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74、皆で夜ご飯。

 



 キッチンに全員集合だ。ギュウギュウ詰めになるかと思ったがそうでもなかった。

 

「バウンティは子供達と卵割りね」

「ん、何個?」

「んー、八個かな。一人二個ね」


 私達も割るので後から合体させる。


「ミラさん、マイヤさん、エズメリーダさんも卵を割ってみましょう」


 私達は七個割る。先ずは一つで見本を見せる。後は子供達と同じように二個ずつ割ってもらう。


「どっちがきれいかしょうぶねー」


 アステルが挑戦してくるらしい。大人を舐めたらあかんぜよ! って事で勝ちたい。

 先鋒はドキドキのミラさん、いつまでも殻が割れない。極小のコンコンという音のみが聞こえてくる。もうちょっとだけ強く! と言うと「コンッ!」と口で言っていて可愛かった。一個だけ黄身が少し破れた。

 中堅はマイヤさん。ミラさんを見て学んだのだろう「コンッ!」と口で言っていた。何を学んでるのか気になるが、二個とも綺麗に割れたので何かしらの効果があるのかもしれない。

 大将はエズメリーダさん。「コンッ!」と言う声と『グシャッ』という音が同時に聞こえた。


「潰れましたわよ?」

「……えぇ」


 殻が入らないように気を付けながらグチャった卵をボウルに移す。二個目は多少形が残った。


「難しいですわね」

「エズメリーダさんは包丁もだけど、勢いが良すぎですね。いつか指を吹っ飛ばしそう」

「ちょ、カナタ? 何させたんだよ?」


 エズメリーダさんが妙に軽快に包丁を使った話しをしていたら子供達も卵を割り終わったので見比べて見ると、まさかの大人の負け。


「かったぁ!」

「負けたし!」

「エズメリーダが足引っ張ってますね! わはは」

「ダニエレは出来るのかしら!?」

「普通に出来ますよ?」

 

 ダニエレくんのアッサリとした返事にエズメリーダさんがプンスカだが、軽く無視してオーブンにハンバーグを入れる。焼き加減はフリードさんに任せた。


「さて、ご飯も炊き終わってるので先ずはチキンライスにします」


 本当は炒めた方が良いのだが、今日は楽をする。ボウルにご飯を入れて、チキンライスの具をご飯の上に投入。ヘラで切るように混ぜ合わせる。良く混ざったらお皿に盛る。


「はい、じゃあバウンティ盛ってね」

「ん」

「え、バウンティ様にさせますの?」

「だってどんだけ食べるか解んないんですもん」


 お腹減ったとか言って大食い選手権かってくらいに盛る時もあれば、おかずいっぱい食べたいからってお米はそんなに食べない時もあるのだ。

 ニコニコと山盛りにしてるので卵を多めにしてあげよう。

 子供達やブルーノさん、ダニエレくんも思い思いに盛って遊んでいる。


「カナタは?」

「んー、お茶碗の半分くらい。皆さんは?」


 三人とも私と同じくらいの量で良いそうだ。バウンティがミラさんのも盛ってくれた。マイヤさんのはブルーノさんが、エズメリーダさんのはダニエレくんが盛ってあげていた。


「あら、なんだか嬉しい気持ちになりましたわ!」

「解りますわ! 主人がこのようなお手伝いして下さるなんて……凄くときめきますわ!」

 「んふふ。さて、ここからが勝負ですよ!」


 フライパンにバターをひき、ジュワッと融け出したら、お玉で卵をすくいフライパンに入れる。菜箸でグルグルとかき混ぜドロッドロのスクランブルエッグ手前の状態にして少し待つ。フライ返しを使ったり、ライパンの柄を叩いたりして形成していく。


「ヤワヤワのオムレツ状にしたら、ホイッ……と、チキンライスの上に乗せます」

「キャハハハ、へんなかたちですわ!」

「ぷぷぷ。うん、へんだね?」


 ミレーヌちゃんとフィリップくんがツボに入ったらしい。ブルーノさんとダニエレくんもちょっと笑っていた。


「後からもちょっと面白くなるからねー。バウンティ達はサラダとか運んでー」

「ん。アステル、イオ、お手伝い」

「「はーい」」


 バウンティがサクサクと子供達に指示を出して運んでいく。ブルーノさんとダニエレくんはキッチンで見学するそうだ。


「さ、冷えると悲しいから、サクサクと作って行きますよー」


 コンロは横並びに三ヶ所あるので三人同時に教えて行く。

 先ずは自分の分で練習する。私とフリードさんで火加減に注意しつつ教えて行く。私は菜箸だったが、皆はフォークでスクランブル状にした。

 初めてのオムレツは、流石に完璧に綺麗! とはいかなかったが、ある程度形にはなっていた。


「さ、次は子供の分を。エズメリーダさんはアステルかイオの分をお願いしますね」

「じゃあ、アステルのを作るわ」


 三人とも真剣なのだが、ミラさんだけがガチガチに緊張している。どうしたのか聞いたら完璧に覚えてダミアンさんに作ってあげたいんだと言われた。なんて可愛いんだろうか。


「おぉ、皆さん上達してますよー。次は旦那さんの分!」


 ミラさんにはイオの分をお願いした。回数を重ねる毎に上手になってきている。

 最後はバウンティの分なので残りの卵液を全部使い、たっぷりめのオムレツを作った。


「でっかいなぁ。ちゃんと開くのかなぁ……」


 チョイ不安になりつつもペイッとバウンティにオムライスを渡した。

 私がバウンティの分を焼いている間にフリードさんが三人とハンバーグをお皿に盛り付けてくれていた。いつの間にか付け合わせの温野菜とニンジンのグラッセまで用意されている。


「バウンティ様、チキンライスをあれだけ……山盛りでしたのに、ハンバーグを四個も食べるのですか?」

「はい。大丈夫ですよ。バウンティ様はいつもこれぐらいです」


 作っていたハンバーグのソースを温め直してかけて完成させた。


「よし! お疲れ様でした! ダイニングに向かいましょう!」

「はい、ご指導ありがとう存じます」

「楽しかったですわ!」

「チッチッチ! 楽しいのは今からですよー?」


 ムフムフ笑いながらダイニングに移動した。




 皆で席に着き、いただきますと私達家族だけ言ったが、まぁいい。


「さて、オムライスはまだ完成ではありません! 皆さん、スプーンを持って下さい」


 皆戸惑いつつもスプーンを手にしてくれたので、私のでデモンストレーションして見せる。オムレツの真ん中に横一文字でスジを入れ、上下にペロンと開いてチキンライスを覆う。


「まぁ、綺麗に開けましたわ!」

「ほう、面白いですな」

「できた?」

「できましたわ!」


 大人も子供もキャッキャしている。楽しそうで良かったと微笑んでいたら、いつもの如くバウンティがオムライスをグイグイと押しやってくる。


「もー! 解ってるから!」


 ケチャップでハートを描いて渡す。満足そうにニヤリと笑って食べ始めた。


 ――――早いなオイ。


 アステルのにもハートを、イオのには星を描いて渡した。

 

「何してるのかしら? あと、どうやって食べるのかしら?」

「あ、すんません。卵とチキンライスをスプーンで一緒にすくって食べるんですが、味は付いてるのでそのままでもいいし、バウンティみたいにケチャップ付けて食べても良いんですけど……たぶん、ハートを描いて欲しいだけだと思います」


 ミレーヌちゃんとフィリップくんがオムライスをそっと母親に渡してケチャップ要求していた。なぜかブルーノさんとダニエレくんもイソイソと渡していた。


「あらあら、大きな子供が増えましたわ。うふふ」

「あら、ダニエレもハートがいいの?」

「普通、聞きます? 当たり前じゃないですか!」


 エズメリーダさんが何か勝ち誇ったように聞いていたが、ダニエレくんがドストレートに斬り返していた。エズメリーダさんの顔がシュボボボと真っ赤になってしまった。


「ちょろい」

「ん。ちょろいな」

「はい。エズメリーダって、凄くちょろいですよ」


 ダニエレくんはエズメリーダさんの性格をよく把握しているようだ。


「ん、今日のハンバーグ、何か美味い」

「あー。シュトラウト家の肉は何か凄く良い肉だった。あと、オーブンで仕上げた」

「ん、珍しいな。いつも面倒くさがるのに」


 時間の配分的にオーブンを使った方が良かったし、オーブンはフリードさんが掃除してくれるし。自分でしなくて良いのならね? 使っちゃうよね?

 

「オムライスですか。とても美味しいですね! 玉子のトロトロさと甘さがチキンライスの酸味を包み込んでとてもまろやかになるのですね。ハンバーグは我が家のシェフのものより美味しいです。お肉が違うと言われましたが、味や柔らかさも全く違いますよ! そして、このソース! 何とコクの深いことか……カナタ様は料理の修行などされたのですか?」


 ブルーノさんの食レポ力が炸裂した。


「あはは。ありがとうございます。レシピを知ってるだけですよ。この二つは作り方さえ覚えればとても簡単なんですよ?」

「マイヤ、そうなのかい?」

「ええっ……簡単……? いくぶん初めての事でしたので、何とも言えませんが、レシピと手順はとてもシンプルでしたわ」

「そうですわね。野菜もほぼ同じものですし」

「あっ……」


 ――――それを言わないで欲しかった。


「やさい、いっしょ? ……ママ、ハンバーグにもニンジンいれたの?」

「……入れました」

「むぅー!」

「気付かずに半分も食べてんじゃん? グラッセのニンジンも食べてんじゃん? 美味しかったんでしょ?」

「むぅ!」


 イオがプリプリしている。言われるまで入ってる事に気付いて無かったくせに。オムライスのはオッケーのくせに。訳が解らない。

 イオの謎の好き嫌いに悩みつつも皆と話しながら楽しく食べた。




「本日はとても濃厚な時間を過ごせましたわ。ありがとう」

「私も、とても楽しかったです。エズメリーダさん、また手紙書き……書いてもらいますね!」

「ふふ、楽しみにしてるわ」

「カナタ様、また王都にいらした時はぜひご連絡下さいね。私共もローレンツ方面に向かう時はご連絡いたしますわ」

「もちろん! そして、ぜひ!」


 お別れの挨拶をしていると、子供達もそれぞれで挨拶をしていた。


「イオくん、おてがみや、せいれいをおくってくださいね? うわきしたらダメですわよ?」

「うん! ミレーヌちゃんもだよ?」

「はい!」


 ――――チュッ。


 二人のラブラブな会話を見ていたら、まさかのミレーヌちゃんからのキス。ほっぺにだが、イオは幸せそうにモジモジしていた。


「アステルもする!」


 ――――ブチュッ。


「あっ…………」


 アステルが思いっきりフィリップくんの唇を奪っていた。フィリップくんもモジモジしている。男児はモジモジ、女児は満足げ。肉食女子なのか?

 

「えと、すみません。『好きだからキスした』以外の他意はありません」

「あら、他意があっても構いませんわよ? うふふ。ウェルカムですわ」


 取り敢えずブルーノさんとマイヤさんに謝ったが、マイヤさんが悪い笑顔だ。

 チラリと見たバウンティは放心していたので放置。

 玄関で皆を見送った。




 アステルのアレはファーストキスなのかどうなのか。ちょっと悩んだカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

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