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90、焼肉!

 



 バウンティとかぁさんに怒られつつ葉子を待っていたらチャイムが鳴った。


「誰か来たね」

『ヨウコだろ?』

「え、葉子なら勝手に入って来るよ?」


 ――――ピンポンピンポンピンポン。


「あ、葉子かも」

『……ヨウコの立ち位置が何となくジュドっぽいんだが…………』

「「あー」」


 とーさんは玄関に向かい、私とかぁさんは座ったままバウンティの例えに納得していた。

 バウンティに二人とも立つ気が無いなと引かれた。


「おもーい! バウンティー手伝って!」

『……ん?』


 葉子に呼ばれてバウンティがイソイソと玄関に向かった。そして私とかぁさんはやっぱり立たない。

 病人動かすのは流石に駄目かと思い、立ち上がったら三人が大きな箱を持って戻って来た。


「何それ……」

「テレビ!」


 ――――何故に?


「それがさー、テレビ買い直したたんだけどさー、家の処分するとなるとリサイクル料かかんじゃん? カナタでリサイクルしようと思って!」

「…………ありがとう?」

「カナタが買ってたプレイヤーあんじゃん、アレ繋いでテレビで見れるからね?」

「あ、ソレはありがたい!」


 小さい画面に子供達が近寄りすぎていて心配だったので丁度良かったかもしれない。

 ならばテレビは家に配達だなと、もう一度テレビだけ運んで戻って来た。ついでにテッサちゃんに軽く怒られた。


「ふいー、何となく疲れた」

「すっっっご! 一瞬で消えて一瞬で現れた! バウンティの上に!」


 リビングを目指して飛んでも良かったがお尻が痛いのでバウンティの上が安全だ。ちゃんと座って待っとくように言っておいた。カナタさんは失敗からちゃんと学ぶのだ!


「じゃ、焼肉に出発!」




 二時間半食べ放題のお店に来た。長い気がするけど、そんなものなのだろうか。

 網が二つあるテーブルに案内されたので、私とバウンティが一つの網を使う事になった。注文はタッチパネル方式で、店員さんを呼んで注文する必要が無いらしい。


「ハイテク! しかも焼肉以外もあるし!」

「取り敢えず、上カルビとー、上ロースと――――」


 かぁさんがゴンゴン注文していたので任せる事にした。


『ホットプレートじゃ無いのか?』

「家だとそうなんだけどね。お店は網で焼くんだよ」

『ふーん。室内でバーベキューみたいだな』


 ――――なるほど、確かに。


「お待たせいたしましたー」


 ホルモンから焼き始め、真ん中を少し開けて薄めのお肉を焼いてはバウンティに渡していく。


『いただきます。ん、あっつ……美味い』

「ご飯は?」

『いる!』


 バウンティには大盛りご飯、私はクッパを頼んだ。

 お肉を焼きつつクッパを食べる。バウンティにクッパを少し分けてあげると、悩んだ顔をしつつ『ゾースイ?』と聞かれた。


「んあー……ザックリ言うと一緒かなぁ。ザックリね……」


 本場のクッパは御飯とスープが別々に提供されると聞いたことがある。どちからと言えば『ねこまんま』かもしれない。そんな話しをしていた。


「へ? カナタ、何言ってんの? ねこまんまってご飯に鰹節でしょ?」

「へ? ご飯に味噌汁掛けたやつじゃないの?」

「あー。僕等の出身、九州だからね」

「それ何の関係があんの?」


 かぁさんが不思議そうに私のクッパを横から食べていた。自分で頼めば良いのに。


「関東と関西で違うんだよ?」

「うっそ! 知らなかった!」

「まぁ、そんなにねこまんまの話ししないしね」

『……なぁ、ネコマンマって何だよ?』


 あぁぁ、そうか。またもや日本特有のヤツ。バウンティに説明したら猫に米や塩分が多いものを食わせるなとビックリするくらいの正論を言われた。


「何でそんな事知ってるの?」

『師匠がホーネストに怒られてた』

「あれ? でもホーネストさん普通にクッキーとか食べてるよ?」


 精霊は別らしい。なるほどややっこしいし、精霊と本物の動物を今でも間違うのに。

 野良猫かと思って近寄ったら普通に挨拶されてチビりそうになったとか……してないっ! 乙女が漏らしそうになんてならないっ!


『猫みたいにフギャッて叫んでたよな』


 ――――ビックリなんてしてないっ!


「いーなー、動物と話せるって羨ましい」

「え? ビデオ通話で話せるよ?」


 かぁさんはホーネストさんやラルフさんとも話している。ジュドさんの梟のジーちゃんとも楽しそうに話していた。


「マジで!? カナタもおばちゃんも、もっと早く教えてよ! 五年もスルーって! 酷くない!?」


 葉子が机をバンバン叩きながら怒っている。

 なんというか、最近は話せるのが当たり前すぎててすっかり忘れていた。


「「さーせん」」

『ぶふっ…………必死だな』

「バウンティ! 当たり前にその環境にいるから解んないだろうけどね、ペットも家族なんだよ! 何を言いたいのか知りたいじゃん?」


 葉子の実家の犬の話かな? たまに実家に行って、帰る時に服の裾を引っ張って引き留められると良く話していた。

 バウンティがお肉を食べ止める事なく衝撃の発言をした。


『ペットと精霊をビデオ通話させればいいんじゃないか? 頭悪いヤツだと、あんまり期待しない方がいいが、犬ならギリギリ会話出来ると思うぞ?』

「マジでか! 家の犬、アホだけど!? テンパったカナタくらいアホだけど!?」

『……厳しいかも知れんが、試してみればいいさ』

「『――――いいさ』だって……ん? おーい、二人とも……それは私がテンパったら犬並だと言いたいのかい?」

「え、犬以下?」

『ギリギリ犬』


 机の下からバウンティの脛をゲシゲシ蹴った。バウンティはなぜか嬉しそうだった。マゾだ、マゾがいる。


「あ、ホルモン食べれるよ」

『ホルモン?』

「ホルモン……は、ホルモン……」

『……あっ、この内臓か?』


 ――――内臓言うなや。


 もしやホルモンって日本特有のヤツなのかと確認したらそうだった。紛らわしい。葉子がネットで調べてくれた。


『焼か。煮込まないんだな』

「うん、ムニムニして好きだけど……あ、レバーの唐揚げ微妙がってたよね? 大丈夫かなぁ?」


 バウンティが恐る恐る食べていた。


『ん、美味い。パイや煮込みより歯応えがあって好きだ。今度から家でも焼いてくれよ』

「んー、子供達が喉に詰まらせそうで出して無かったんだよね」


 ――――おや?


 ちょっと待って欲しい。お前、離婚するとか言ってなかったか!? と声を大にして叫びたい。皆がいるから言わないけど! バウンティはどうしたいのだろうか。帰ったら少し話してみよう。


「ふはぁ、食ったぁぁ。デザートにしよっと」

「私もー」

『……まだ肉食べてていい?』

「いいよー。お鍋屋さんと一緒で時間イッパイまで何食べてもいいんだよ」

『ん!』


 ニコニコしながらまたお肉を食べ出した。ちなみに私は焼く係だ。そして匂いでお腹いっぱいになった。


「しかし、良く食べるねぇ。気持ちいいくらいお肉が消えて行くよね」


 とーさんが感嘆のため息を吐いていたが、私はもう見慣れてしまった。ゴーゼルさんと二人いる時の焼肉など肉が一キロあっても足りない事がある。むしろ恐怖なのだ。お米でお腹を膨らませてくれないかなとか願うばかりだ。食べ放題って本当に有り難いシステムだ。

 食べ放題に感謝しつつ、時間いっぱい堪能した。

 



 葉子とは玄関で別れて、また来れたら日本に来ると約束した。と言うか今なら色々と関係なく戻って来れるようになっている。乱用すると精霊の匂いが強くなるとホーネストさんが言っていた。帰ったら乱用するとどうヤバイのか聞いてみよう。


「あんたらお風呂入っておいでー」

「はーい」


 バウンティの下着と寝間着を用意して渡す。視線が煩いが無視。さっさと入れと追い立てた。


『チッ』


 ――――こっちが舌打ちしたいわ!


 全く。思春期のお世話は疲れる。

 バウンティと入れ替わりでお風呂に行き、かぁさんにバトンタッチ。


「カナタ達は明日の朝帰るんだよね?」

「うん」

「アステルにおめでとうって伝えてね? プレゼントは奏子さんが勝手に決めちゃったし……」

「あ、相談してなかったんだ? 私が思い立って買いに行ったからかも……ごめんね?」

「んー、いーよ。イオの時は僕が選ぶからね」

「あはは。はいはい、取りに来るよ!」

「お願いします。ふふふっ」


 ――――チュッ。


 隣に座っていたバウンティに、こめかみにキスされた。なぜにこのタイミングなのか。


『ん、何か……ん? 解んない』

「何だソレ!」


 とーさんだけがクスクス笑っている。謎過ぎる。取り敢えずチーズ饅頭を食べた。クリームチーズがゴロゴロ入っていてとても美味しかった。

 とーさんとかぁさんにおやすみを言って部屋に戻る。

 明日と未来の為にもバウンティと部屋で少し話し合ってみよう。




 タッチパネル方式、とても楽で好きです。


次話も明日0時に公開です。

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