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63、たまには平和に。

 



 千鶴さんとハブリエルさんと別れてシュトラウト邸に戻る。

 メイドさんにハブリエルさんと会ったと話したら物凄く羨ましがられた。


「ハブリエルさんって、そんなに人気なの?」

「はい! クレメンテ準男爵家の三男様なのですが、自力でゴールドになられて、お家の負債などを全て肩代わりされた他、邸の改築、使用人達の待遇改善など、お家の立て直しをされたのに、家督はお兄様に譲られた、とても心優しい方ですよ!」

「く、詳しいね」


 新聞などに特集が組まれている事が多いらしい。

 下町を嫌がっていた割りには、使用人さん達への待遇改善とかしてあげているのか。確かに優しい人なのかもしれないなと考えていた。


「……人気を上げる為のプロパガンダじゃねぇのか?」

「あー。その感じがプンプンする人ではあったけど、千鶴さんを保護してあげたり、優しいよ?」

「かもな」


 バウンティはそんなに興味無さそうだった。


「お食事の準備が調いました」

「はーい」


 ダイニングに行くとまろやかなミルクの匂いが漂ってきた。


「シチューだぁ」

「きょうもパン? ごはんは?」

「は、はい。イオ様はお米の方が良かったでしょうか?」

「うん。シチューはね、ごはんとたべるの」

「すぐ用意――――」

「用意しなくて良いよー! イオ、パンと食べなよ?」

「むー……ごはんにシチューかけるの、したいの」

「シチューをパンにシミシミさせるのも好きでしょ?」

「……すき。つぎはごはんにしてって、フリードにおねがいする!」

「ん、食べたらお願いしに行け」

「うん!」


 賛否両論だが、シチューをカレーのようにご飯に掛けるのが好きなのだが、イオもアステルも私のせいでそういう食べ物だと思っている。バウンティはパン派だ。お米は好きだが、以前『流石にシチューと米は……』と言われた。

 

「ん、香草が効いてるね。高級な味がする!」


 日本のいわゆる『シチュー』とは違った。確かにこれだとご飯よりパンかもしれない。




 子供達を寝かし付けた後は、購入した本をテーブルで読む。今日は普通の紅茶。暫く禁酒!


「そういえば、チズルの本は買わなかったのか?」

「あー、二人ともこれ以上増やさないって。自力でお片付け出来なくなるからってさ」

「どれか捨てて減らせば良いだろ」


 ――――酷いなオイ。


「今有るものが、今は一番お気に入りなんだって!」

「結構ボロボロだろ? 新しいのに替えるのは?」

「それも駄目なんだって」


 本の内容もだが、誰かにもらったから『大切』っていうのもあるのだ。


「……家具買って、アイツ等のお片付けスペースをもうちょっと増やすのは?」


 今は三段ボックス程度の棚を一人ずつに渡して、それぞれで玩具や本の管理をしている。双方で不可侵条約まで交わしているらしい。

 私が図鑑やロボット、お人形等を大量に持って来たので溢れかえっている。それに加え、お出掛け用のリュック等も増やした。

 家具を増やすのはアリかもしれない。

 そこでふと思い出す。小学校などに入学する時によくお勧めされているベッドと机やクローゼット一体型の家具。あれ、良いんじゃなかろうか。


「バウンティ! 家具を注文したら、どのくらいかかるかな?」

「ん、職人によりけりだが……装飾込みで一年ほどだな」

「……一年!? あー、簡素的なのでも?」

「簡素…………一から三ヵ月?」


 それでも結構かかる。タブレットで検索すると、三分ほどの動画が見付かった。バウンティの隣に移動して一緒に見る。


「ん、良いな! 棚や机を自在に配置出来るのか。洋服や玩具の管理も自分で出来るようになってるんだな……凄い。凄く良いじゃないか」

「私の時にはこんなお洒落なのは無かったなぁ」


 二段ベッドのような形状で、上がベッドになっていて、下は勉強机とサイドボードのような感じの引き出し付き三段のチェスト。二枚扉のクローゼットまで付いている。

 横には階段と梯子も付いており、階段を棚としても使えるように作られていた。


「帰ったらカリメアにも見せて、家具屋に発注しような?」

「いーよ。妙に乗り気だね?」

「ん、あいつら喜びそうだろ?」

「うん。叫んで飛んで、大興奮……ってなりそうだよね」

「ん、そう考えたらワクワクしてきた」


 うむ、可愛い。なので、頭をナデナデする。

 バウンティが気持ち良さそうに目を細めてすり寄って来た。するりと腰に腕が回されてバウンティに密着させられる。


 ――――チュッ。


「ん……バウンティ?」

「俺、カナタをあんまり褒めてなかったな。カナタは褒めてくれたのに。頑張ったな。大変だったよな。偉いぞ、カナタ」


 頭をナデナデされた。何の事だかサッパリだがナデナデは嬉しいので素直に撫でられておく。

 素直に撫でられていたら、徐々に厭らしい撫で方になって来た。背中や脇腹を撫で、腰を撫で、太股を撫でる。放置していたら、内太股に手を差し込まれたのでベシッと叩いて止めた。


「……」

「……」


 ――――スッ。

 ――――ベシッ!


「……」

「……」


 ――――ベシッ!


「まだ触ってない!」

「目付きがアウト!」

「チッ」

「ところでさー、何を褒めてたの?」


 気になる事をつい聞いてしまう。私の悪い癖だ。聞いたら駄目な系だったらしい。バウンティが衝撃的な顔をしていた。

 慰めるがイジイジとしたままだ。


「ほーら、イジイジしてないで、ベッド行こ?」

「ん!」

「……あ、いや、寝るだけだよ?」

「チッ」


 どうやら別の期待もしていたようだ。たまには平和に眠りたい。

 軽やかにバウンティの期待を打ち砕いて眠りに突いた。

 



 カナタが誘った風にしか感じないバウンティ。


次話も明日0時に公開です。

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