表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/172

84、明日はアステルの誕生日。

 



 朝起きて、バウンティのおでこを触る。少し熱い気がする。熱が出ているのだろうか。


『ん。カナタ……おはようのキスは?』


 ――――チュッ。


 口に軽くキスしたら満足そうな笑顔で頬を撫でられた。


『なぁ、俺達がさ、こっちの世界で生きていくのは無理か?』

「…………アステルとイオは大丈夫だと思う。バウンティも出来ない事はないかもだけど……。色々と法律の問題を解決出来無いかも」


 最悪は密入国者にされてしまうかもしれない。バウンティが私を助けてくれたように、私も助けたい。でも、私はバウンティを助けれないかもしれない。様々な法律を犯して両親に迷惑を掛ける勇気が出ない。どう頑張っても警察のお世話になりそうな気がする。


「ごめんね、同じように助けれなくてごめん。殺されそうな世界とか戻りたくないよね……」

『……違う。カナタ達に怖い思いをさせたく無い。こっちで暮らしてて欲しい』

「またその話なの!? 私はあっちで生きるって決めてる!」

『…………考え直せ』

「へ? 意味が良く解らないんだけど。バウンティは私をこっちに戻したいの?」


 ベッドに寝たままのバウンティを覗き込む形で話していたが、後頭部を引き寄せられ、バウンティに抱き締められた。


『あぁ。出来れば安全に暮らして欲しい。あんな腐った世界で、馬鹿みたいな事件に巻き込んですまない』

「それ、今回の事? 犯人を庇ってるの? 何を知ってるの?」

『……あっちに戻ったら、離婚しよう』


 意味が解らない。昨日、楽しく過ごした。退院出来て凄く嬉しかった。朝起きてバウンティが側にいるのが嬉しくて、子供達が側にいないのが寂しくて、早くローレンツに戻ろうと思っていた。明日はアステルの誕生日だし、皆でお祝いしたかった。

 その為に色々と頑張ろうとしていたのに。

 たった今、キスして微笑み合ったのに。


「…………えっ、何で? 嫌だよ?」

『お前が嫌でも、俺は離婚したいんだよ』

「わっ、私の事が大嫌いになって、側にいるのも苦痛だって言うんなら諦めるっ! …………バウンティには笑ってて欲しいから。バウンティ、違うよね? 嫌いになって無いよね? だって、抱き締めてくれてるもん。キスしたもん……」


 痛いほどに抱き締められている。バウンティの心音がバクンバクンと激しく鳴り響いている。


『…………嫌いだ』

「意味、解んないんだけど!」

『俺はお前と生きて行くのが苦痛だ』

「……何で急に嘘吐くの?」

『嘘じゃない……もうお前と家族でいるのは嫌なんだよ』

「…………っ、離して」


 バウンティの腕から抜け出し壁際まで後退りした。


『カナタ?』

「そんなんじゃ離婚してあげない」

『もう、一緒にいたくないんだよ』

「やだ……」

『…………頼む』

「ねぇ、もしかして……あっちで危ない事が起こってるの? それが解決すれば良いの? 何が起こったのか教えて? 子供達はあっちにいて大丈夫なの!?」

『大丈夫だ……アダムが側にいるんだよな?』

「うん」

『なら大丈夫だ……。俺をあっちに戻したら、カナタはアステルとイオを連れてこっちの世界で生きろ……二度と戻って来るな』


 バウンティはこの前から何かを隠している。明らかに怪しい。

 ポロポロと情報を小出しで洩らしてしまうほど頭が働いて無いくせに、何をこそこそとやっているのか。


「何でそんな事言い出すの? 何で一人で色々決めちゃうの!? 何で? ねぇ、何を考えてるの?」

『お前と出逢わなければ…………家族なんて持つんじゃ無かった』


 ――――私を助けた事、後悔してるの?


 今頃そんな事を言われるとは思っていなかった。イライラし過ぎて吐きそうだ。

 アステルとイオに会いたい。







******

******







――――――ドサッ。


「ふぎゃっ! ママ? びっくりしたぁ!」

「……ここ、どこ?」


 アステルの目の前に飛んで来たけど、見た事の無い場所だった。


「パーティーするおへやだって! あしたね、アステルのおたんじょうパーティーしてくれるって! パパは?」

「パパは……ちょっと置いて来ちゃった……」


 アステルにぎゅうぎゅうに抱き付く。ほっぺをプニプニ触って、お尻をフニフニと揉む。癒される。


「ママ! へんたいはダメなの!」

「もうちょっとだけ……ママに元気を分けて?」

「パパのおせわ、つかれたのー?」

「うん、すっごく疲れちゃった。可愛くないんだもん。イオは? アステルは一人なの?」

「イオはね、アダムとトイレいったよ?」


 ――――何だ。トイレか。

 

「ん、んんっ! その……私達もいるぞ?」


 声がした方を振り向くとウォーレン様がいた。キーラ様やフェイト様、ヨウジくんに、オルガ様、ヘラちゃんもいた。


「皆で遊んでたの?」

「パーティーの準備ですわ」


 キーラ様がにっこり微笑んで教えてくれた。誕生日に私達が間に合わなさそうだったのでアステルが寂しくないように皆でパーティーをしようと計画を立ててくれていたらしい。


「ありがとうございます……本当にありがとう……。私、少し用事があるので……小サロンに行ってます」


 あまり騎士さんに見付かってはいけないらしいので、転移した。座って考えようとしていたらヨウジくんが隣にいた。


「ほわぁぁぉ。心臓止まるかと思った!」

「カナタ、何かあったんですよね? 私は何か手伝えますか?」

「ヨウジくん、あ…………んーん。大丈夫、大丈夫だよ。ありがとう」


 不審に思い転移でついて来たらしい。ヨウジくんを抱き締めてお礼を言う。ちょっと口走りそうになったけど我慢。


「私には手伝えませんか?」

「ううん。そういう訳じゃないよ。悪い事してるから巻き込みたく無いの! ヨウジくんはアステル達といてくれると、私は凄く安心出来るんだけど……」

「ハァ……分かりました。ですが、何かに困ったら相談してくださいね? 以前みたいに倒れるまで我慢しないで下さいね?」

「うん! ありがとう」


 ヨウジくんにアステルとイオを頼んだ。

 一人になったのでホーネストさんにオスカーさんを呼び出してもらった。


「ありがとう、ホーネストさん。いっつも置いて行ってごめんね?」

「……本当はスッゴク怒りたいけど! いいよ!」

「ありがとー、大好きだよ!」


 ホーネストさんを抱き締めて撫で回す。癒されて、落ち込んだ気分上げて、頑張りたい。




 暫くしてオスカーさんが来てくれた。

 王様とウォーレン様、アダムさんも集合してくれた。


「呼び出してすみません。噂や皆の反応はどんな感じですか?」

「薬学に詳しい賞金稼ぎの方々に取材をしました。その、カリメア様にも……」


 昨日、王都に着いていたらしい。非常にマズイが取り敢えずオスカーさんの話を聞こう。

 

「カリメア様ですが、非常に…………」

「非常に?」

「……泣き腫らした顔をしてございました」

「あぁぁぁぁ。はい」

「それからバウンティ様が家から一人で出られた経緯と目撃情報集めをしてありました」


 家を出た理由は……たぶんイジケて。だけど誰も知らないし、まぁ黙ってていいかな。家を出た後の行動を調べてくれているらしい。

 そして、その付近で目撃された賞金稼ぎや怪しい人物、見掛けた事の無い人物等を調査してくれているらしい。


「泣き腫らした顔で?」

「いえ、クラリッサ様が代理で動いてらっしゃるようです」

「クラリッサさんをこっちに呼び付けたのかぁ……」


 お仕事の邪魔して申し訳ない。


「クラリッサ様は近くで任務があったそうで、事件当日から色々と調べられていたそうです。流石に内容は教えていただけませんでしたが、カナタ様が亡くなられた事にとてもショックを受けていたようです。ご自分が近くにいれば救えたのにと呟かれていました」

「ん? 何で? 救えるんですか?」

「クラリッサ様は他国の薬学にも詳しいのですよ。最近はあまりそういったお仕事はされていないようですが、毒薬や解毒剤の調合が得意でいらっしゃるので、もしかしたら彼女は解毒が可能だったのかもしれません」


 知らなかった。どうやら以前行っていた氷山での発掘も薬に関係するお仕事だったようだ。かなり話題になっていたとオスカーさんに教えてもらった。


「つか、クラリッサの本当の得意分野は暗殺だけどなー」


 アダムがさんがそう言いながら、壁に寄りかかり腕を組んで、窓の外を見ていた。外では子供達が何か楽しそうに話している。そんな事よりだ、気になる単語……。


「……暗殺…………なんですか?」

「あー、うん。ちょっと言うの迷ってたんだけどな。まぁ…………思う所あってここにいたけどさ。クラリッサがここ付近にいたんなら……俺は黒だと思うぜ。カリメア様も何か気付いてて、側に置いてるんじゃないかなぁ」

「……オスカーさんから見てクラリッサさんはどう見えました?」


 オスカーさんが少し思案した後、教えてくれた。

 私がどうやって毒を触り死んでしまったのかを詳しく知りたがっていたそうだ。バウンティが死ぬのは仕方無いにしても、毒薬を触っただけで死ぬ事は無いはずだと断言されたそうだ。


「何の毒か調べが着いていたようなので、余計不可解だったのだとは思います」

「まぁ、そうですよね」

「……クラリッサは何で何の毒か知ってるんだ?」

「へ? 誰かから聞いたんじゃ無いですか? 子供達とか?」

「クラリッサは王城には来てないぜ?」

「あ、カリメアさんからですよ!」


 カリメアさんが呼び付けてるみたいだし!?


「カナタよ、お前が何の毒かは伏せておくように言ったではないか。ここの者以外知らぬはずだが?」

「でも王様っ、お医者さんとか、騎士さんとかから聞いたかも……」

「それも無いぞ」

「何でウォーレン様まで否定するの?」

「カナタよ、現実から目を反らすでない」

「……でも、モロバレ過ぎるじゃないですか! クラリッサさんを嵌める為にわざと誰かが……とか」

「まぁ……確かにそれも無くは無いが……」


 それならと、クラリッサさんを呼び出して直接話す事になった。疑いが晴れたら仲間に引き込むんだもん!

 クラリッサさんが、カリメアさんを裏切るはずないもん! カリメアさんの大切な息子のバウンティを殺そうとかするはず無い。きっと誰かが嵌めているんだ!




 何としても今日中に片付けたくなったカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ