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黒に堕ちる  作者: 碾貽 恆晟
本編
6/13

第肆話






 そうして僕らはいつもの食事場所、屋上の扉の前の階段へ向かった。


 天井の照明器具の光は弱く、その階段は仄暗く見える。


 屋上の扉には鍵が付いているのでここに来る人は本当に少ない。


 僕と水屋を除いたら一人だけだ。


 苗字は桐口きりぐち、名前は知らない。


 毎日会って話しているので、驚きはしない。


 桐口は階段に腰をかけて市販のパンを食べていた。


 僕等もそれに倣い、階段に腰をかける。


 そして、弁当入れから弁当箱を取り出して蓋を取る。


 今日の昼御飯は、御飯と……あれ?


 御飯だけ⁉︎


 御菜おかず無し?


 僕の手は震え、今にも弁当を取り落としそうだ。


 『こんな事が有っていいのか‼︎』と心の中で叫んだ。


 僕は愕然とした。


 まるでこの世界が僕に対して悪意を持っているようにすら思えた。


 嗚呼、この世界の神よいったい私が何をしたと言うのでしょう。


 兄が冷えるまで待とうと思っていたプリンを食べたのがいけなかったのでしょうか。


 それとも、母が買ってきたケーキを勝手に一切れ食べた事がいけなかったのでしょうか。


 やはり、父が毎朝飲んでいる珈琲コーヒーの豆を勝手に使って飲んでしまったのがいけなかったのでしょうか。


 嗚呼、それとも、食べ物の事ではない事。


 兄の一人部屋、一人掛けのソファのウエスタンとカバーの間に隠してあったグラビア誌、パソコンの閲覧履歴を見たのがいけなかったのでしょうか。


 それとも、それとも、その事を兄の彼女であり、我等が親友こと日当ひなた せりに『今時グラビア誌を買うなんて我兄ながら通だよね、もちろんそれだけじゃなくてインターネットの方も見ているみたいだけど』と暴露したからだろうか。


 はたまた、近所の駄菓子屋の小母さんに『母親は最近お菓子を食べ過ぎたらしく、3kg位肥ったらしいんですよ』といったからだろうか。


 それか、今回の会社のボーナスを父親が使えないということを酒の肴がわりに笑い話として叔父さんに面白可笑しく喋ったからでしょうか。


「どうしたんだ?」


 僕は懺悔(?)から引き戻され現実を直視しなければいけなくなった。


 水屋が俺の弁当を覗き込み、口に含んだ水筒の中身を吹き出した。


「ぶっ。お前、白米だけって、どんなことをしたんだよ」


「何もしてないよ、ただ我最愛たる兄の大事に冷蔵庫にしまっていたプリンを(以下、ほぼ同文)。

 それと、吹き出すな。汚い」


「あぁ、わりい。

 それより、お前そんなことをしたのかよ。

 まぁ、それなら白米だけってのも頷けるな」


「そんことがあるか‼︎

 誰にも暴露ばれていないはずなのに、芹姐せりねえには『兄には言わないでね』って言ったし。

 駄菓子屋の小母さんにも『ここだけの話だ』って念を押したのに。

 もちろん、叔父さんだって『こんなことを言ったって暴露たら父親に怒られるから言わないで』って泣き落とし(嘘泣きで)したあと再三言ったんだから」


「お、おぉ。そうか。だけどそれって随分昔の話だってあるだろうからどれか一つぐらい暴露たって可能性も……」


「有り得無いよ‼︎

 だって今言ったこと全部この一週間にやったことなんだから。

 暴露るわけがない」


「おい、今なんて言った」


「だから今言ったことは全部、一週間内にやったことなんだからそんな速く暴露るはずがないんだって」


「おい。

 それって常習犯だから、予めお前が悪口かなんか行っりやったりしたら、教えてくれって近所の人に頼んだり、印をつけてやったことがわかるようにしてあるんじゃないのか?」


「僕がそんなヘマをするわけがないだろ‼︎

 叔父さん以外の人達は家族の話をするのは初めてなんだ。

 事前に予防線なんか貼っておけるはずがないのに‼︎

 どうしてなんだ、暴露ないように人を選んだはずなのに」


「お前、よくそんなに頑張れるな。

 俺だったら無理だぞ。

 そもそも普通はやらないが。

 なぁ、桐口。

 お前だったらどうする?」


「前提として俺はそんな事はやらない。

 よってその話しは成り立たない。

 成り立たない事について言及してする意味がない。

 時間が無駄だ」


「相も変わらず堅いね〜。

 まるで俺たちの周りだけ氷点下273,14℃迄下がったみたいだよ」


「なんで、347,15℃じゃないんだよ」


「それはね、誉瑠……」


「それは?」


「俺は374,14℃では動き・生きていけるが、347,15℃では死んでしまうからさ」


「人間止めてるな」


「よく解ったな」


「そこは否定しろよ」


「事実を言ったまでだ」


「それじゃあ、人ではない水谷の両親は人間なのか?」


「愚問だね、桐口。

 人を超える存在に僕は成ったのさ、下等生物たる人間の枠組みを超え両親はれっきとした人間さ」


「本当か?

 人間を支配するためにやってきた宇宙人か異界人、それに類するものじゃないのか?」


「両親は動物界・脊索動物亜門・脊椎動物亜門・哺乳網・サル目・真猿亜目・狭鼻小目・ヒト上科・ヒト科・ヒト亜科・ヒト族・ヒト亜属・ヒト属で種はヒトのれっきとした人間だ‼︎」


「お前そんな生物の点数、良かったか?」


「俺は天才だぞ」


「自分で言ってて悲しくならない?」


「いいや、全然」


「そうか」


「おい、お前。

 どうしてまるで『可哀想な子』を見るような目をする」


「心当たりはないか、胸に手を当てて考えたらわかると思うぞ」


水谷は胸に手を当て数秒虚空を見つめた後こちらを向き一言。


「無いな」


「そうか、お目出度い奴だな」


 ボソリと桐口が呟く。


「言ったな」


「言ったが?」


 水屋は階段に腰掛けていたが。スゥーッと立ち上がった。


 拳を血が出るのでは無いかと思うほど硬く握りしめ、下唇を切れるのでは無いかと思うほど噛み締めている。


 目は血走り、顔は赤く火照っており、全身で怒りを表しているように見える(*誉瑠視点)


「いい度胸だ。

 その喧嘩買ってやるよ」


「僕は君に喧嘩を売った覚えは無いんだけど」


「『お目出度い奴』っていうのはお前の中では喧嘩を売ったことにはなら無いのか?」


「あぁ、僕は喧嘩を売ったんじゃ無い。

 お前を馬鹿にしただけだ」


「死にさらせ」


 桐口に殴りかかる水屋。


 それを必死に止めにかかる誉瑠。


「野蛮ですね」


 それでも桐口は慌てる素振りもせず飄々ととした雰囲気でそう嘯く。


「桐口。

 お前、煽るなよ。

 こいつ抑えるの大変なんだぞ」


「解ってますけど、ついついやってしまうんですよね」


「そう思うなら改善しろ」


「善処しますよ」


 そう言うと桐口はポケットから腕時計を取り出し時間を見る。


「そろそろ休み時間が終わりますよ」


「じゃあ戻るか」


「そうだな」


「また明日な」


 僕と水屋は桐口と別れ2年3組の教室に戻った。


 もちろん授業には遅れなかったことをここに明記する。






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