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81、悪巧み

 



 バウンティを日本に置いて、私だけ王城に戻った。

 今は爺やさんにウォーレン様を連れて来てもらっている。


「カナタ! バウンティの様子はどうなのだ!?」

「結構順調ですよ。まだ少しふら付いてはいました。そんな事より、()()()どうなってますか?」

「うむ、大騒ぎだ」

「ほほぅ……すみませんが、オスカーさんを呼び出してもらえますか? 呼び出しの理由は何でもいいです」

「解った。子供達はどうする? 会って行くか?」


 ウォーレン様が爺やさんに向かって手をふいっと払うと爺やさんがお辞儀をして出ていったので手配してくれるのだろう。

 アステルとイオ、会いたい。抱き締めたい。でも、もうちょっと我慢。


「バウンティと二人で……会います」

「解った。それからなぁ――――」


 ウォーレン様がげっそりした感じで教えてくれた。

 ゴーゼルさんとカリメアさんが超ご立腹でアステルとイオを迎えに来ると言い出しているそうだ。毎日『犯人は誰だ、捜査はどうなっている、役立たず』と連絡が入っているらしい。シャラちゃんは往復八時間掛かるから、速達サービスをやっている人の精霊を使っているのだろう。


「すんません」

「頼むから、あの二人には早めに教えてくれぬか? 私の心臓が持たぬ」


 ――――あ、うん。


 暫くウォーレン様と話していると王様が来た。王様にも謝って、バウンティの現状を伝える。そして何よりもムカつく事にバウンティが犯人を庇っている事も。


「あっさりしておるな」

「……はい」


 思い出しただけでも頭に血が昇る。深呼吸して冷静になるよう自分に言い聞かせた。




 ――――コンコンコン。


「オスカー様をお連れしました」

「うむ。入れ」

「お久し振りでございま……カナタ様!? お亡くなりに…………」

「すみません。諸々の事情でそうさせてもらいました」


 オスカーさんが辺りをキョロキョロと見回した。


「バウンティ様は?」

「……いません。オスカーさん、私の悪巧みに付き合ってもらえますか?」

「……それは、断れるものですか?」

「大丈夫ですよ! 駄目だったら他の方法を探すつもりなので。ただ、オスカーさんが一番信用出来るなと思っただけなので」

「? 数年前にお会いしただけですよね? カリメア様ほど頻繁に交流もしていませんし」

「うん。オスカーさん、公平なのは前回ので良く解ってますので」


 オスカーさんが俯いて暫く考えた後に「内容を聞いてから判断するのは可能でしょうか?」と聞いてきた。


「はい。大丈夫ですよ――――」


 バウンティをあんな風にした犯人を探したい。オスカーさんに事件後の取材をしてもらいたいと話す。調べて欲しい事があるのだ。


『バウンティが毒殺された』

『カナタがバウンティを発見した際に、近くに落ちていた毒薬を運悪く触ってしまい、死亡した』

『子供達には両親が死んだ事は内密にし、王城で保護している』


 これはウォーレン様にお願いして出してもらったブラフだ。それに付随して……。


『バウンティを殺したのは賞金稼ぎ』

『バウンティ暗殺の依頼をこなせる者などいるのだろうか』

『バウンティを殺せるほどの賞金稼ぎならば各国からの依頼が目白押しになるだろう』


 この三点を広めたい。


「その目的は何でしょうか?」

「私の気晴らしです」

「っふふ、ははは! なるほど、気晴らしですか。この噂で炙り出せますかな? 何を、誰を、炙り出そうとしているのですか?」

「本命のブラフを別のブラフで薄くしたいんですよ。周りがそちらに注目すればするほど、本命に注目している人が分かりやすいので」

「私を仲間に引き込みたい理由は、公平だからだけですか?」

「オスカーさんは王族や関係者から独占取材をできるほどのコネクションを持ってますから。取材していても犯人に怪しまれませんし、個人で取材されたら逆にバレてこちらがアワアワしそうだなと……」

「ふふっ。なるほど。少し、ワクワクしてきました。犯人を暴いたら真実の公開はさせていただけますか? でないと、記者生命はもちろんですが、プライドが許しません」

「はい。犯人を見付けれるんなら、私の腹黒さから最低さまでドンと公開して構いません!」

「あと、一番大切な事ですが、この事により誰かが亡くなられたりする可能性は?」


 この質問にはちゃんと答えるべきだ。


「……解りません。私、感情で動いちゃうんで。バウンティは色んな状況や背景とか見て判断して……恨んでないって言ったけど……まだ、許せそうに無い。だから、解りません」


 オスカーさんに手を取られた。


「カナタ様、ご協力いたします」

「いひひ。ありがとうございます!」


 そうと決まれば、本格的な悪巧み開始だ。


「ところで、カナタよ」

「はいはい? 何ですか王様」

「カナタも死んだ事にする必要は無かったのではないか?」

「それは私も思いました」


 オスカーさんも不思議そうだ。


「それが本命なので」


 犯人は知っているはずだ。あの毒は触ったくらいでは死なないと。触ったくらいで死ぬのならバウンティに注射器で注入する危険を冒す必要は無いのだから。

 そもそもそんな毒だったら自分もかなり危険だし。


「カナタ様がなぜ死んだか気にしている者が怪しいと? 気にしない可能性もありませんかな?」

「犯人は顔見知りの賞金稼ぎらしいので」


 バウンティが私に言わないのは、少なからず私とも仲が良いからだ。そして私には危害が加えられないと解っているからだ。


「追加で流したい噂には何か目的があるのか?」

「うーん。引っ掛かれば儲けモン程度ですけど、アホな人なら名乗り出そうな気もするけど、ゴーゼルさんとカリメアさんの怖さを知らない人とかいるのかな……」

「ですが、巷では格好のネタにはなりますね」

「はい!」


 オスカーさんが妙に楽しそうにメモをとっていた。


「カナタよ、頼まれていた来訪者の動向だが、一番に来たのはヴァレリー男爵一家とエズメリーダだった」

「あぁっ、しまった。そうなりますよね。申し訳ないなぁ」

「……うむ。エズメリーダが泣きじゃくっておった。二人を養子にすると言っておったが、ゴーゼル達がいるではないかと言って止めたが……私にはフォローはできぬぞ」

「ふぇい。ちゃんと怒られます」

「次にアダムがお前達二人の遺体を見せろと来た。そちらはどうにか誤魔化して、今はアステルとイオの護衛をしておる」


 ――――ここにいるんだ。


「あー、アダムさんは仲間に引き込もうかなぁ」

「あやつは大丈夫なのか?」

「バウンティに毒を使わずに勝てるのは、ゴーゼルさん、カリメアさん、アダムさんだけなんで」


 カリメアさんはむしろ笑顔で毒を飲ませそうな気がするけど、それは言わぬが華だろう。そもそもその可能性は無いけど。

 取り敢えずアダムさんを呼んでもらう事にした。

 

「次に来たのがハブリエルと絵本作家の、名は……チズールだったな。ハブリエルは何の毒が使われたのかは解ったのかと、お前達がどこで見付かったのか、犯人の目星等を気にしておった。犯人捜索するのであれば協力するとの事だ。チズールは子供達にカレーの差し入れだった」

「なるほど」


 その他、何人か王城に問い合わせなどが来ていたが、一番酷いのはもちろんゴーゼルさんとカリメアさんなのだが……。ほとんどの人が子供達の行く末の心配をしてくれていたそうだ。

 有り難い。けど、その中に犯人がいるのかぁ。皆疑いたく無いんだけど。


 ――――コンコンコン。


「アダム様をお連れしました」

「む、入れ」


 ――――ガチャッ。


「……」


 ――――バタン。


 ドアを開けたと思ったら無言で閉められた。


「俺、霊感無いのに! いや、マジ無いんだけど! やべぇ。鳥肌すげぇ。やべぇよ。何がヤバいって、スゲェやべぇよ!」


 何か廊下で馬鹿な事を叫んでいた。結果、ヤバいしか言ってない。


「失敗したかも……」

「アダム様って、慌てると少し頼りなく感じますね」


 オスカーさんが冷静に分析していた。


「アダム様、陛下がお待ちですので、お入りください!」

「えー。マジで? 俺、呪われない?」

「大丈夫でございます」


 アダムさんが廊下で爺やさんに怒られていた。


「失礼します…………ヒッ」


 アダムさんと目があったが引かれたというか、怯えられた。


「別に呪いませんけどね?」

「ちょ、皆さん、聞こえました? ってか、見えてます? このちびっこ!」

「こら、女性に指を差すでない」


 普通に王様が注意していて面白かった。


「ちびっこも失礼ですよ! あと、死んでませんから!」

「え? 本物!?」


 オスカーさんは一瞬で本物だと判ってくれたのに。なぜに幽霊扱いなんだか。


「年の功、ですかね?」

「まぁ、そうであろうな。幽霊はまず無いであろう」

「ちょ、説明お願いしますよ!?」


 ザクッと説明とお礼を言った。


「っ…………良かった。カナタだけでも生きてて良かった」


 アダムさんが抱き締めてわしゃわしゃと頭を撫でてくれた。


「バウンティも生きてますよ。ちょっとギリでしたけど」

「えっ!?」


 そういえばオスカーさんに言いそびれていた。コレばっかりは確実に仲間になってもらえてからしか教えたく無かったと謝った。


「それはそうですね。構いませんよ」

「チビ達は教えて無いんじゃなくて、そもそも知ってたのか!?」

「そーゆー事! そっちもちゃんと騙せてた?」

「あー、くそぉ。なるほど! 気を利かせてカナタの国に行ってる事にしてるのかと思ってたぜ!」


 目論見通りで安心した。


「さてさて、ではオスカーさんは噂と取材の件よろしくお願いします。アダムさんは他の賞金稼ぎの人の動向とあの二人のストッパー役お願いします。確実に明後日以降にはなりますが、ちゃんと二人で戻って来ますので」


 次は王様の執務室に飛んでくるように言われたが、行った事無いと言うと、小サロンで良いと言われた。戻る前にスマホに連絡入れると約束もした。

 悪巧みをしたらスッキリたし、一旦家に戻ろう。

 



 悪い子カナタさんの暴走。


次話も明日0時に公開です。

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