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黒に堕ちる  作者: 碾貽 恆晟
本編
3/13

第壱話






 僕には他人の心の色が見える。


 その心っていうのは感情だったり、考え方のこと。もちろん実際に目に見えるのではなくなんとなく頭に浮かんでくるだけなのだが。


 けど、その人の為人ひととなりを知るには役に立つ。なんとなく判るぐらいだが。


 例えば、中学のときの友人、知り合いが入っていた部活などをとってみると判り易い。


 体育系の人は赤などの明るい色が多いいのはこれは僕でなくとも察せられるだろうし、文系の人が青や少し暗い色が多いい、黄色はムードメーカー、もしくは道化のような人が多いいことも判るだろう。所謂イメージカラーが浮かぶと言ったらわかるだろう。


 こんな感じに人の普段から振舞っているときの行動に近い色が判る。


 けれどそれは結局のところ全てにおいて当てはまるわけではない。


 なぜなら、大抵の人は表の色と裏の色を持っているからだ。


 普段表面的に振舞い、意識してそうあろうとしている色。


 もしくは大勢の前で振舞う色、特定の誰かの前でしか振舞わない色。


 それぞれ理由はあれど幾つかの色を持っている。


 二つだったり、三つだったり。


 見やすいのは多くの時間そう振舞っている時の色。


 見やすい色が透けて見えるは、心奥深くにしまっていたり、ある一定の時しか見せない振舞いの色。


 けど、他人の色はどれもこれもわかるのにわからない色が一つだけある。


 僕自身の色。


 鏡に映った自分を見ても頭にイメージカラーは浮かばない。


 だから、自分のイメージカラーは透明色なんだって慰めたりしている。


 あとで、我ながら恥ずかしいことをしているなって思って後悔をするんだけど。


 結局、都合のいいことは忘れてまた同じことを考えてしまう、一種の病気かなんかだと思うことにした。


 今日も、顔を洗うとき鏡を見てそんなことを考えた。


 洗面所から出て、廊下を右に曲がって歩く。


 扉を開けてリビングダイニングの部屋に入る。


 サッシドアから旭が降り注いでいる。


 食卓に用いられる机を横切りサッシドアに近づく。


 今日の空はどこまでも澄み切った青が広がる快晴だった。


 雲一つなく、こんな光景を『空が高い』というのかなと思った。


 いや、今は立冬を少し過ぎた頃だけど。


 少し季節外れかな?


 けど、空が高く感じるのは事実なんだしいいだろう。


「何を見ているんだい?」


 背後から声をかけてきたのは我が最愛の兄、柊木ひいらぎ かなめ


 今日も兄のイメージカラーは僕に綺麗な水色をせてくれる。


 口調が変わったとか、キャラが崩壊しているとか言わない。


 これが兄に対して僕が敬意を表す方法なのだから。


 決して、断じて、兄を揶揄からかうのが楽しいなんていう不純な動機ではないことをここに明記する。


 ほらそこ、ツンデレとか、ブラコンとか言わない。


 おいそこ、ホモいうな。


 僕は正常だ。


「どうしたんだい?」


 何も言わない僕を心配して兄が声をかけてきた。


「あぁ、我が最愛のひとよ。

 僕は今日この日、素晴らしい空を見ていて心を打たれていたのだよ。

 さぁ、一緒に見ようじゃないか、空を見ながら『いいね』って言ったりして。

 まるで心が通っているみたいだろう」


「相も変わらず飽きないの?」


「無粋なことを聞くではないか。

 答えは、もちろん飽きないだ。

 一日中だってやれる。

 それだけ僕の最愛の兄に対する思いは深く、誰にも計れないほどに強いのだから」


「はっはっは、そうだったね」


「それで、今日の空についてどう思う?」


「空が素晴らしいってことには賛同するよ」


 それから数分間 、母親が朝御飯ができるまで兄弟二人は無言で空を眺めていた。






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