88、お買い物に出掛けよう。
メソメソバウンティに抱き締められて暫く経った。
「バウンティ、寝てないよね?」
『……起きてる』
ならば離せと言ってバウンティの腕の中から抜け出した。
アステルの誕生日プレゼントを何も用意していなかったので買い物に行きたいのだ。
『俺も行く』
「えー、安静にしてなよ。それに離婚協議中じゃん? 一緒に行動したくないんだけど」
バウンティがベッドに座った状態でポカーンとアホみたいな顔をしている。頭が働かないんだろうか。
『……そうだったな。離婚。…………したくない。本当は嫌なんだ』
「でしょうね!」
『エスパー?』
あれで察せない方が凄い。バウンティの中の私はどんだけアホなんだ。ちょっと問いただして説教したい。が、今度にしよう。
「ほら、行くよ!」
『ん』
一階に下りてかぁさんに車を借りようとしたが、運転したら駄目だと言われた。そりゃあ、ちょいペーパー気味なドライバーだったが。そこまでアホじゃないし、忘れてはいないと思う。何で皆私の事をそんなにアホ扱いするんだか。
「違うわ! アンタ、免許更新してないんだけど!?」
「ほぉぅあぁぁ。そんなシステムあったね!」
ヤバい、やっぱりアホかもしんない。渋々かぁさんに運転をお願いした。
『ん、あっちの車? 凄い色だな』
「あー。あれが前に話したヤン車だよ」
『あ、あれか! なるほどな、ギラギラの意味が解った。目が痛い』
修理したらしい店用の車を指差しながら話していたら、かぁさんの顔が鬼になっていた。
「アンタ等、私がちょっとはフィランツ語解るって事、忘れてないかな?」
「……さーせんしたぁ」
『ゴメンナサイ』
「ちっ、カッコイイのに!」
いや、目が痛いだけだけど。玉虫色とか言ったら怒られるけど。
かぁさんの趣味はスルーして自家用車の方に乗り込み出発。
『なんか、車の感じが全然違うよな。エンジン音が静かで凄い。それにドアが自動で開くとか、カッコイイ』
「でも、王様からもらったヤツ好きだよ?」
『ん、俺も』
通り過ぎていく風景をワクワク顔で外を見続けるバウンティ。色々と聞いてくるので解る範囲で教えていた。
「あれもコンビニだよ」
『いいなコンビニ。お菓子いっぱいあって楽しい。師匠だったら店ごと買いそう』
「……あ、うん。店ごと買いそうだね」
「はいはい、おのぼりさん達、おもちゃ屋さんに着きましたよー」
「ありがとー」
店内に入るとカートの横に置いてあった車椅子にかぁさんが座ったので押そうとしたが、平気だから二人でプレゼント選んでこいと言われた。
「んじゃ、お言葉に甘えて」
取り敢えず入り口近くから見る事になった。
定番のプラスチックで出来たブロックが置いてある。お姫様やユニコーン付きの可愛いものや、戦闘機などの格好良いもの、忍者や海賊など、いろんなタイプのスターターセットがあった。
「お姫様系かぁ。好きそうだよね」
『ん、アステルはそっちで、イオはこの飛行機とか、車が作れるセットが良いと思う』
「第一候補はこれね?」
次は人工知能搭載の玩具のコーナーだった。言語が日本語なのでスルー。次にあったのが、ボードゲームコーナー。人生をすごろくで決めていく定番の物から、麻雀や将棋、囲碁などもあれば、パーツを組み立ててビー玉の通り道を作っていくものもあった。
触れる見本があったのでちょっと遊んでみる。
『これ面白い! ははっ。なるほどな、ん。凄い!』
「ピタ○ラ装置いーねー。大人も楽しいよね」
『ピタ○ラソウチ?』
あれ、正式名称ってなんだろう。そういえばピタ○ラスイッチは番組名だった。
「この装置の正式な名前は……解んないけど。取り敢えず楽しいのは間違いなしだね!」
と言う事で、第二候補はこの装置。
次のコーナーはと見ていたら、かぁさんに出くわした。お人形コーナーだ。
「かぁさんは人形にするの?」
「うーん。この前のやつの種類を増やしてやるのも良いかなと思ってねー」
膝の上に男の子の人形と洋服が色々と置いてあったので、ほぼ確定なのだろう。
ここは素通りが賢明だ。次は実験キットのコーナーだった。面白そうだがちょっとアステルには早い物が多かったので止めた。
知育玩具のコーナーでは、様々な形の木のブロックを決められた広さのボードにぴったり納める物が楽しそうだった。
『迷うな。全部あげたい』
「この木のブロックは買って行こうかなぁ。多分、カリメアさんが好きなタイプだし」
『あ、師匠が遊んでたゲーム機のとそっくりだ!』
「あ、うん。どっちが先にあったかは解んないけど、そっくりだね。こっちの方が子供には向いてるかな」
『ん』
バウンティがそそくさと棚から二つ取っていた。家用もか。
色々と迷ったがプレゼントはプラスチック製のブロックに決めた。普段に使う分と、イオとマシューくんにプレゼントする分も今の内に買う事にした。
「これ、踏むと痛いんだよねー」
『小さいパーツがあるしな。お前も持ってるのか?』
「持ってたよ。従姉妹の子供にあげちゃったけど」
何年も前から規格が変わってないので、何年経ってても買い足して遊べる優れモノなのだ。
「アホみたいに買ってんじゃん」
「この際だし、色々ね。かぁさんは会計終わったの?」
「今、プレゼント用に梱包してもらってるよ」
かぁさんが頼んでいた梱包を待つ間に、ガチャガチャコーナーを眺めていると、猫に被らせる物があった。リンゴなどの果物や野菜系の頭巾と、羊などの動物系の頭巾があった。
「ふばっ! 超可愛い! なにこれー。一回三百円かぁ。しよっと!」
バウンティにガチャの説明をしつつガンガン回す。
リンゴとメロン、ピンク色の羊と黒いウサギの被り物をゲットした。
「ホーネストさんに被ってもらおっ!」
「ちょ、その写真送ってよ?」
「モチ!」
かぁさんとがっちり握手した。バウンティは怒られそうだと心配していた。大丈夫、可愛いの為ならどれだけでも怒られる覚悟なのだ。
そんな事をしていたら梱包が出来上がったので受け取って帰る事にした。
「あんた等、明日の朝帰るんだっけ?」
「うん! 誕生日パーティーしたいし」
「じゃ、ケーキ屋で何か買って持って行く? リズちゃんのを頼む?」
なるほど、こっちのを持って行くのはアリかも。家の冷蔵庫は余裕があったし、大量に購入してリズさんに送れば複製してもらえるのでは!?
ケーキ屋巡りをしよう。だけど、その前に。
「かぁさん、この前のトランクまた持って来たから、詰め込めるだけ色々と買って行きたいんだけど、付き合ってもらえる?」
「お、じゃあ、カリメアちゃんにまた化粧品選んであげよー」
「あ、そう言えば、マニキュアかなり気に入ったらしいよ。色が綺麗だって感動してた」
「ほうほう。新色も選んであげようではないか!」
と言う事で、先ずはドラッグストアに立ち寄る。
かぁさんが化粧品コーナーでアンチエイジングな化粧品をふんふん言いながら選んでいたので、私とバウンティは店内を色々と見て回る。
「へぇ、老眼鏡とか売ってるんだねぇ。柄がお洒落だね」
薬局なのに薬に関係ないものも多くて面白い。
ぶらぶらと歩いていたら、電子の体温計の所でバウンティが止まった。
『これ、欲しい』
「あー、病院で使ってたもんね。楽しかったの?」
『凄く早く終わるから。アステルの熱計るの楽になる』
アステルは水銀の体温計をスッポスポ抜いちゃうので、何度も体温の計り直しをするはめになる。どうやら、何度か気になって見たくなるらしい。
「なにこれ、非接触型?」
赤外線センサーで計る体温計が置いてあった。チェーンが付いたお試し用が置いてあったので説明を読みつつバウンティのおでこにかざした。
計測一秒と書いてあったのだが、本当に一秒なのかとかちょっと怪しみつつも、ボタンを押す。
――――ピピッ。
一瞬で電子音が鳴り、液晶画面に『37.8℃』と標示された。わりと熱が在るなと思い、バウンティのおでこを触ってみると確かに熱かった。
自分にもしてみたら『36.3℃』と標示された。いつもの私の平熱だ。
「ちょ、なにこれ、凄くない?」
『意味が解らん……何で計れるんだ?』
「……私にも良く解んない。でも、これ欲しい!」
『ん。いいな!』
割りと高めの六千円だったが、色んな機能が付いていたので買う事にした。商品の横に手書きのポップに、素早く計れる予測式と、脇で十分以上掛けて計る実測式の両方あった方が良いと書いてあったので、脇用も買う事にした。
「予測は八秒、実測十分で計測出来ますだって。これで良い?」
『ああ。しかし、カナタの世界は凄く発展してるな。動画見てて知ってはいたが、実際に目にすると凄く実感する』
私はずっとその環境だったので気付かなかったけど、ローレンツで生活してからは便利だったんだと気付いた。
体温計をカゴに入れつつ、散策していると歯ブラシコーナーで子供用の歯ブラシと歯磨き粉を見付けた。アステルもイオも大人用のをオエオエ言いながら使っているので買ってあげよう。
『ん! これ、見覚えある!』
以前持ち込んだライム風味の歯磨き粉だ。バウンティの顔がキラキラしている。
「好きなだけ買って良いよ」
『ん!』
太っ腹? 違う。私も大量買いするからだ。いくら改良されたとは言え、やはりこちらの方が美味しい。其の表現は可笑しい気もするが、味は大切だ。子供達にはイチゴやぶどう、オレンジなど果物の風味の物を大量に買い込んであげよう。
買いたい物が多すぎてなかなか買い物が終わらなかった。
またもや爆買いのカナタさん。そして、バウンティも参戦。
次話も明日0時に公開です。




