気がする」
「ですよね~、あら、ねこさん」
白猫がとことこ近づいてくる。こんなこと初めてだ。
「かわいいですね~。あら、今度はすずめさんも」
「なんでこんなに……」
僕一人のときは虫も寄ってこないのに不思議だ。
この女性から、動物に好かれるようなにおいでもするのだろうか。
しかしなぜだろう。落ち着かないはずなのに、本当は一人でのんびり過ごしたかったのに。
この時間が、とても落ち着く。
「最初悲しそうな顔していましたけど、いまはだいぶ元気そうですね~」
「え? ああうん、おかげさまで?」
「それならよかったです~」
女性が可憐な笑みを見せると、つられて僕もほほ笑んでしまう。
「……あのさ、これからもここに来ることってある?」
気づけば女性の姿はいなくなっていた。
「……あれ?」
同時に、秋雨が止んでいた。
残ったのは、僕と白猫と数羽の雀。
それは夢か幻か。
数年経ったいま、秘密基地はすでに撤去されてしまった。
それでも僕は、あの日の出来事をずっと忘れない。誰にも話せない夢物語だが、僕の心にはずっと残っている。
いまでも僕は、秋雨が降ると心が安らぐ。
お題難しすぎる。
春雨だったら楽だったんじゃが。




