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50、ただいま混雑中。

 



 ニヤニヤとエズメリーダさんの部屋を出て、スキップでサロンへ向かう。途中でウォーレン様に見付かった。


「カナタ、もう終わったのか!? 何の話だったのだ?」

「えー、内緒に決まってるじゃないですか!」

「む、それもそうか……。なぁ、少し話し合いの場を持たせてやりたい部下がいるのだが、どうだろうか?」


 話し合いの場を持たせてやりたい、部下。部下?


「ダニエレくん?」

「んなっ、なぜそれを! あいつ、先走ったか!」

「いやぁ、若いって良いですよねぇー。それより、敵はバウンティとカリメアさんですよ?」


 そう、あの二人が一番の障害だ。マジで勝てる気がしない。子供を盾にしたいくらい勝てる気がしない。サロンに戻りはするが、何の計画も無い!


「カナタ……もしや、協定を全破棄するなど……」


 ウォーレン様にしては察しが良いな、と思ったら笑みが零れていた。反対にウォーレン様は顔面蒼白だけど、知らない。


「カナタ、何か計画はあるのか?」

「無いです!」

「そのようにハッキリと…………陛下の病気の説明や医師との話し合い後、たぶんまた後日に謝礼などの話になると思う。それまで内密に頼めるか?」

「良いですけど、何でですか?」

「妹達の事は陛下さえも知らぬのだ。我が部下らで話が広がるのを食い止めている。こちらは陛下の病状が悪化したりするのが不安だ。それに、あの二人はプロポーズなどはまだしておらぬ。時間を与えたい。そして、カナタは説得の材料や計画を立てる時間を確保したいであろう?」

「確かに! ってか、まだそこまで進んで無かったんだ?」


 ウォーレン様とガッシリ手を組んで『安心安全協定』を締結した。




「たっだいまー」

「「おかえりー」」


 子供達は顔をこちらには向けずに皆とオモチャで遊んでいる。寂しいが、まぁ仕方ない。


「あら、えらく早かったわね。何の話しだったの?」

「王様の体調が心配で、私が何か解らないか、って事が概ねの内容でした。王様を安心させてあげたかったんだってー」


 バウンティが無言でじっとり見てくるが無視。


「あら、丁度よかったのね。主治医はさっき来たわよ。スマホは仕方ないから見せてあげなさい。臓器の説明で必要でしょ?」

「おぉ、ありがとうございます。それならタブレットでも良いですか?」

「はぁ、ハイハイ」


 ホーネストさんを呼び出して荷物から取ってきてもらう。


「…………カナタ、ソワソワしてるのは何でだ?」

「してませんよ?」


 バウンティがズイズイと近寄って来て壁際まで追いたてられてしまった。野生の勘が怖い。


 ――――ギュムッ。


 ホーネストさんがバウンティの頭の上に出てきて、脳天から踏み付けてくれた。


「バウンティ邪魔」

「ん」


 ――――ナイスアシスト! 流石、ホーネストさん。


 ホーネストさんからタブレットを受け取って主治医さんと話そうとしたら、大人は全員参加してきた。タブレットの説明をして、技術的な話しは知らぬ存ぜぬで貫き通した。


「――――このように、色々な成分がくっ付いて胆石になります。王様の石もこんな感じ?」

「あぁ、とても良く似ておる。症状や苦しみもそっくりであるな」

「カナタ様、手術の方法は分かられますか?」

「フィランツの医学では無理な気がします」


 カテーテルとか、衝撃波とか、そもそも説明出来ないけど。


「医学書はダウンロードすればあるんですけど…………」

「ダウンロード? けど?」

「私しか読めないし、私が読んでも理解出来ないのに説明とか無理くないですか?」

「……読み上げるだけでも」


 何年かかるのその作業。


「取りあえずで、陛下のご病気の所だけでも!」

「そーですよねぇ。因みに、転移者で医療従事者とかいたり……?」

「聞いた事は無いな。最近だと絵本作家はいたが」

「あー、『いで』さんかぁ。残念」


 楽できないかとか思ったけど、そんなに都合の良い事は無いか。


「知っておるのか?」

「いえ、名前聞いただけですよ。機会があったらお会いしたいなー、くらいです」

「出版社から呼び出そうか?」

「いえ、大丈夫で――――」


 ――――コンコンコン。


「カナタ様に急用です」

「はい?」


 急用ってなんだ? とか、のほほんと思いつつ、入口に向かっていた。


 ――――バァァン。


「カナタ様、先程は大変失礼いたしました! 協定の全破棄ありがとうございます!」

「ギィャァァァァァァァ…………」


 聞かれたよね? めっちゃデカい声だったもんね? 取り敢えず叫んで打ち消そうとしたけど。てか、後ろにいる二人が怖くて見れないんだけど、誰か助けてくれたりとか……しないかな?


「カーナーター? その者は何の話をしているのかしらぁ? いやねぇ、私ったら、年かしら? 年なのよね? そうよね? 協定の全破棄だなんて、何を聞き間違えてるのかしらね? うふふふ。それに目も悪くなったのかしら? 年なのよね? ウォーレン様が思いっきり頭を抱えているように見えるなんて、ねーえぇー?」


 ――――怖っ。超怖い!


 ソロリと振り返ったが、振り返った事を後悔した。何でみんな目を反らすの? 酷くない? あと、バウンティは嫁に向ける目付きじゃないし。魔王になっちゃってるし。


 ――――私、泣いちゃうよ?


「ちょっとそこのガキ! こっちに来なさい!」


 ――――ガキって。どこのヤカラですか。


「ダニエレ、お前の事だ……」

「…………えっ? えっ、俺ですか?」


 ウォーレン様が頼むから何も話すなと言いたそうな顔をしてるけど無理じゃないかなぁ。ダニエレくん、部屋のメンバーに今更気付いたらしく、テンパった顔してるもの! そして慌ててちょっともっさりしてる短髪を手で押さえ付けて、前髪だけでもキッチリ見せたいのか七三にしてるもの! てか、何で七三なんだ! 笑いそうになったし。何か可愛いじゃないか!




 ダニエレくんがそれはもう清々しいほどに、洗いざらい話してくれた。

 私とウォーレン様はカリメアさんの足元に正座中だ。


「この際、若気の至りは放置でいいわよ。問題は貴方達二人よ! 何を考えているの! 何の為の協定ですか!? 協定書には何人のサインが書かれていますか!?」

「「はい」」

「ウォーレン様! 王族のサインの重さは重々承知のはずですよね? こんな小娘のてろっとした一言で覆せるものですか?」

「いや……出来ぬとは思っ――――」

「カナタ! この協定は貴女を守る為の物ですが、それだけじゃ無かったはずよね? 何の為だったか覚えて無いのかしら?」

「子供達の為が一番の理由でした……」

「そうよね!?」

「ふぁい……」

「エズメリーダを呼びなさいっ!」


 ゴーゼルさんをチラリと見たが、顔面蒼白で顔を左右に振られた。


 ――――あ、駄目っぽい。


「お待ち下さい! 私がエズメリーダ様をけしかけたのです。撤廃などは彼女は望んではいませんでした。何か処罰があるのであれば私にお願い致します!」


 ここに口を挟むとは勇気がある。ゴーゼルさんでさえ無言を貫き通してるのに。王様はお腹痛いのか、両手でお腹を擦ってるだけだし。


「……貴方、名前は?」

「ダニエレ・ヴァレリーです」

「ヴァレリー? ヴァレリーですって? まさか……」

「いやいや、偶然でしょ? お子さんは十歳で双子の男の子って……」


 確か、そう言ってた。


「はい? 弟が双子で十歳ですが、何か関係が?」

「貴方、父親はダミアンかしら?」

「え……は、い……」


 ただ単に、後を継ぐのが双子の男の子って話してただけの気もするけど、更に上にお兄さんがいるのは聞いてない。まぁ、根掘り葉掘り聞いたわけでも、教えなきゃいけない訳でもないけど。しかし、結構歳離れてるんだなぁ。


「エズメリーダとの事はダミアンは知っているの?」

「エズメリーダ様の護衛になったとは話していますが……」

「……ハァ」

「陛下、取り敢えず、それぞれがそれぞれの事情で入り組んでおります。一度全員で会して話し合いとうございますが、いかがでしょうか?」

「……そうであるな。ヴァレリー夫妻をすぐに呼び出せ。大サロンにて話し合う」

「あー、ミレーヌちゃんも連れて来てあげて下さい。一人で留守番は可哀想なんで」


 大人は大サロンへ、子供達は小サロンで遊ばせる事になった。




 私とウォーレン様は大サロンで更に説教を受けたのだが、まさかの犯人席。

 

 ――――しかも床!


「あのー」

「何よ!?」

「流石にウォーレン様を犯人席は……。ヴァレリー夫妻も来ますし……」

「よい」


 ――――あっらー。王様も不機嫌じゃん!


 ウォーレン様にごめんねーと話していたらフォード様が現れた。私達を見て物凄くビク付いていたが、早い段階で目を反らされた。酷い。


「今朝は同席せずにすまなかったな」

「いえ、カナタへのお気遣いだったのでしょう? こちらこそ呼び立てて申し訳ございません。二人共!」

「すみません、ご迷惑おかけします」

「兄上、内密にして申し訳――――」


 フォード様がすっと右手を上げて、ウォーレン様の謝罪を止めた。


「いや、私は知っておった。流石にそこまで話が進んでいるとは思わなかったが、エダに心を許せる相手が出来たようだとは聞いていた。遅かれ早かれこうなる事は予想しておくべきだったな」


 ――――コンコンコン。


「ヴァレリー準男爵夫妻がご到着されました。お子様を小サロンに預けられたら、こちらに来られます」

「うむ、ではエズメリーダを連れて参れ」

「畏まりました」


 どんどんと物事が進んで行く。


 ――――コンコンコン。


「ヴァレリー準男爵夫妻のご入室です」

「お初にお目にかかります――――」


 夫妻の挨拶を犯人席で見守る。挨拶が終わると、王様が今日の事件を話していた。

 

「この度呼び出したのは――――」

「っ……我が愚息が立場も弁えずそのような……大変申し訳ございません」


 ――――コンコンコン。


「エズメリーダ様のご入室です」

「失礼いたします。エズメリーダでございます」


 エズメリーダさんがサロンに入った一瞬で状況を悟ったのだろう。私達のいる犯人席に来て、ふわりと優雅に座った。それを見たダニエレくんも慌ててエズメリーダさんの横に来た。


「あら、素直なこと」


 カリメアさんの視線が未だに厳しい。

 関係者は全員揃った。ここからが本番なのだが。


 ――――やっばい。何も思い付いて無い!




 人生初の犯人席。

黙ったままのバウンティが非常に怖くて、未だに直視していないカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

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