112.去年の諦め
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:去年の諦め
「来年の事を言えば鬼が笑うってなら、去年の事を言えばどうなると思う?」
本日のテーマ『来年と去年』
さっそく会長から意味不明のお題を投げられた会員達は、律儀に一人一人考える。
こうした学校にも社会にも世間にも到底貢献されないような活動こそが、マチタニ ヒロノ率いる『何でも話す同好会』である。略して話す会。
「はい!」
「はい、サワさん!」
いの一番に手を挙げたのはタナカ。
にも関わらず、ヒロノは次にに挙手したサワを指名する。タナカは挙げた手をけっして下げない。
「来年の反対だから、笑うの反対で鬼も泣くんじゃないですか」
「なるほど、笑うの反対が泣くときたのね。怒るとじゃなくて」
「まあどっちでもいいですよ。去年のことをくよくよするなって怒るかもしれませんし」
「それもありね。じゃあ次っ」
直立不動。ビシッと手を挙げたままのタナカはさながら自由の女神。
「じゃあミキモトくん」
小さく胸元近くに手を挙げているミキモトに発言権が渡る。それでもタナカは動じない。
「鬼じゃないかもしれないですね。もしかしたら竜とかが笑ってくれるかもしれません」
「着眼点を笑うのは誰かにしたわけね。それも空想の産物」
「なんならユニコーンとかペガサスとかもいいですよね。かっこいいし燃えます」
「あなたの嗜好はどうでもいいわ」
程よく意見交換が行われた後、いよいよ「次で最後にしましょうか」と締めの声。
未だタナカは澄んだ瞳でヒロノを見つめる。その右手、もはや下がることをよしとせず。
「じゃあ最後、タナカ」
正直、ヒロノは指名したくなかった。タナカはいつもテーマとはずれたことを答えるからだ。
面白いときもあるのだが、九割五分はつまらないものばかり。
「つまらなかったら追い出すかんね」
リストラ宣言までされたタナカ。息を呑む周りの会員達。
タナカの未来は、どうなる。
「去年は諦めてましたけど今年こそは言います。会長、好きです!」
「はっ」
――今年の事を言うと鼻で笑う。
なんだこのオチは。
鬼も泣くわ。




