表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

仙道企画その3(麦畑のあぜ道)

作者: 天海波平
掲載日:2022/03/02

仙道企画その3の参加作品です。



 小さなあぜ道の中、カポンカポンと蹄が小気味良いリズムを奏でている。

 

 空は蒼く澄み渡り、その中をトンビが鳴きながら大きな輪を描いていた。

 そして、その輪を(また)ぐかのように白く大きな雲が二つ、ゆっくりと流れていく。

 まるでいまの私たちのようだ………


 見上げた視線を元に戻す。

 私は荷物を積んだ一頭のロバと一緒に、あぜ道をゆっくりと進んでいる。

 

 あぜ道の両端には、くたびれた木の柵がされており、それは先が見えない程に長く続いている。

 柵の向こうは一面の麦畑だ。

 もう間もなく収穫の時期だろう。

 緩やかな風に揺られてなびき。

 黄金の麦穂は太陽に向かって喜びのダンスを捧げていた。


 所々、小さな水溜まりがある。

 昨日までは嵐だった。

 そのせいで数日間、足留めにあっていたのだが、今朝は久しぶりに爽やかな朝を迎えることが出来た。


 うん………

 これから先も嵐のような日に会うこともあるだろう。

 これまでの道のりは決して楽では無かった。

 苦しい事も悲しい事も経験した。

 何度も何度もこの旅を諦めようと、辞めようとした。


 だけど………

 旅の中で色々な人と私は出会い。

 その人達に助けられて此処にいる。

 歩いていられるんだ。


 たぶん………

 いいや絶対に、これからも悩み、苦しみ、悲しみは訪れるだろう。


 だけど…… だからこそ……

 私は歩き続けるんだ。

 過ぎ去らない嵐なんて無いんだ。

 こんな所で挫けてちゃ、みんなに笑われる。

 助けてくれたみんなから、私は笑顔で送り出されてきたんだ。

 その笑顔が別なものに変わってしまう。

 それは嫌だ! 絶対に!


 みんなの笑顔が私の宝物。


 たとえ…… もう会うことが無くても……

 たとえ…… 一人ぼっちになったとしても……

 

 ブルルッ


 隣のポルコ(ロバ)が急に首を横に振った。

 ちょっと驚いたけど、直ぐに私は笑みを浮かべる。


「ごめんなさいポルコ。あなたがいたわね。ふふっ」


 そう……

 寂しがったり、悲しんでばかりでもいられない。

 旅はまだ続く、続くんだ。

 楽しいこと、嬉しいこともあるんだ。

 あるはずなんだ。

 立ち止まってなんか居られない。


 今までに出会った人々の面影が、いまの私を支えてくれているように感じる。

 ううん、絶対に支えてくれているんだ。


 初めは言われて始めた旅だけど、その旅の中で私は本当の意味での私に出会うことが出来た。


 それは余りにも軽率で矮小で弱々しいものだった。


 そんな弱々しい私が此処まできたんだ。

 此処まで来れたんだ。

 此処まで来れた私を、私自身が誇れなければ私に優しくしてくれた人に申し訳が立たない。

 私を認め、笑顔で送り出してくれた人に申し訳が立たない。

 ここで諦めたら、それは出会った人たちへの裏切りだ。


 この旅に目的地は無いのかも知れない。

 いや、この旅の中にこそ目的はあるのだろう。

 だから私は旅を続ける。


 旅をする私が……… 多くの人に出会った、その私こそが「いまの私」として私でいられる。


 それが…… たぶん……

 

 この旅の「目的(希望)」なのだろう。


曲を聴きながらイメージするのが楽しい。


いや本当に。


仙道さま、ありがとうございました♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 私の中で『あぜ道』といえば本当にあぜ道で、水を貼った田のへりであり、水が漏れないよう土を盛って包んだ場所のことを意味し、幅は30cmもない。そんな道を意味するのですが、そういや世間一般では…
[良い点] どこかほのぼのとした情景と、「私」が抱く決意との対比がグッときました! 嵐があって、晴れがあって……それは我々の人生でもそうですよね、そしてあけない嵐はないと。 その通りだと思います!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ