117.青い何でも屋
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:青い何でも屋
青はいかがですか?
あなたに青が加われば人生青色! 瑞々しい素敵な未来が待っていることでしょう。
価格応相談。いかなる場所いかなる箇所いかなる面なんでも来たれ。
「来ない!!」
青一色で塗りたくられた外装とはうって変わり、内装はバランスの良い配色で彩られている。
アオマキアオイはブラックコーヒーを一口飲み、ゆっくりとテーブルに置く。
そして、吠えた。
「苦いし客来ないしなんなの!! 営業さんタイマンじゃないの!?」
「いつからわたしは営業さんになったのさ」
ブラックコーヒーを差し出した張本人、アカヒアカネはわざとらしく両肩両手を上げる。
それが癇に障ったのか、アオイはさらに吠え出した。
「早くなんでもいいから客を連れてきて! この際タダでもいいから!!」
「単純に青くしたいだけなんでアオイちゃんは」
これ以上アオイの機嫌が最高潮に悪くなる前に、アカネは客探しを始めることにした。
アオイとアカネが住む青い家――通称『青い何でも屋』
仕事内容は至ってシンプル。物体的だろうと肉体的だろうと心情的だろうととにかく依頼された箇所に青を加えるだけ。
やり方はアオイのみが成せる荒業かつ企業秘密。ただ、彼女が請け負った依頼は必ず青く成功する。
正直、アカネはこの仕事がよくわかっていないが、幼馴染みという理由だけでアオイの仕事を手伝っている。
アカネにとって、アオイは妹みたいなものなのだ。
「お、なんか泣いてる子がいる」
そう言ってアカネはわんわん喚く少年を発見する。隣には母親が困った様子でおろおろしていた。
「こんにちはー」と当たり障りのない作り笑いで挨拶し、まずは母親の警戒心を緩めていくアカネ。そのあと、泣いている少年にかがんで声をかけた。
「なんで泣いてるの?」
「風船、青色が良かったのにママが赤色もらってきた。青が良かったのに!」
「もう、我慢しなさい」
「いやだ! 青がいい!!」
くっだらないなあと内心では鼻で笑うアカネだが、愛想笑いで少年の頭を軽くなでる。
「じゃあ、ちょっとお姉ちゃんに着いてきて」
「青い風船くれるの!?」
「あげはしないけど、来てくれれば青くなるよ」
丁度いい仕事が見つかったと、アカネは思わずにっこりする。母親はあやしそうに見つめているが、少年があまりにも嬉しそうだったので警戒しつつもアカネについていく。
そうして戻ってきたのはアオイハウス。
「仕事見つけてきたよ、風船青くして」
「はあ!?」
なんでもいいとは言ったがただ風船の色を変えるだけとは思ってもみなかったアオイ。
十秒もしないうちに赤い風船は青い風船に変わり、親子は礼を言いながら去っていった。
「はい本日の営業さんは活動終了しました」
「ふざけんな!! もっと面白いの探してきなさい!!」
「自分で行けばいいのにー」
どんなものでも青くする青い何でも屋は、二十四時間営業中である。
アオイハウスに戻ってきたところで15分オーバー。
15分だと無理やり終わらせないとそれなりの物語が作れない言い訳。




