101.記憶の失踪
「即興小説トレーニング」にてお題を頂いて書いております。
お題:記憶の失踪 必須要素:ツイート
一つのツイートが話題になった。
『どうか、私が失った記憶を探してくれませんか?』
そこにはなんのヒントも手がかりもない、いたずらのような内容。プロフィールは空欄でユーザー名は●という一文字。呟き総数も上記のたった一つだけ。
放っておけば埋もれてしまいそうなツイートだが、興味本位で誰かが適当に返信をした。
『お前はとても明るい女子高生だよ』
その返信をきっかけに、●は変わった。
『おっはよ~! 今日も元気に登校だよ!』
空虚だったプロフィール欄はびっしりと埋まり、ツイート内容も分単位で投稿されるように。
アイコン画像はどこかの高校の制服を着た女性であり、満面の笑みを浮かべてピースしている。
『授業中にこっそり内職、すごくはかどるっ』
『あーあ、アイツと同じクラスがいいなあ』
『友達とお昼! 学食混みすぎー』
それはまさに、学校生活を楽しむ明るい女子高生の呟き。なかには写真付きも投稿されており、本当に元から明るい女子高生だったかのよう。
フォロワー数も増えたところで一日が終わり、日付が変わる三十分前のことだった。
『失った記憶、誰か探してくれる?』
今度は短い間隔で複数の返信が飛び交うなか、きわめて早い返信があった。
『きみはぼくの親友だよ!』
翌日、●のプロフィールは一変する。
ところどころひらがなが混じり、幼さが残るような文章。アイコン画像も女子高生から人気ゲームのキャラクター。
ツイート数は以前に比べて少なくなったが、きわめて目立つ部分があった。
前日の夜にいち早く返信したユーザーとのやりとりが多くなっている。他愛のない内容だがそれが余計に親近感を覚え、本当にこのユーザーと●が親友なのかと思えるほどだった。
そして、一枚の写真付きのツイートが投稿される。
『こいつこのゲームつよすぎ』
リザルトが映るゲーム画面を前に、悔しがっている少年と嬉しそうな少年の姿。親にでも撮ってもらったのかわからないが、この二人が●と親友のユーザーなのだろう。
まるで、初めから実在したかのような。
『ぼくの記憶を誰か探してください』
今日の夜も、また記憶を求めるツイートがされた。
自分に都合の良い記憶を植え付けるために、誰もが我先にと返信をする。
明日の●は、どんな記憶を手に入れるのだろうか。
きみはぼくの親友のあたりで15分オーバー。
もっと続くはずだったけど長くなりそうだったので打ち切り。




