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69、たこ焼き

 



 ホットプレートのスイッチを入れ、タコパスタート!

 鉄板に油を塗り、生地をたっぷり流し込む。

 材料の説明をするとビックリされた。それだけで美味しいのかと疑心暗鬼のようだ。ちなみに今回は天かすのみ真面目に作った。代用でポテトチップスもイケるが、ここには売ってない。チップス作るよりは天かすの方が楽だった。


「先ずはオーソドックスにタコのみで」


 一穴一個と伝えて皆に入れてもらう。生地に火が通りフツフツとなり出したらピックを持って周りの生地を巻き込みながら丸めていく。


「はい! こんな感じでクルクルしていきましょう。柔かったら隣を処理しつつ、もうちょっと火が通るのを待って下さいね」


 私とバウンティで半分ほど担当して、残りを五人で頑張ってひっくり返してもらった。


「おおっ、ブルーノさんめっちゃ上手!」

「これは……思いの外楽しですな!」


 料理は使用人の仕事とか言っていたはずなのにキラキラの笑顔でたこ焼き作ってるし。いや、目論見は成功なんだけど、ちょろすぎるぞブルーノさん。


「ミラさん、その二つはお皿に上げて良いですよ」

「は、はい!」


 第一段が焼き上がったので、ソースの説明をする。やはり先ずは中濃ソース、定番だ。売ってあるので食べた事ある味でもあるはずだ。


「超熱いんで、半分に切ってフーフーするか、根性入れて食べて下さいね!」

「カナタ、根性入れて食べるって何だよ……」

「えー、ダニエレくんはかぶり付いてみるといいよ。上顎の皮がベロンチョ剥けるから!」

「それ、火傷してるじゃないか!」

「まあね!」


 慣れだ慣れ。私は剥けても良いからハフハフ言って食べたい派なんだと言うと皆に引かれた。バウンティだけケタケタ笑っている。

 皆素直に半分に切ってフーフーしている。


「んはっ……ハフッ。外はハリがあるのに中はトロトロで……熱っ!」

「えっ……」


 ダニエレくんはわりと早めに食べたが、まだ熱いと言ったのでミラさんが慌てて追いフーフーしていた。


「まぁ、美味しいわ! タコがコリコリしてますわね。んふふ。面白い食べ物ですわね」


 エズメリーダさんは次は丸のままチャレンジするらしい。私がハフハフしながら食べているのを見て、何となくコツが見えたらしい。何だコツって。


「ミレーヌちゃん、フィリップくん、大丈夫そう?」

「カナタおかぁさま! チーズいりがとてもおいしいですわ!」

「ぼくも! チーズとてもすきです! あ、ちちうえ、マヨもためしてください!」


 何か子供達の鉄板は自由になっていた。まぁ、放置でいいか。


「なっ、チーズだと? カナタ様、こちらも……」

「はい、第二弾は好きな具材で作りましょう!」


 取り敢えず、今あるものにはマヨや柚子ポンなども勧める。

 たこ焼きをつまみつつ、第二弾の生地を入れて、それぞれの陣地を決める。


「ここが私の陣地ですな。やはり、先ずはチーズですね」

「あら、私はカレー粉とウインナーにしてみますわ」


 ブルーノさんとマイヤさんがなぜか競いだした。エズメリーダさんは料理のセンスが壊滅的なのか謎の組み合わせをしていた。ダニエレくんが必死に止めている。


「カナタ! 爆笑してないで止めてくれよ!」

「いや……キムチ……ぶふふふっ。取り敢えず食べてみようよ?」

「いや、このピクルスとバジルは無謀だろ! っ! あぁ、何で中にマヨをいれるんですか! ちょっと! ピクルスの汁が俺の陣地にはみ出してますって!」


 もしかしたらもしかするかもしれないが、何気にバジルは無意味な空気が出ている。

 私は普通に作った。出来上がった後に鉄板にチーズを入れてたこ焼きを鉄板に戻す。カリカリチーズでコーティングした。


「まぁ! 自分だけ凄く美味しそうなの作ってますわよ!」


 ミラさんに共有技術の秘匿だと糾弾され、作ったたこ焼き没収の刑に処された。そして、皆のを一つづつもらって味見係を命じられた。


「ん! カレー美味しい。子供向け!」


 マイヤさんがフフンとハナを鳴らしてブルーノさんに自慢していた。


「あー、これエズメリーダさんのかぁ。赤いなぁ……あれ? ん? タコも入ってたんだ。思いの外美味しいけど、キムチ苦手なら無理かなぁ。あ、後から来るバジルの風味が邪魔!」

「なによ! ……ん、微妙ですわね」


 自分で食べてその感想なら文句は受け付けない。


「ほらもー。だから言ったじゃないですか!」

「なによっ! ダニエレは何作ったのよ?」

「ほい」


 ダニエレくんが焼き終わったたこ焼きをエズメリーダさんにあげていた。


「そこはあーんでしよ!」

「いや、焼き立てだって! カナタって本当に馬鹿な!」

「ん!」


 バウンティに全力肯定された。酷い。


「あら……美味しいじゃない!」

「何入れたの?」

「えび、ミニトマト、チーズ。タレはバジルマヨで」

「何気に最強の組合わせじゃん!」

「カレー粉とチーズも良さそうだよな」


 うむ。それも最強タッグだ。


「エズメリーダは経験を詰めば大丈夫だろ…………ぶふっ、たぶん。後からのバジルが凄いな。ぶふふふっ。不味い」


 バウンティがエズメリーダさんの謎焼きを食べて吹き出していた。


「バウンティ様までっ!」

「うふふ。お料理と言っても、こういった形でのお料理は楽しいですわね! 子供も一緒に出来るのが良いですわ」

「ちょっと火傷とかには気を付けないとですけどね」


 今回はメイドさんが真横で監視しているので安心だ。時々もう一人と交代して消えているのでキッチンで食べているのだろう。フリードさんもキッチンで作っているし。


「はーい、お待たせいたしました。揚げたこ焼きです。カナタ様のご希望でタコは大粒、チーズたっぷりです」


 ――――むふふ。揚げタコ!


 この為のキッチン用の鉄板なのだ。フリードさんグッジョブ。

 メイドさんとフリードさんには好きなタイミングで食べて良いよと伝えている。焼いている匂いでお腹が減るし、焼き立て最高だし。パーティーの時は使用人さんだってパーティー参加が我が家のルールだ。


「あぁっ、揚げたこ焼きは危険です!」

「えっ? どうされました?」

「熱いです!」


 ブルーノさんがつい丸い状態の物にかぶり付いてしまったようだ。慌てて冷たい麦茶を飲んでいる。


「ふぅー……美味しい! 揚げたこ焼き、素晴らしいですな! 外はカリッカリ、中はトロトロですよ」

「んんっ、チーズが伸びますわ!」


 エズメリーダさんが揚げたこ焼きに半分だけかぶり付いたらしい。チーズを垂らして慌てていた。垂れたチーズが顎に当たると地味に熱い。頑張れエズメリーダさん。


「この鉄板欲しいなぁ。ホットプレートは一応持ってるけど。付け替えれるんだよな?」

「えぇっ? ダニエレ、持ってますの?」

「あぁ。下町で一人暮らししてた時に買ってますよ」


 ミラさんがビックリしていた。


「貴方、自分で料理をしてましたの!?」

「え? してたけど?」

「君は成人してから家を出たんだよね? 一から下町の生活を覚えて、料理も覚えたのかい? 大変じゃなかったのかい?」

「はい。同僚に教えてもらいながらでしたが、色々な発見がありましたよ」


 シェフの作る料理は物凄く手が込んでいたんだなとか、掃除や洗濯はそれまでは勝手にされているものだったが、自分でやると大変だし、冬は指が痛い事に衝撃を受けたらしい。そして、それを小さい子供や、体力の無さそうな女性がせっせとこなしている事にもビックリしたそうだ。


「初めて『あかぎれ』を体験した時は本当に衝撃でした。実家にいた頃、実はメイド達の手が汚いな位にしか思って無かったんですよ。でも、体験してみるとアレは男でさえも『痛い!』と愚痴りたくなるほどの痛みなんですよ」


 指を曲げた瞬間に『パキッ』と割れるように皮膚が裂ける。水仕事に付き物の痛みだ。ハンドクリームなどで手入れをこまめにしていればある程度は防げる。

 

「貴方、それでメイド達にハンドクリームなんて高価な物をあげていたの?」

「えぇ。この数年で色んな種類のハンドクリームが売り出されててかなり安価で購入出来るようになったんで」

「うふふ。カナタ様のおかですね」


 メイドさんがクスクス笑っている。とある言い合いをカリメアさんから聞いたのだろう。ここのメイドさん達もハンドクリームを良く使っている。仕事で王都に来たカリメアさんからもらったと言っていたし。


「カナタ様のおかげ?」

「あ、申し訳ございません。いつもの感じでお話しに参加してしまいました」

「それより、どういう意味だ?」

「はい。ダニエレ様と同じように、カナタ様があかぎれや手荒れを心配して、ワセリン由来のハンドクリームを開発して下さいました。お値段の方もワセリンとほぼ変わらない程度にしたいとカリメア様と交渉して下さったそうです」

「交渉? …………駄々捏ねてただけだったけどな?」

「あら、バウンティ様ったら! 折角良い風に表現しましたのに!」

「いや、あれ酷かった。完全に駄々っていうか……脅し?」


 メイドさん含めディスられた。

 確かに駄々捏ねた。売価をある程度指定できないならレシピを教えない。そして、『ワセリンだけで充分保湿効果があると言いふらして、現在売られている高級ハンドクリームに不信感を植え付けてやる!』と脅した。

 だって、ハンドクリームが高級ハンドクリームしか無かったんだもん。意味が解らない。


「えっ、カリメア様を脅したんですか!?」

「あぁ。カリメアがオロオロしてた」

「してたねぇ。ハンドクリームの権利? 持ってる人がどっかの伯爵さんお抱えの商人さんだから穏便に済ませたかったらしいですよ? そんなの関係ないし! あのハンドクリーム、そんなに良くなかったし! ベトベトのギトギトだし! 匂いがしつこいし!」


 そもそもワセリンや蜜蝋があるのに何でそこから商品が派生していかないのか。憤慨しながらたこ焼きを貪り食べる。


「ふんむむむー」

「はいはい。食ってから話せ」

「むん」

「ワセリンとは確か、炭鉱夫の開発した薬品ではありませんでしたかな? 原料が石油だというのは聞き及んでいますが。害は無いのですか?」


 やっぱりだ。カリメアさんにも聞かれたが、何故かワセリンが忌避されている。ローレンツにいるワセリンを取り扱っている商人さんと話して確認もしたが、ネットに公開されている製造法方と何も違わなかったので安全なのは間違いない。

 ワセリンの利点を話しながらも、たこ焼きをモリモリ食べた。




 上位の人達はそうそう手荒れしないくせに! と憤慨するカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

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