107.肌寒い痛み
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:肌寒い痛み
「嘘だろ……」と思わず呟いてしまう冷気。
トコロザワの部屋に入った瞬間、ヤジマは両腕を胸にくっつけるように組み始めた。
「お前、これ、なんでこんな」
上手く言語化できないくらいの冷え切った部屋。もしも温度計があれば氷点下を差してしまうのではないだろうか。
とても夏真っ盛りとは思えないほどの猛吹雪。半袖短パンで気楽に入っていい場ではない。肌寒い痛みどころか突き刺すような痛みさえも襲ってくる。
そして、当のトコロザワは厳重装備かと言わんばかりに厚着である。
「エアコンが壊れちゃって。ボタン押しても効かないんだよね」
「こわ、こわれ、こ、こわ」
壊れたからってこんなふうになるか! と殴りつけたくなるヤジマだが、手を出せず身震いするばかり。
「暑いよりマシじゃん?」
「マ……」
気を失う前に振り絞ってヤジマは指を差す。
エアコンの電源プラグ。いわばコンセント。
「あー、抜けって?」
「……」
硬直の二文字が相応しい。ヤジマは氷の彫像へと化してしまいそうだった。
そんなことは気に留めず、トコロザワはゆっくりとエアコンの電源プラグを引き抜いた。
吹雪が止んだはいいもののすぐに温まるわけではない。このまま放置されてはヤジマの命が危うくなるだろう。
「ヤッちゃん、大丈夫?」
返す言葉はない。聞く耳すらあるか怪しいところである。
「まいったな……」
トコロザワは首を傾げ、ようやく一つの解決策を見出した。
とりあえず彼を部屋から出そう。
「死ぬかと思った……」
「生きてるから結果オーライだな」
正気を取り戻すまで数十分。その間、ヤジマは何度三途の川を渡りかけたかわからない。
トコロザワに説教と怒りの鉄拳をお見舞いする前に、まずは状況確認。
「あのエアコン、なんでああなった」
ガチガチを歯を震わせながらヤジマは尋ねる。温かいコーヒーを貰ったはいいが歯の震えのせいで飲めない。
「なにもしてないのに壊れた」
ヤジマは心中でツッコミを入れる。
それが一番厄介なんだよ、と。
わけわからない終わり方。
似たような展開を前もした気がする。




