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68、パーチー開始

 



 ――――チュッ。


「おっはよー。()()()()日和ですよー」


 燦々と太陽が照っている。今日は暑くなりそうだ。

 バウンティがのっそり起きたので子供達を起こすのは任せてキッチンに向かった。作業台の上に大きなホットプレートが二台ドーンと置いてある。ラルフさんに感謝だ。


「おはようございます。朝は軽めのゾースイにしております。キムチとカレー粉と瓶は冷蔵庫に入れてますよ。あの瓶の液体は何ですか?」


 小皿にちょっと垂らしてフリードさんに渡すと、すんすんと匂いを嗅ぎ、人差し指に少し付けて親指で粘度を調べた後、舐めていた。何か妙な気迫を感じるのは何でだ。


「…………何かの柑橘と酢……砂糖? あ、カナタ様の持ち込まれたショーユですね? 少し海草の風味も」

「おおー。ほぼ材料言い当てちゃった」

「柑橘のようなフルーツのような……それが解らないです。何が使われているんですか?」


 柚子の説明をし、カリメアさんに苗の育成を丸投げしたと伝える。


「おや、では確実に食卓に並びますね」

「ですよね!」


 ――――そう、確実に!


 届いたキムチを刻んだりしている内に子供達が下りてきたので、サッと朝食を済ませ諸々の準備をした。




 十時ちょっと前に全員が揃った。お初のエズメリーダさんとダニエレくんがモナハン夫妻とフィリップくんに挨拶をしていた。


「えーと……子供達は自由に遊びなさい! 何なら大人もご自由に!」

「「はーい」」

「雑だな」

「雑ですわね」


 子供達は素直におもちゃを出して遊んでいた。

 私達には取り敢えずクッキーと飲み物を配ってもらった。


「あ、ご報告があったんです。私達、明日でローレンツに帰るので……お世話になりました! ってのと、また来た時は遊んで下さい!」

「あら、もう帰られるんですね。フィリップが知ったら泣きそうですわ」

「ミレーヌは昨日からグズってますわ。はぁ……」

「アステルも珍しくシュンとしてるんですよ! イオは……すみません、いまいち理解してないっぽいです」


 こういう所はバウンティにそっくりなようで、その状況になって慌てる派のようだ。


「ママー、デーブーデーみたい!」

「あー。んー」


 カリメアさんに許可もらって無い。


「グランマから『いいよ』って言われてないん――――」

「きーて? しゃしんもとりたいの!」


 イオが上目遣いでお願いしてくる。仕方無しにホーネストさんを送りはしたが、期待はするなと念を押した。


「ただいまー。カリメアさんから『そのメンバーなら良いわよ』だって」

「良いんかい! ありがとう、ホーネストさん」


 許可が出たので机に設置してあげる。何を見るのか聞いたら、自分達で選ぶそうなので、再生する係はアステルのみとした。イオにはまだちょっと難しい。

 子供達がキャイキャイとディスクを選んでいる。


「何を見るんだろうね…………あ、それママのですけど……」

「おうたきくって!」


 ライブ映像で良いんだろうか。お歌って言うか、だけど。

 大人達にも見たければどーぞと言うと全員が興味津々だった。

 再生が始まった。

 タイトルコール、バンドのロゴのアップ、観客の黄色い叫び声、時々野太い声。ステージのライトアップ、ドラムの人が「ワン、ツー、ワン、ツー、スリー、フォー!」とカウントし曲が始まる。初めはノリの良いロックの曲から。一気にテンション上げて、ライブに引き込まれる。

 チラリと皆を見ると食い入るように見ていた。


「こ……これは一体…………どこの国の言葉でしょうか?」

「私の国です。んで、これはライブといって、歌の野外コンサートのような物です」


 チケットを買って会場に集まる。そんな事をザックリと説明した。


「それよりも! 一体この……機械? ですか? なぜ動いているんでしょうか? なぜ人の声がするのでしょうか? どこから音が……」


 以前カリメアさんも納得した、パラパラ漫画と写真の説明をする。納得はしてもらえたが、理解は追い付かないそうだ。今は映写機の開発中らしいのでそのうち何かどうにかなると話した。


「カナタ……貴女って凄く楽してないかしら?」

「ふおっ、そ、そんな事ないよ? 説明したりとか色々頑張ってますよ?」


 エズメリーダさんのジト目が痛い。


「もうすぐだよ! ジャン! ってなったら、いっしょにジャンプするの!」


 ――――ジャン!


 子供達がボーカルの動きに合わせて一緒にジャンプしていた。微笑ましい。が、明らかに子供向けでは無い。


「お歌は長いから、他のも見てみたら?」

「はい! わたくし、ほかのも、みてみたいですわ!」


 今度はアニメにするらしい。バウンティが通訳する為に子供達の所に座った。一応字幕は出してあげたがほとんど覚えてしまったらしい。何か、ご苦労様だけど、以前バウンティにスポーツ実況をやらされたのよりは楽な仕事だと思う!


「絵が動いてますわ!」


 これこそパラパラ漫画の要領だと話す。


「これを開発中なのですか?」

「んー、近しい物にはなると思います。初めは劇場で写し出して、声はその場でとか、これみたいに画面に台詞を書いて読む感じだと思います」


 サイレント映画時代はそんな感じだったらしいし。そこからスタートだろう。


「まぁまぁ! 凄く楽しみですわ! 先程のライブ、ですか? あれのように、オペラをいつでも見れるようになったりとかするのでしょうか?」

「うん、時間は掛かるでしょうが、きっと出来ますよ! 子供の動いてる映像が思い出として残せるようになるんですよー」


 部屋からプリンターを持って来てテレビに熱中する子供達を写す。それぞれの分をプリントして渡す。


「まぁ! 今の間にですの!?」

「後でちゃんとしたの写しましょうね!」


 皆、嬉しそうに写真を見ている。エズメリーダさんと二人写真を撮ってもらったり、エズメリーダさんとダニエレくんの写真を録ったりしてイジった。


「写真を撮るのなら、おめかしして来ましたのに!」

「えー、普段のゆるっとした感じの方が思い出っぽいじゃないですか!」

「ふふっ。変な子ね」


 何が変なんだと騒いだら子供達から煩いと怒られた。


「すんません」

「ん、一時間たったぞ。休憩時間だ」

「「はーい」」


 放置するといつまでも見続けるので一時間見たら三十分の休憩タイムと決めている。


「なぜきゅーけーですの?」

「ずーっとみてると、めがいたいいたいになるんだよ」


 慣れてないと、ずーんと目の奥が痛くなるのだ。ゴーゼルさんで実証済みだ。




 子供達の事を話したり、賞金稼ぎの人の話を聞いたり、アティーラの情勢を話している内にお昼になった。


「今日は、皆で簡単なお料理をしようと思います!」

「料理ですか? それは使用人の仕事では?」


 ブルーノさんが少し眉を寄せて聞いてきた。こんな時のための印籠がある。


「実は、ゴーゼルさんとカリメアさんの大好物でお二人共楽しそうに作って食べてるんですよ。ゴーゼルさんなんて、自分で作ったやつの方が美味しいとか変な戦いを挑んで来るんです! 良かったら遊び感覚で体験してみませんか?」


 一緒に楽しみたいとお願いした。

 ちなみに、ゴーゼルさんのは食べたら本当に美味しかったりする。フォアグラ入れられた時はさすがに怒ったけど。合う合わないとかじゃなく、もったいない。そして、そんなに美味しくも無かった。


「うふふ。ゴーゼル様は相変わらず楽しそうに過ごされてますね」

「私は猿ぐつわの時の恐怖の記憶が……」


 バウンティを蹴ろうとしていた時の気迫が怖かったらしい。そして、ケタケタ笑いながらゴーゼルさんを弄るバウンティもチョイ怖かったらしい。

 エズメリーダさんはその話しは聞いてなかったらしいので、船での出来事を話した。その写真も見せてあげるとエズメリーダさんがクスクスと笑っていた。


「なるほど、コルパーフィールド様ですか。因縁の仲ですわね。王国側にもよく苦情が来てましたわ」


 マジか。あの人は何回やらかしているんだか。そして、なぜに見に行くんだか。


「仕方無いわよ、招待だったり、摂待だったり、護衛だったりで付き合う他ない事もあるのよ」

「いや、それのどれも騒いだらダメでしょ!」

「うふふふ。誰も止められないもの。たまにバウンティ様が同席されても消えますもの」

「知ってるー。イーナさん置いて逃げたって。最低だよねー」

「あら、ソコについては口をつぐみますわ」


 そんな事を話している内にメイドさん達がテーブルにセッティングしてくれた。子供達だけで作って楽しめるようにミレーヌちゃんとフィリップくんにはメイドさんが付いて、火傷しないようになどお世話をしてくれる事になった。アステルとイオは慣れているのでバウンティがちょこちょこ見る程度で大丈夫だろう。

 さあ、タコパーチーの始まりだ!




 まだ焼いてません!


次話も明日0時に公開です。

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