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82、退院出来た。

 



 王城で悪巧みの後、家に戻ろうと思いながら飛んだらローレンツの家の主寝室にいた。


「……家、だね」


 ちょっと反省。日本の家と考えるべきだった。もう一度飛ぼうと思ったが、良い事思い付いた。

 そっと部屋から出て、クローゼットルームに侵入する。いや、自分の家だけどね。何となく侵入している気分。

 前回の逃避行動の時に持って来たキャリーケースを出して両手に持つ。


 ――――ふはははは。また色々と持ち込んでやる!


「手に持った物を離しなさい! 泥棒は許しませ――――」

「……シエナちゃん、やっほー?」


 ホウキを構えたシエナちゃんに見付かってしまった。ホウキで泥棒撃退しようとしてたのかな? 危ない。ちょいと説教しないと。


「盗まれてもいいから、撃退しようとかしちゃ駄目だよ! 怪我したらどーすんの!」

「っ! 本物!」


 シエナちゃんがホウキを投げ捨てて泣きながら抱き付いて来た。


「カナタ様っ! うぅぅぅっ、亡くなられたって! もう二度と会えないって……何もお役に立てなかったって! 良かったぁぁぁ、生きてる!」

「うん。ごめんね。諸事情で死んだ事にしてるの」

「バウンティ様は!?」

「大丈夫だよ。ちゃんと帰ってくるから、大丈夫。だけど、ごめんね、まだ何も解決してないから、誰にも話さないで。お願い」

「テッサにもですか? カリメア様、ゴーゼル様、リズ様やジュド様にも?」

「うん。知ってるのは王様とかウォーレン様とかくらいなんだ。新聞も色々と出るだろうけど……ここには誰か来た?」

「はい。皆様、誤報じゃないかの確認や続報は何か無いのかの確認に何度も来られてます。カリメア様より誰も家に入れるな、何も話すなとの命がありましたので、何も話してません」

「そっか。じゃ、やっぱり王都だね。私、ちょっくら日本に行ってくるね! あ、お土産何が良い?」


 何でか知らないけど飛べるようになった話をした。

 お土産は、高級なアイスと柚子茶の残りが少ない。あと、個人的にはパスタソースと明太子が心許ないので欲しいと言われた。シエナちゃんがしっかりしている。こんな状況なのに普通にストックを思い出してくれるとは。


「了解! 泣かせてごめんね!」







******

******







 ――――ボフンボフン。


 日本の私の部屋に到着。キャリーケースもバッチリ。鼻歌を歌いながら一階に降りる。


「ただいまー」

「ん? いつの間に帰って来た? バスで戻ったの?」

「いやぁ、病院から王都に行って、ローレンツに行ってからここ!」

「……凄く飛んだんだね」

「うん。何かお腹減った!」


 飛ぶと結構疲れるのかもしれない。あまり意識した事は無かったし、連発もした事無かった。


「ご飯の用意は出来てるよ。味噌汁でいいんだよね?」

「うん!」


 かぁさんのご飯を堪能する。母の味はいつでも美味し。時々父の味だけど、それも美味し!


「そいや、バウンティくんから電話あって、アンタにゴメンナサイって言っといてって言われたよ」


 公衆電話の使い方は教えたけど、本当に使うとは。順能力高いな。


「あー、あと、明日の三時で退院していいってさ。一週間は自宅療養してくださいってよ」

「バウンティ、良く理解して伝えれたね」

「いんやぁ、看護師さんと電話代わって言われた。本人は『カエッテイイ、イワレタ! カナタ、ムカエニキテ!』しか言ってないよ」


 かぁさんがバウンティの真似しながら話してくれた。


「ふひひっ。ソックリ!」

「明日はお昼頃に皆で病院に行って、退院祝いでもしようか?」

「うん! あ、銀行も行かなきゃだよね?」


 全額負担なので銀行引き落としにしてもらえるらしい。ざっくりで二百万ほどだろうと言われた。


「本当にごめん」

「いーよ。どーせアンタの為の貯金だし」


 向こうから宝石類でも持ち込もうかと思ったけど、ジュエリー系は基本的にブランド刻印があるし、金などは含有率などが刻印されている。ダイヤモンドはシリアルナンバーなどが刻印されているそうだ。


「質屋でも犯罪臭がしちゃうって!」

「ふふふっ。ちょっと危ないだろうね」

「おぉぅ。そんなに厳しい世界なんだ……知らなかった」


 異世界の宝石や金の持ち込み計画は断念し、明日以降の計画を立てつつ眠りに就いた。




 朝起きて、バウンティお迎えの準備をする。そっと、部屋を片付けてみたり、ヨレヨレの普段使いしていた下着を隠してみたり。消臭スプレーを無駄に振り撒いてみたり。


「アンタ……部屋に彼女を初めて招く童貞か!」

「何でそんな例えなの!? バウンティ、絶対色んな引き出しやら扉やら開けるもん! 危ないものは隠しとかなきゃなの!」

「あははは。僕も奏子さんが部屋に来るって言った時、同じ事考えたよ。懐かしいなぁ」

「ちなみに、かぁさんの行動は?」


 ベッドの下、布団の下、本棚の本の後ろ、色んなところをひっぺがされたそうだ。


「エロ本を見付けてみたかったんだよねー。無くて落胆したんだよねー。兄貴なら絶対そこら辺にあんのに」


 怖い。かぁさんが怖い。思春期の男子になんつー暴行を。


「ほら、そろそろ出掛けるよ。バウンティくんの服も買いに行かないと」


 そうだった。半裸でこっちに来たんだった。取りに戻っても良いけど。ついでに私の服と子供服も見たい。

 安めの洋服チェーン店に寄ってもらいバウンティのと自分のは適当に選ぶ。バウンティのガラパンをボクサーパンツに変えてみたりと、ちっちゃなオシャレ計画も実行しつつ、子供服はちょっと真面目に選んだ。


「さーて、お迎えお迎えっと」


 るんるんで病院に向かった。

 十三階のバウンティの病室に行くと、ベッドに座って外を眺めていた。ちょっと男前だが、こちらに気付いたらやっぱり犬になった。


『カナタ、もう怒ってないか?』

「……さあね」

『ちゃんと、話し合おうな?』

「……バウンティ、服に着替えてなよ」

『ん』


 素直に着替えだした。適当にプリントTシャツを買っていたのだが、バウンティが不思議そうにプリント部分を触っていた。


「どうしたの?」

『ん、面白い』


 良くわからないけど気に入ったらしい。

 荷物はほとんど無い。コップやスプーン、ティシュー、タオルや下着をポイポイ纏めて終わり。


「バウンティ、ご飯は食べれそう? まだギュルってる?」

『ちょっと。でも、朝はドロドロのご飯じゃなかった! ちょっと柔らかいくらいだった!』


 どうやら食欲も戻りつつあるようだ。予想より回復が早い。まだフィランツに帰したくないのだけど。


「退院祝いにご飯でも食べに行こうって話してたんだけど、どう?」

『ん。行ってみたい』


 どこに行こうかなど話していると担当の先生が挨拶に来てくれた。


「随分元気になりましたし、退院は許可しましたが、運動等はまだまだ禁止ですよ? ご飯は食べれそうであれば大丈夫ですが、アルコールは控えて下さい」

「はい。後で言い聞かせておきます」

『ん』

「筋肉や節々の痛みが続く場合は来院されて下さい。患部に塗る薬と化膿止めの飲み薬は出してます。後で薬剤師が持ってきますので、受け取ったら退院されて大丈夫ですよ。入院費については、後日引き落としになります」

「解りました。有り難うございました」

『アリガトウ』

「じゃあね、バウンティさん。無理しないで下さいね?」

『ん』




 しばらくして、薬剤師さから薬を受け取って看護師さん達に挨拶しつつ退院した。


「夕飯まで少し時間があるね。どこかに寄って行くかい?」

「あ、銀行と電気屋さん行きたい」

「何か買いたいのかい?」

「ドライヤー!」


 この前、ローレンツに帰って買っておけば良かったと後悔したので、忘れないように買っておきたい。

 バウンティも外の世界に興味津々のようだ。


『窓からや、テレビで見てたけど……凄いな』


 病院から出て、病院や周りの建物を見回したり、駐車場にある車を物珍しそうに見ていた。


「さぁさぁ、乗りなさい」

『ん』


 銀行へ立ち寄りお金を下ろし、家電量販店へ向かった。店内に入るとバウンティが手を差し出して来たので繋ぐ。何だか久しぶりだ。


『ソウコの乗ってるの何だ?』

「車イスだよ。電気で動くの」

『……凄い! カッコイイ!』

「でっしょ! バウンティくん、良く解ってんじゃない」


 そんな会話をしていたらドライヤーコーナーに到着した。


「マイナスイオンかー。ま、コレでいいかな」

『ん、これ、カンにやってた髭剃る機械か』

「そー。…………欲しいの?」

『ん!』


 力強く言われた。仕方無いので買う。


「バウンティくんは一気に剃ると痒くなるって言ってたよね? ウェットでも使えるシェーバーと替刃とシェービングフォーム、シェーブローションも買っておきなよ」

「…………とーさんが選んであげて」

「じゃあ、バウンティくん――――」


 何か色々な性能を説明された。頭には入れずに復唱のみに徹する。

 三種類に絞ったあと、赤色の首がグリグリ動くやつに決めていた。ニコニコしているので使うのが楽しみなのだろう。

 カメラのコーナーに行ったり、キッチン用品のコーナーに行って炊飯器を見て悩んだり、テレビのコーナーで大型テレビで3D映像を見たバウンティが興奮したりと結構に楽しみつつ、新たに持ち込む物などを購入した。




 取り敢えずひと安心。


次話こそは明日0時に公開します。

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