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43、船旅も四日間になりまして。

 



 子供達がお昼寝している間にバウンティと話す。


「あーぁ、もう、四日も経ったんだねぇ。何か前と違って時間が経つのが早いなぁ」

「ん、前はずっと……部屋にいたもんな……」


 何かシュンとしてしまった。スルーでいいかな?


「あ、そーいえばさー、王都に着いたら先ずはシュトラウト邸に向かうでしょ?」

「ん」


 次の日に王城に行くとして、先にウォーレン様に面会のお伺いを立てた方が良いのか、エズメリーダさんとの面会の許可を王様に求めた方が良いのか。

 

「どっちかなぁ?」

「……セルジオ、師匠とカリメアは部屋にいるか?」

「はい、ご在室のご予定です」

「呼んできてくれ」

「畏まりました」


 セルジオさんが一礼して出て行った。

 直ぐにゴーゼルさんとカリメアさんが来てくれた。


「呼び付けてすみません」

「良いのよ。あの子達が寝てるんでしょ」


 先程の話をもう一度する。


「そうね、先ずは陛下へ連絡でしょうね。ウォーレン様も側に控えているでしょうから、ついでに書いておけば大丈夫でしょう」


 ――――そんな扱いでいいんだ。


 それならと、今書く……と言うか、書いてもらう事になった。


「そう言えば、王様ってまだ王様やってるんですか?」

「えぇ、やってるわね」

「五年前の時には王位を譲るとかって言ってませんでしたっけ?」

「あぁ、あれね。各方面から反対にあってね、もう暫く続ける事にしたそうよ」

「各方面?」

「評議会と閣僚達、それから国民達からも嘆願書が届いたのよ。あとは……孫とかね」


 ――――評議会って……。


 ヘラちゃんを受け入れる時に通さないと駄目だと言われた所だ。貴族の中の有識者達が自薦他薦で五十名程いるらしい。

 因みにゴーゼルさんとカリメアさんも評議会員だったとヘラちゃんの亡命受け入れ時に知った。

 

「――――って、孫!?」

「うむ、孫のお願いは断れんのぉ。娘以上に断れん……だから、ワシ、悪くない」

「貴方が悪いわよ! さっさと謝りなさいよ。駄目って言われてるんでしょうが!」

「えっと、何の話ですか?」


 ゴーゼルさんがテーブルを人差し指でイジイジとほじくりながら何かをぶちぶちと言っている。


「…………カナタからもらったゲームの機械で……今度遊ばせてやるって……」


 この前、子供達が部屋に行った時に遊んでいる所を見付かってしまった。そして、取り敢えず『駄目』とは言ったものの、私にお願いしてあげると約束したと……。


「駄目です!」

「そぉー言わずにのぉ、ちょっとだけ、な?」

「駄目でっす!」

「お父さんのお願い聞いてくれんかのぉ?」

「駄目どぅえっす!」

「このままじゃ、ワシ、嫌われちゃうぞ? 泣いちゃうぞ?」

「その程度で嫌われるほどの薄っぺらい愛じゃないでしょ? おや? もしや……薄っぺらいのかな?」

「ふぐぅっ……」


 ――――パンパンパン。


「ゴーゼル、貴方の負けよ」

「うぬぅ。仕方無い、誤魔化すか」


 ――――駄目なじぃじがいる。


 ゴーゼルさんは放置して、ホーネストさんに王城に書類を届けてもらった。私の希望としては先にエズメリーダさんに会いたいので、それも書いてもらった。




「あ、夜はマジックショー見に行くらしいんだけど、バウンティはどうする?」

「行く」

「お二人はどうします?」

「行くぞ! あーゆーのなぁ、タネを明かしてやりたいんじゃよ!」

「この人が騒がないように横にいるわ」

「……ご苦労様です」


 以前、マジックショーにバウンティと二人で行かせたら、観客、マジシャン、主催者、市長から苦情が来たそうだ。


「先ず『取り敢えず煩い』、そして『タネは解ったぞ! と叫ぶな』、『ステージに勝手に登るな』、『今のもう一回やれ、何か解りそう。とかのヤジを飛ばすな』、市長にいたっては『見て良い。だけど、頼むから猿ぐつわさせてくれ』とか言われたのよ! ほんといい加減にして欲しいわ!」

「わー。それ、ドン引く」

「ん、師匠煩かった。そういや、俺は途中で返ったなー。イーナに『私を見捨てないで下さい!』って必死に引き留められたけど」

「わぁ、見捨てたんだ…………。つか、イーナさんにそこまで言われるって主人として大丈夫ですか?」


 全員からのディスりにゴーゼルさんが机に突っ伏して撃沈していた。


「えーじゃんか。何か解りそうだったんじゃもん……」


 良くは無い。取り敢えず、今回もそれと同じ行動をしたら子供達が確実に引くと伝えておいた。イーナさんが引くんだから相当な事だったんだろう。




 テーブルでダラダラとお喋りをしていたら子供達が起きて来た。


「グランパとグランマだぁ。なにしてるの?」

「そうそう、夕食はレストランに一緒に行きましょ?」

「「いくー!」」


 二人ともキャッキャと喜びながらゴーゼルさんの膝によじ登っていが、アステルが心配そうにこちらを振り向いた。


「パパは? まだぐろっきー?」

「ん、薬が効いたから大丈夫だ。一緒に行くぞ」

「ん!」


 ――――うん。幸せそうで何よりだね。

 

「そうそう、ご飯を食べたら……マジックショーを見に行きます。行きたい人ー?」

「「はーい! はい! はい!」」

「はいっ!」


 可愛いくて甲高い返事と、野太い返事が聞こえた。既にテンションマックスらしいが、ゴーゼルさんには聞いてない。

 アステルはフィリップくんを、イオはミレーヌちゃんをまたもや精霊さんでデートに誘っていた。今回は既に親同士で約束はしていたが、それでも誘いたいとの事だった。


「うん、中々の男前だね! アステルも。格好良いね!」


 肉食系な感じが凄いが、こちらの世界の女子は淑女半分、肉食系半分なので、まぁ、大丈夫だろう。それにフィリップくんも割りと肉食系気味だ。アステルのグイグイを気にせず受け入れている。更にはそっと腕を出してエスコートしてくれていた。

 イオは後ろから小声で『腕!』っと言ってあげないと、一人でトテトテと歩いて行こうとしてしまう。

 フィリップくんは、先月六歳になったそうだ。子供の一、二年は大きいなと実感した。


「さ、そろそろレストランに向かいましょうかね」

「はーい!」

「セルジオー、ごはんなに?」

「ふふふ、今日の夕食は秘密でございます」

「えー、なんでひみつ?」

「セルジオいじわる、めっ! だよ?」

「イオ様、秘密は意地悪では無く、ワクワクなんですよ?」

「ワクワク? ビックリ?」

「さぁ、どうでしょうね? ふふふっ」

「むぅー、やっぱり、いじわる!」


 カリメアさんもクスクスと笑っている。どうやら今日の夕食のメニューを知っているらしい。なんだか私も気になってきた。


 ――――何が出るんだろ?




 船旅が楽しくて予定を決め忘れていたカナタさん。


次話も明日0時に公開です。

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