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未定  作者: イチノセレンカ
3/4

朝食

「ん...まぶしい...」


昨日は判らなかったが、部屋についているカーテンが完全に閉まりきっていなかったようで、一筋の光が眼前近くに伸びていた。


「...」


寝起きですぐに起き上がらなかった思考が徐々にはっきりしてくる。


そして、思っていた以上に冷静でいられた。


まるで己が内を示すかのような氷の現れ、能力者であることの判明、学園への編入、


「あっ」


「続きは明日」と先生と約束していたが、その先生の居場所を、連絡先、手段を聞かずに寝入ってしまった。


いつもはしないミスをしてしまったことに頭を抱えそうになるが、「まあ、取り敢えず着替えよう!」と切り替えて、制服は無いので持ってきた普段着になった後、改めてここはどんなところか好奇心をくすぐられてカーテンを勢いよく開けると窓の外には緑豊かな風景が広がっていた。


まるで異国にいるかのような気持ちになるが、郷愁よりもこれから始まるここでの生活に胸が躍る。


眼下に広がる芝生で駆け回りたい衝動をなんとか抑えながら身支度を調え、後れてやってきた空腹感を満たすことを考えながら「ヨシカワ先生」を探そうと自室を出た。






僅かに早朝であったことから、なるべく音を立てないようにドアを閉めたおかげでヨシカワ先生からの書き置きに気づくことが出来た。


丁寧に手書きされた案内図をたどると、いかにも「校長室」みたいな部屋の前まで来た。


そう言えば、朝早いせいでもあるのだろうけど、ヨシカワ先生以外の大人を見かけない。


再び好奇心をくすぐられるが、寝起きの空腹もあいまって思案を巡らすことが出来ず、後ろに立っていたヨシカワ先生にも気づけずに驚いてしまった。


「おはようございます。昨晩はよく寝られましたか?」


「おはようございます!はい!久しぶりに熟睡できました!」


「それは良かった、元気そうで何よりです。」


丁度良いタイミングで出会えたらしく、先生は両手で何かをのせている大きめなお盆を持っていた為、彫刻が荘厳にほどこされたドアを開けた。


「わあああ、すごい!」


思わず驚嘆の声をあげる。


大きな窓からは朝のおいしい空気が取り込まれており、左右には床から天井まで本で埋め尽くされていた。


「ここは私の仕事部屋でね、本は個人的に持っていて私が特に読み込んでいるものをここに置いているんだよ。内容は...一瀬さんにはちょっと早いかもしれないね。」


まずは朝ご飯だ、と言い、部屋の真ん中に鎮座している大きなテーブルにお盆を置き、被さっていた布を取ると彩り豊かな具材を挟めたサンドイッチやヨーグルト、フルーツが盛り付けられている。


これを見たことでより一層空腹に響いたので、ここで朝食をとることとなった。







先生と一緒においしいサンドイッチを食べながら、昨日は聞けなかったここでのカリキュラムや規則を教えてもらった。


「義務教育を終えていない子達に関しては全て終えられるように仕組み化していてね、そうでない場合は個人の学びたいニーズに合わせてカリキュラムを作っているんだ。」


「じゃあ、私は義務教育の方に参加する、ということでしょうか?課程が修了したら卒業、で、すか、...?」


「お、気づいたかい?ここの卒業基準。」


なんだか、いたずらっ子のような笑みで返答があった。


「ここの卒業基準はね、『異能の操作能力が一定レベルに達しているか』なんだよね、あくまでも。ただね、だからといって能力操作のカリキュラムだけだと飽きちゃうと思ってね、間で少しずつ義務教育を導入しているんだ。実際、ここの生徒達は、...殆ど能力操作と並行して義務教育にも取り組んでいるのさ。」


「へえ~、......『殆ど』?って、いうことは、」


「おっ、やっぱり気づいたか~。うん、一瀬さんは賢いから先に言うとね、人前に出るのが恐い生徒もいるんだ。でも安心して。うっかり出会うってことが無いように移動区画を区切ってあるから!」


「あっ、そうなんですね。」


「うんうん、あと、カリキュラムはそれぞれ面談をして授業を組み込むのだけど、どれくらいの頻度・割合で1週間の内に参加するか、希望はあるかな?」


「あっ、はいっ、......そう言えば、昨日スキップ制度がある、みたいな話を聞いた気がするのですが.....。」


「おっ、そうだったね。うん、ここにもそういった制度があって、この場合はカリキュラムは組まないで、授業に参加してテストを受けて合格したら次の段階に進むっていう感じだよ。昨日お父様からお話を伺ってね、成績が優秀だってことだから、私個人としては一瀬さんはこっちで学びを深めてほしいと思っていてね。」


「あの、質問があって、」


「うん?」


「その、スキップ制度を利用している人ってどの位ですか...?」


「うん、それなりにいるよ。ただ、かなり進んでいるのは一人だけでね。他の生徒達はマイペースに無理なくする為にって感じだよ。あっ、あと、スキップ制度を利用していても他の生徒達と一緒に授業は受けるからね。課程を進めるごとに人数が減っていくね。」


「ははあ、......。」


うーん、と考え込んでしまう。


「うん、直ぐに答えを出さなくて大丈夫だよ。」


そう言ってメモ用紙に走り書きをして、近くにあった書類に目を通して閃いたように言葉を続ける。


「あっ、そうそう、能力操作についてまだ何も話してなかったね。これに関しては、今日模擬戦をするからその時に話そうか。その方がわかりやすいだろうから。」


「あっ、はい、わかりました!」


ここで私はハッとなった。


「あの、もし可能であれば学園案内や能力操作の基準などが書かれた資料をいただけないでしょうか?」


「おお、なるほど。うん、良いよ。」


そしてそれなりにまとまった量の資料を貰い、朝食を終えた。


先生の部屋から出る前に、あと3時間で模擬戦をするとのことなので部屋で待っておくように、と言われた。


結構朝一でするんだな、と思い、3時間は資料を読み込んで備えることにした。








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