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85、疑わしきは……。

 



 皆がクラリッサさんを疑い出したので、何とか否定の材料を見付けたい。

 到着するまでに劣勢な感じをひっくり返そう。


「クラリッサさんが、カリメアさんが怒るような事や、悲しむような事、するはず無いじゃないですか!」

「アイツは依頼があれば平気ですると思うけど?」

「それは解んないじゃ無いですか!」

「けど、否定も出来ないよな?」

「っ……はい」


 他にも色々と言ったが何の決定打にもならなかった。次は何を言おうかと考えていたら、ドアがノックされた。


「カリメア様、ゴーゼル様、クラリッサ様が見えられました」

「入れ」


 早すぎる。心の準備も出来て無いのに王様が入室の許可を出してしまった。


 ――――ガチャッ。


「なっ!」

「えっ?」

「……カナタ…………っ!」


 カリメアさんと目が合った瞬間、カリメアさんが走って来てギッチリ抱き締められた。苦しい。圧死出来そうな気がする。


「っ、生きてたのね!? 何で連絡寄越さないのよ!」


 説教が始まるなぁと思っていたら、小声で「バウンティも生きてるのね? 今すぐ泣きなさい。バウンティは死んだと思わせなさい。出来るわね?」と言われた。その言葉のせいで一瞬で悟ってしまった。


 ――――確定、なんだ。


「うん。ごめんなさい。ううっっ。……バウンティとの時間が欲しかったから。気持ちの整理したかったから。王様とウォーレン様に頼んだんです」


 泣くのは簡単だ。死にかけたバウンティを思い出せば直ぐに出てくる。泣けと言われなくても、今も気を抜くと泣きそうだったし。

 グスグスと鼻を鳴らしながら、手で涙を拭う。

 いつの間にかゴーゼルさんも横にいた。抱き上げられ背中を撫でられる。


「もう大丈夫じゃからな? 怖かったな?」

「う、ん……グスッ…………ぅん。怖かったぁぁ。バウンティがっ……バウンティがぁぁぁ……っ」


 いっぱい文句を言いたい。バカンティの馬鹿。バカンティのおたんこなす。バカンティのすかぽんたん。


「よしよし、いっぱい泣くんじゃ。ワシ等がついとる。もう大丈夫だぞ…………ズビッ」

「……うん」


 この感じはゴーゼルさんはバウンティの事に気付いて無いな。こっちの方が後から面倒な事になりそうな、ならなそうな……ちょっと考えるのが怖いのでカリメアさんに任せよう。


「カナタ……こんな形で会いたく無かったわよね。何の力にもなれなくてごめんなさいね……。取り敢えずカナタと子供達が無事で良かったわ」

「クラリッサさん、カリメアさんの捜査に協力してくれてたんですよね? ありがとうございます」

「そんなの当然ですわ。カリメア様のお願いですもの!」


 取り敢えず座って話す事になった。




「それで、アダムはここで何をしているのかしら?」

「あー? 俺はチビ達と遊んでただけだよ。で、お前は何やってたんだよ? 一番にチビ達に会いに来るもんじゃねぇの?」

「私はっ! …………事件の調査を優先すべきだと思いましたの」


 なぜかクラリッサさんとアダムさんが言い合いを始めてしまった。二人は仲が悪い訳では無かったように感じていたのだけれど、何かピリピリしている。

 まぁ、相互不干渉な感じではあったのだけれども。


「ところで。なぜ呼び出されたのかは、カナタが何か話したい事があるからなのかしら?」

「そうなのか? なんじゃ?」

「いや、話したい事と言うか…………ちょっとムカついたので」


 カリメアさん、ゴーゼルさん、クラリッサさん、三人ともキョトンだ。それもそうだろう。何だムカついたって。

 ちゃんと説明しなきゃなんだけど、ちょっと考えがまとまって無かった。行き当たりばったり過ぎた。


「バウンティが……犯人を恨んでないって言ったから…………」

「何でですの!?」


 クラリッサさんがズダァンと勢い良く机を叩いて立ち上がった。カリメアさんそっくりだ。


「……命を奪った犯人を恨んでないって…………。ねぇ……カナタ、バウンティと何か話せたんですの?」

「はい。少しだけ」

「っ……犯人の事を聞きませんでしたの?」

「聞いたよ? でも、恨んでないから教えないって……馬鹿な事言うからっ……残されるこっちの事なんて考えて無いんだもん…………グズッ」


 クラリッサさんの顔が凄く悲しそうだ。こんなに親身になってくれているのに、犯人なんて思いたくない。でも、きっと犯人なのだろう。


「賞金稼ぎは暗殺もするの? そういう依頼があったら受けちゃうの? 標的が知り合いでも? 友達でも?」

「っ…………」

「……それが得意で、依頼があったなら、出来る者もいるでしょうね。それに後ろ暗い依頼はいくらでもあるわよ。私達だってバウンティだって、人には言えない依頼はいくらでもこなしてる……と思うわよ? 別に正義の味方ではないのだから」

「…………うん。解ってはいますっ。でも、私と仲が良いから教えないって…………うっ……ううぅぅぅっ。むがづぐー! 仲が良いなら相談して欲しかった! どんな事だってして解決の道探したかった! バウンティが死ぬのが…………死んでもいいって思われたのがムカつくの! 相談してよ! クラリッサさん!」


 ダンダンダンと机を叩く。ただ手が痛いだけで、何もスッキリしない。


「なっ…………え? 何ですの?」

「……クラリッサさんだよね? ここでそれを否定して欲しいって思ってるの私だけなんだもん! 皆、クラリッサさんが一番怪しいって……カリメアさんなんて……確定させてるんだもん! もぅやだぁぁぁ」


 ゴーゼルさんの顔はいつの間にか険しくなってるし、カリメアさんからも、アダムさんからも、ピリピリした空気が伝わってくる。

 クラリッサさんがそっと後退りしていた。


「逃げないで…………お願いだから、何があってこうなったのか教えてよ。私は……知りたい。バウンティが恨まないって言う理由を知りたい……理解はしたくないけど……お願い、クラリッサさん」

「…………カリメア様も私が犯人だと思われていますの?」


 カリメアさんがクラリッサさんを見ずに「えぇ」とだけ返事した。クラリッサさんが胸に手を当てて少し俯いて深呼吸していた。


「申し訳ありませんでした」


 ――――あぁ、本当の本当に確定なんだね。




 希望は打ち砕かれ、確定。


次話も明日0時に公開です。

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