仙道企画その3(麦畑のあぜ道)
仙道企画その3の参加作品です。
小さなあぜ道の中、カポンカポンと蹄が小気味良いリズムを奏でている。
空は蒼く澄み渡り、その中をトンビが鳴きながら大きな輪を描いていた。
そして、その輪を跨ぐかのように白く大きな雲が二つ、ゆっくりと流れていく。
まるでいまの私たちのようだ………
見上げた視線を元に戻す。
私は荷物を積んだ一頭のロバと一緒に、あぜ道をゆっくりと進んでいる。
あぜ道の両端には、くたびれた木の柵がされており、それは先が見えない程に長く続いている。
柵の向こうは一面の麦畑だ。
もう間もなく収穫の時期だろう。
緩やかな風に揺られてなびき。
黄金の麦穂は太陽に向かって喜びのダンスを捧げていた。
所々、小さな水溜まりがある。
昨日までは嵐だった。
そのせいで数日間、足留めにあっていたのだが、今朝は久しぶりに爽やかな朝を迎えることが出来た。
うん………
これから先も嵐のような日に会うこともあるだろう。
これまでの道のりは決して楽では無かった。
苦しい事も悲しい事も経験した。
何度も何度もこの旅を諦めようと、辞めようとした。
だけど………
旅の中で色々な人と私は出会い。
その人達に助けられて此処にいる。
歩いていられるんだ。
たぶん………
いいや絶対に、これからも悩み、苦しみ、悲しみは訪れるだろう。
だけど…… だからこそ……
私は歩き続けるんだ。
過ぎ去らない嵐なんて無いんだ。
こんな所で挫けてちゃ、みんなに笑われる。
助けてくれたみんなから、私は笑顔で送り出されてきたんだ。
その笑顔が別なものに変わってしまう。
それは嫌だ! 絶対に!
みんなの笑顔が私の宝物。
たとえ…… もう会うことが無くても……
たとえ…… 一人ぼっちになったとしても……
ブルルッ
隣のポルコが急に首を横に振った。
ちょっと驚いたけど、直ぐに私は笑みを浮かべる。
「ごめんなさいポルコ。あなたがいたわね。ふふっ」
そう……
寂しがったり、悲しんでばかりでもいられない。
旅はまだ続く、続くんだ。
楽しいこと、嬉しいこともあるんだ。
あるはずなんだ。
立ち止まってなんか居られない。
今までに出会った人々の面影が、いまの私を支えてくれているように感じる。
ううん、絶対に支えてくれているんだ。
初めは言われて始めた旅だけど、その旅の中で私は本当の意味での私に出会うことが出来た。
それは余りにも軽率で矮小で弱々しいものだった。
そんな弱々しい私が此処まできたんだ。
此処まで来れたんだ。
此処まで来れた私を、私自身が誇れなければ私に優しくしてくれた人に申し訳が立たない。
私を認め、笑顔で送り出してくれた人に申し訳が立たない。
ここで諦めたら、それは出会った人たちへの裏切りだ。
この旅に目的地は無いのかも知れない。
いや、この旅の中にこそ目的はあるのだろう。
だから私は旅を続ける。
旅をする私が……… 多くの人に出会った、その私こそが「いまの私」として私でいられる。
それが…… たぶん……
この旅の「目的」なのだろう。
曲を聴きながらイメージするのが楽しい。
いや本当に。
仙道さま、ありがとうございました♪