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52、本題は解決……。

 



 王城の大サロンにて色んな事情が絡みに絡んだお昼過ぎ。


 ――――グゥゥゥ。


「……」

「…………すまん」


 ――――ダァァン。


 大サロン内にゴーゼルさんのお腹が鳴り響き、カリメアさんの額に青筋が立った。

 カリメアさんが、ワゴンに置いてあったお茶請けの入ったサーブ用のお皿ごとゴーゼルさんの前に叩きつけていた。


「煩いわよ!」

「……スミマセン」


 ――――サクサクサク。


「で! 私は全破棄は許せません! 私財を解凍したら、また資金提供出来るようになるのよ!? バレないように何だって出来るわよ!」

「ヤですっ! 全破棄しないと、私はエズメリーダさんから誕生日にプレゼントとかもらえないんですよ! 友達の定番じゃないですか、誕生日プレゼント!」


 フンフンと鼻息荒く主張した。


「……キャシー様はどうお考えですか!?」

「そうね……。フォード様の言う辺りまでなら私は妥協しても良いとは思います」

「え、無視!?」

「そうですか。サーシャ様はいかがですか?」

「……私は、やはり許せません! 好きな人が出来たから何だと言うのですか? それで過去の行いが消えるのでしょうか?」


 マジで無視か。それよりもサーシャ様だよね。


「サーシャ様……やっぱり無理?」

「無理よ。カナタ、貴女の事は大好きなのだけど。何でも、誰でも許そうとする貴女は……大嫌いです!」

「っ、はい」

「ウォーレン様がこのような体になったのに! 貴方達は無傷だったでしょう? あれから、安全に暮らせているのでしょう?」

「……はい」

「貴女に決める権利はありません! あの時の私の苦痛は誰にも解らないでしょう!?」

「はい。っ……ごめんなさい」

「……サーシャよ、ならば私が一番の被害者であろう? 私が決めても良いのだな?」

「なっ、貴方は……妹に甘過ぎます! 幾度となく騙されて来たでしょう!? 駄目です! 嫌ですわ!」


 サーシャ様には頭が上がらない。色んな事が申し訳無さすぎて、言葉に詰まる。


「皆様、口を挟む事をお許し下さい!」


 急にダニエレくんが立ち上がった。


「俺……私はこの三年程エズメリーダ様を側で見てきました。先ず、復讐しようと思えばかなり簡単に出来る状況でした!」


 ――――マジか。


「私財を凍結されてはいますが、室内に宝石類が大量にありますし、食事の際のカラトリー類。純銀製ですよね? かなりの高値で売れます。資金なんて簡単に用意出来ます! 彼女もそれには気付いていました。確かに初めの頃は何度か迷ったようですが、それでも思い留まりました。目の前に誘惑がありながらも五年ただ部屋と庭の往復のみで、ずっと耐えていました!」


 皆が静まり返ってダニエレくんの話を聞いてくれている。


「どんなに嘲笑の声が聞こえてこようと、笑顔で全てを受け入れていました。カナタからの手紙を幸せそうに読んで、歪な形のクッキーを誰に毒味もさせず美味しそうに食べ、私やメイドに分けてくれていました」


 ――――歪で悪かったな。半分くらいは子供達と作ったやつだし!


「確かに私は、以前の我が儘王女の頃を知りません。ですが、着任から今日までほぼ毎日のようにエズメリーダ様に接して来て思うのです。彼女は絶対に以前のような馬鹿な行動は取らないと。私は自分の命を賭けてもいい。何かあったら一緒に死刑にだってなる覚悟です。だから、お願いします、どうかもう自由にしてあげて下さい!」


 サロン内がいやに静かだ。嗚咽する音だけが響いている。


「……ふ…………っ、うっ」

「グスッ…………カナタ?」

「おい、何でお前まで泣いてる」

「……駄目。駄目だよ。そーいうのに命は賭けちゃ駄目。何がなんでも生き抜いて、みっともなくても、あがいて、生きなきゃ駄目なの。二人が生きてく道を…………探さなきゃ駄目なの……」


 生きててこそなんだから。


「あー。すまん。トラウマのスイッチが入った」

「あー……まだ気にしてるの? 控え室に行く?」


 頭をブルブルと振る。


「……もしや、事前交渉の時のか!?」


 ウォーレン様が思い出したらしい。私の黒歴史の中でも一番最低なヤツ。


「そうだな。あの時くらいの覚悟は感じるな」

「何の話ですの?」


 サーシャ様達が不思議そうな顔をしている。そう言えばウォーレン様を脅したのは言ったけど、アレは言ってなかった。

 黒歴史を鮮明に思い出してしまい凹んでいると、カリメアさんが、全部説明してしまった。だから、曝すのは辞めて欲しいんですけどね。


「まぁ……」

「うむ。死んででも王族を崩壊させると。正直、カナタが恐ろしかった……」


 ほんと、何て馬鹿な子なんだ! キャシー様には絶句され、ウォーレン様には畏怖されるし! 闇に葬り去って欲しい。


「なぜ、そこまで怒っていたのに許そうとするのです!」


 だって、誰だって間違う。私、いっぱい間違えて来た。馬鹿な行動でバウンティを絶望の淵に追い込んだりもした。私、何度だってチャンスをもらって来た。なのにエズメリーダさんにはチャンスをあげないなんて嫌だ。


「サーシャ様、エズメリーダさんにチャンスを下さい…………」

「サーシャ、私からも頼む。あの頃は、身重だった其の方に大変辛い思いをさせた。私等の態度に憤ったであろう。本当にすまなかった。あれから五年経った。これを機にもう一度だけチャンスを与えてはくれぬか? どうか、もう一度だけ、頼む」


 王様がサーシャ様に向かって深々と頭を下げた。


「カナタっ……陛下、頭をお上げください! …………そのように頭を下げられては、受け入れるしかないではありませんか……」


 サーシャ様が少し思案するように沈黙した後、姿勢を正してエズメリーダさんを見た。


「エズメリーダ様、私は貴女を許せそうにはありません。……ですが、陛下、バウンティ様、カナタ、何よりもウォーレン様が貴女にチャンスを与えると、許して進みたいと言われるので、その心に私も添おうと決めました。決して裏切らないで下さいませ!」

「サーシャ様お義姉様…………はい。ありがとうございます」


 取り敢えずこれで反対派はいなくなった。後は協定をどこまで破棄できるかだ。


「皆、協定の破棄だが、どのように考えているのだろうか? 私は全破棄して欲しいとも思うが、皆の気持ちを考えるとフォードの案が一番現実的であろうと感じておる」


 王様の言うように、それが一番の妥協点なのだろう。全部無くして新しい生活のスタートを向かえて欲しかった。

 結局、フォード様の提案していた一部変更の協定案でいいと全員が賛成した為、宰相さんが明日までに『新・協定書』を作ってくれる事になった。




 協定の方が片付いたので次はエズメリーダさんとダニエレくんの事についてだが、私達は関係無いし退室しようとしたのだが、なぜか王様に止められた。


「カナタよ、其の方はエズメリーダが市井の中で暮らせると思うか?」

「…………厳しい、とは思います。護衛を無くして大丈夫なのかとか。ですが、協力は惜しみません」

「ふむ。……ダミアンは二人の婚姻についてはどう考えておる」

「陛下の御心のままに。私共は従います」

「ふーっ…………ダニエレ、エズメリーダ」

「「はい」」


 王様が深々と溜め息を吐いて二人を呼んだ。ドキドキの瞬間だ。


「二人の婚姻を認め、エズメリーダは降嫁とする。婚姻以降はフィランツの性を名乗る事を禁ずる。ダニエレは騎士団は辞職扱いにし、退職金は出す。居住が決まりしだい王城を出ていくように。凍結している私財については後日検討する」

「お父様……ありがとう、ございます……っ」

「陛下、エズメリーダ様を必ず幸せにします!」


 王様が力無く「頼むぞ」と答えていた。ベッコリ凹んでいる気がする。


「ヴァレリー準男爵家においては特別措置として『騎士団に成年者を必ず在籍させる』という約定の一時保留を認め、継続して準男爵位を名乗る事を許可する」

「お心遣い感謝いたします」


 そんな取り決めがあったのか。弟くん達はまだ未成年だからダニエレくんが中継ぎとして在籍していると。爵位や取り決めってめんどくさい。


「ダニエレの家名だが、エズメリーダの事は抜きに考えて良い。勘当するも、分家にするも、ヴァレリー家で決めるように」

「畏まりました」

「ハァ……今日はこれにて終了とする。ゴーゼル達は明日また登城してくれ。協定書へのサインを頼む。カナタには医学書の説明を医師達の前で頼む事になると思うので、用意しておいてくれぬか?」

「畏まりました」

「わかりましたー。王様は取り敢えず、今日から食事改善ですよ?」

「うむ、わかった」


 王様がゆるりと立ち上がり「少し休む」と爺やさんに小声で言ってサロンから出ていった。


「さて、子供達を迎えに行きましょうかねぇ」

「カナタっ…………ありがとう」


 急にエズメリーダさんが抱き着いて来た。ドレスでコルセットをしていない分、胸が…………凶器だった。


「あの……アステルちゃんとイオくん、来てるの?」

「うん! あ、会ってくれます?」

「…………あの、宜しいのでしょうか?」


 エズメリーダさんがバウンティと目を合わせないように俯いたままで聞いていた。


「ハァ。エダ、口頭だが協定の内容は既に変更した。名前を呼んでいい。子供にも会っていい。もうカナタの友達なんだろ?」

「っ……はい、ありがとう存じます」


 エズメリーダさんが、それはもう嬉しそうな、蕩けるような笑顔をしていた。


「おや、まだまだ好きなのかな?」


 小サロンに移動しながらエズメリーダさんを弄る。


「もう! カナタは意地が悪いわ! ……憧れは…………なかなか消せませんわ」

「わかるー! 何歳になっても憧れた人は格好良く見えるんだよねー。私、二十年経っても好きだもん!」

「あの歌手ね。解らなくは無いわね。歌は言葉を失うほど素敵だし、ステージ外では妙に抜けてて可愛らしさがあるわよねぇ」


 家でずっとライブ映像のディスクを流していた。まさかカリメアさんの洗脳に成功していたとは! カンさんに報告しなければ。

 因みに、バウンティも鼻歌が漏れ出るようにはなっている。布教活動にもっと力を入れようかな。

 



「お待たせー。仲良くしてたー?」

「カナタ、カナタ、あのお人形ですが……どこに売ってありますの?」


 キラキラのキーラ様がアステルの人形を指差しながら走って来た。


「キーラ、お行儀が悪いですよ。いつ何時でも淑やかにしなさい。そして、人の物を欲しがらないのよ」

「はい、お母様……」

「……ですが、私も気になっておりました。少し、お時間いただいても宜しいかしら?」

「では、そちらは私がお伺いいたしましょう。イオの持っている『ロボット』という玩具も併せてご説明致しますわ」


 カリメアさんが、また何かやるつもりらしい。お任せしよう。釣られたフォード様、キャシー様、ウォーレン様、サーシャ様はテーブルで話し合い。

 私はエズメリーダさんを子供達に紹介。


「アステル、イオ、この人はねー、エズメリーダさん。私がお手紙を送ってた人だよ。二人がお手伝いしてくれたクッキーも食べてくれてたんだよ」

「おてがみのひとー! こんにちは!」

「こんにちは、イオくんね。まぁ、本当に瞳が黒いのね」

「うん! ぼくクロ!」

「アステルね、パパといっしょなの!」


 アステルが目蓋の上下を指で押し開いていたが、何故か白目になっていた。怖いよ。


「ぶふぉっ…………ぶふふっ」

「パパなんでわらうのー!」

「ん、すまんすまん」


 エズメリーダさんもプルプルしている。


「……カナタにそっくりなのね」

「ん。ちょっと心配だ」


 どういう意味だ。取り敢えずバウンティのおへそは二連撃の刑だ。

 皆でキャッキャしたり、キーラ様を筆頭にエズメリーダさんと和解したなどの説明をしていたら、ヴァレリー夫妻が暗い顔でそっと近付いて来た。

  出来るなら逃げたかった。知らない振りしてさくっとお別れしたかった。イオには申し訳無い結果になりそうだけど。

 今日はいっぱい気力を使ったのになぁ。


 ――――もう一踏ん張りして頑張ろ。




 本題は解決したが、問題はまだまだ山積み。


次話も明日0時に公開です。

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