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93、プレゼント

 



 アステルの誕生日パーティーで、子供達は宝探しゲームの景品のお菓子を食べつつ少し休憩をしていた。


「さぁて、次は……ロープ鬼をするわよ!」

「オニだれ? パパ?」

「パパはー、ちと無理かなぁ」


 部屋の真ん中に真っ直ぐ一本のロープを置き、部屋を二分する。鬼はそのロープ上しか移動出来ない。皆はロープを跨いで手前のスペースから向こう側のスペースに行ったり来たりして遊ぶのだが、鬼に捕まったら一緒にロープ上で鬼にならなければならないのだ。


「鬼は…………ゴーゼルよ」

「ぎゃぁぁ! グランパやー! つよすぎるのっ!」

「わたし、ぜったいかつ!」


 イオはチョイやる気を失い、アステルはやる気満々だった。キーラ様やヨウジくんまで参加しギャイギャイと叫びながら楽しそうにロープ鬼をしていた。

 途中、フォード様やウォーレン様を無理矢理引き込みかなりマジな対決をしていた。隣のバウンティがソワソワしていたので『オスワリ!』と怒ると、シュンとしていたので頭を撫でてあげた。


「ハァー、ハァー、のどかわいた!」


 アステルが走って来たのでジュースを手渡す。グビグビとジュースを飲むアステルの頭をバウンティが撫でていた。


「アステル、楽しいか?」

「うん! すっごくたのしいよ!」


 アステルの満面の笑みの返事が心に刺さったのだろう、バウンティがウルウルになっていた。不用意にそんな事聞くからだ。お馬鹿さんめ。

 ふと思い立って、カリメアさんにプログラムの確認をした。外でゴーゼルさんと走り回らせたりして疲れ果てさせる予定らしい。その後ケーキのようだ。アステルとイオはソレで大丈夫なのだが。


「他の子達が死にますって!」

「あら、そんなに体力無いの?」


 ロープ鬼で既に虫の息なフォード様を指差す。


「……まぁ、外は無しかしらね?」

「あっちから室内遊びの玩具買って来たので、ソレで遊ばせません?」

「あら、いいわよ。開発出来そうな物かしら?」

「ん、作りは簡単だけど、面白い」


 爺やさんに頼んで床に敷く物を用意してもらった。ロープ鬼に参加してない人達は先に靴を脱いで座る。


「はい! ちょっとだけバトンタッチします!」


 ロープ鬼に終了をかけて、全員でシートの上に座る。

 真ん中に布で出来たサークル状のブロック用プレイマットを敷く。二メートル程の大さで、端は五センチほどの高さの枠が付いている。端に紐が通してあり、そこを引っ張るとプレイマットが巾着のように縮んでいき、ブロックを一気に収納出来る優れものなのだ。


「今から、色んな形のブロックを出します。だけど、まだ触ったら駄目! 解った?」

「「はい!」」

「うん、良い返事!」


 スターターキットを開けてジャラジャラとプレイマットにブロックを出す。子供達の顔がキラキラしている。チャチャっと説明して遊ばせてあげよう。


「このブロックは、上のポッチと、下の空洞を重ねてくっ付けいく玩具です。パッケージみたいに精巧に作っても良いし、好き勝手にくっ付けて変な物を作っても良いです」


 カチャカチャと何個かくっ付けて、パカッと外してみせる。


「っ!」


 子供達がソワソワして、視線がブロックに釘付けだ。最後に、ポッチ一つ分のブロックなどは子供の力では外れにくいので、外れない時は無理せず、近くにいる大人に頼むようにと注意した。


「ほんじゃ、触ってよーし!」


 掛け声と共に子供達が勢いよくブロックに飛び付いた。私は何枚か買い足した土台シートを開けてサークルの中に置いたり、人形や動物を救出して専用のコーナーを作ってあげたりした。

 大人は暇してないかと見るとまさかの全員熱中していた。


「……一番大きいスターターキット買ってて良かったね」

「ん!」


 フリーペーパーで『このブロックでこんなものが作れます』というのが何種類か置いてあったので、持って来ていたのだが、フォード様がソレを見ながら車を作っていた。


「ふむ、む? タイヤが…………」

「はい、一個で良いですか?」

「む、もう一個――――」

「はいはい……あった、どーぞ」

「……その方、見付けるのが早いな」


 それは多分慣れだ。運転手は誰にするかと人形を見ていた。


「頭にポッチが付いているのは何故だ?」

「帽子とか被らせたり、髪型変えたり出来るんですよ」


 なぜかいるリーゼントの人形のリーゼントを引っ張ってパキョッと外したら子供達が大爆笑していた。

 

「ふむ、出来たな」

「父上、凄いです!」

「ふふふ。フェイトは何をしているのだ?」

「私はこの空を飛ぶらしい、不思議な機械を作っております。ヘリキョプター?」

「ヘリコプターね」


 フェイト様に名前を教えたのはイオだな。未だにちゃんと言えていない。

 皆思い思いに遊んで楽しそうだ。大人は場所を明け渡し、テーブルに戻ってお茶をしたり、カリメアさんは物凄い速さでメモをとったりしていた。

 子供達の興奮も少し収まった所で、プレゼントを渡す事にした。この世界は誕生日プレゼントのシステムが無いので用意しているのは私達だけなのだ。


「アステルー」

「なーに?」


 トテトテと走って目の前に来た。両手で頬を包み、おでこにキスをする。


「お誕生日おめでとう、この数日、寂しい思いさせてごめんね」

「いひひっ。いーよー!」

「ん、俺もキスする!」


 バウンティにアステルを取り上げられてしまった。バウンティはアステルを抱えておでこやら、ほっぺやら、鼻にまでキスの嵐だった。アステルは大喜びなので許してやろう。


「はい、プレゼントだよ! これは日本のグランマとグランパから」

「あけていい?」

「どーぞ」


 他の子達も近寄って来て興味深そうに覗き込んでいる。


「あー! かぞくふえた! だんなさんゲット! あ、ほかにもいろいろはいってるー」


 男の人の人形は旦那さんらしい。アステルが楽しそうにリュックの中にいる女の人の人形の隣に入れて「ふーふだから、いっしょにいるんだよー」と言っていた。ちょっと悶えてしまいそうだ。


「アステル、こっちは私達からだよ」

「ありがとー! ふんふんふん…………おひめさま! うま! おしろも!?」

「うん。入ってるよ。今出してるブロックは、お家に持って帰るけど、皆で遊ぶ用なの。それだけで遊んでもいいし、お家用に混ぜても良いんだけど、どうする?」

「んー…………みんなであそぶほうがたのしい! まぜる!」


 嬉しそうにブロックの箱を開けるアステルをヨウジくんがなんとも言えない表情で見ていた。


「誕生日プレゼントですか。懐かしいですねぇ」

「ヨウジくんは何をもらったか覚えてる?」

「私は車が好きだったのでちょっと大きめの『ショベルカー』をもらいました。あれでブロックをガサーッとやってました」

「あははは! 楽しそう!」


 ヨウジくんの目からポロリと涙が落ちるのが見えてしまった。気付いたら首の後ろを引き寄せ抱き締めていた。

 ヨウジくんは少し嗚咽を漏らしながら私の肩に顔を埋めている。力無く腰辺りの服を握り締められた。

 ゆっくり背中を撫でてあげると息遣いが少し落ち着いたようだ。


「……ごめんね。無神経だったね。今も、あの時も…………」

「っ、いえ。拒否したのはママとパパなので……」


 実はスマホが手に入って暫くして、カンさんの両親と連絡が取れた際に、ヨウジくんの希望もあって、ヨウジくんの両親も探す事にした。

 うちの両親もカンさんの両親も信じてくれていたし、受け入れるのも早かった。だから、大丈夫だと思っていた。あの時、全員が調子に乗ってたんだと思う。

 結果は最悪な事になった。

 少し遠方だったので、とーさんが電話で接触を計った。初めは感触が良かったらしい。カンさんの両親も交え三家族で会う事になり、ヨウジくんの実家に向かったそうだ。


「あれは間違いなくママとパパ……だったんですけど……ね」


 その日、スマホはホーネストさん経由でヨウジくんに貸していた。

 とーさんがビデオ通話をして、ヨウジくんと彼の両親を再開させたが、信じてもらえず警察を呼ばれてしまった、らしい。

 私はスマホが返って来てから話しを聞いたので細かくは解らないが、とても辛い思いを双方にさせてしまったととーさんが凹んでいた。


「ふーっ……でも、私は会えて良かったと思ってます」


 ヨウジくんが目元を赤くしながら微笑んでいた。多分強がりだろうけど。

 誕生会でちょっとしんみりしてしまったが、アステル達は気付かず遊んでいたのでホッとした。

 そろそろケーキを出してあげようかなとカリメアさんと話した。




 ブロックを踏んでは楽しそうにしている子供達の気が知れないカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

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