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38、お部屋で楽しく。

 



 ヴァレリー夫妻とモナハン夫妻と私達の六人でおしゃべりしつつ子供達の様子を見る。

 子供達は四人で図鑑を見ていた。


「これがね、サメだよ」

「まぁ、このような『は』がついているのですね」

「うん。二、三にちで、あたらしいのに、はえかわるんだって!」

「そんなにはやくですの!? すごいですわー」


 イオが自慢気にミレーヌちゃんに豆知識を教えている。


「ねー、これ、どこのくにのもじなの?」

「ママのくにだよ。いきもののなまえだけ、パパがフィランツごで、かいてくれたの」

「へぇー」


 うん。バウンティが頑張った。しかし、私には二重で名前が書いてあるようにしか見えない! かなりシュールな図鑑だ。


「あの図鑑は凄く綺麗ですわね」

「あぁ、海の生き物の写真をどうやってあんなにも美しく印刷出来るのか……。他にもあるのでしょうか?」

「あー、地上の生き物の方なら見れますよ」


 四人共、海の生き物の方に夢中だし。


「まぁ、このように鮮明な写真は初めて見ましたわ!」

「それよりも、動物の研究をここまでやっている国があるとは……いったいどちらの国でしょうか!?」

「ん、それは極秘だ。カリメアから、この部屋でのみ閲覧の許可が出た。内密で頼む。子供達は、まぁ大丈夫だろう」

「「畏まりました」」

「うふふ。秘密ってなんだかドキドキしますわね」


 謎の脅しをかけるバウンティと、以外と肝が太いミラさん。

 動物図鑑の方を眺めながら先日の熊の話をする。ふと、気になった。


「ねー、ここにいる熊はどの種類?」

「このグリズリーってやつが似てるかな。毛色はちょっと違うが」

「この、白黒の熊は面白い柄ですね」

「パンダ、可愛いですよね」

「え、熊ですわよね? 恐ろしくないのですか?」


 まさかのパンダはいないそうだ。

 肉食ではあるが、草食のみで生きられると書いてある説明を読み上げる。


「へぇ、不思議ですわね」

「コロンコロンして可愛いんですよー。動きが緩慢なのはエネルギーを使わないように、らしいです」


 そこから契約している精霊の話になった。


「そう言えば、バウンティ様の精霊はライオンなんですね、息子がとても喜んでいました」

「ぶふっ……あはは、良かった!」

「カナタ!」


 私は爆笑し、バウンティは怒鳴るので皆がきょとんとしている。


「それがですねー、今から嫉妬しまくりで、フィリップくんに脅しをかけようとしてたんですよ!」

「「えっ……」」

「産まれる前から嫁に行くのが嫌だって言ってたんです! アステルが人生初のデートのお誘いをするって言い出したもんだから……うはははは!」


 ミラさんとマイヤさんは、クスクスと笑っていたが、ダミアンさんとブルーノさんは神妙な面持ちだ。


「あ、やっぱり娘が嫁に行くのは辛い?」

「正直ですね、ミレーヌがイオくんを好きだと言い出してですね、凄くソワソワしております」

「あははは! ダミアンさんも可愛いですねぇ! うはははは」


 『好き』の所を物凄く小声で言われた。そんなに嫌なのか。そして、ミラさんは溜め息を吐いて愚痴り出した。


「もう、昨日からソワソワソワソワと大変だったんですよ! バウンティ様達に気に入られて、嫁入りさせろと言われないか? とか、イオくんが結婚を見据えて付き合いたいと言わないか? とか!」

「あははは! 気が早い!」

「……カナタ様、それがそうでも無いのですよ」

「へ?」


 ブルーノさんがしんみりした顔で話し始めた。


「フィリップの上に十三歳の姉、つまり娘がいるんですが、五歳の頃には許嫁が決まりまして……去年お嫁に行ってしまったんですよ! 手元を離れるのは早すぎると相談――――」

「駄々捏ねましたわね」

「……まぁ、そうだな。しかも、娘にウザいと怒られました」


 ――――うわぁぁ。撃沈だぁ。


「ファ……ファイト!」

「女性はそういう所、結構ドライですよね」


 ブルーノさんが恨めしそうにチラッとマイヤさんを見ていた。


「ん、カナタもドライだ。アステルの妊娠が判った時、『細胞分裂して人間になっていく』とか変な方向から分析してた」

「いや、喜んでたからね!?」

「流石に、それはちょっと特殊な喜び方ですわね……」

「だよな!」


 同意が得られてバウンティが嬉しそうだ。良かったねと頭を撫でたら手を投げ捨てられた。私の技なのに!


「ママー、おなかへった!」

「んー? あ、もう、十二時過ぎてたんだ。皆さんお食事はレストランでされますか? 部屋でされますか?」

「私共はいつもレストランです」

「私共もです」

「なら、皆で……席用意出来るかな? セルジオさん?」

「畏まりました」


 部屋の隅に控えていたセルジオさんに声を掛けると、礼をして部屋を出ていったが、直ぐに戻って来た。


「三十分ほどお時間を頂ければご用意出来るそうです」

「んじゃ、準備して出たら丁度に着くくらいかな?」

「ん」

「え、私共もですか?」

「あっ! 同席で良いか確認してませんでしたね、大丈夫です?」

「カナタ、今さら聞いても断り辛いだろ」

「確かにっ!」


 クスクスと笑われながらも同席で良いと言われた。




 大人と子供合わせて十人でお昼を取る事になった。

 子供達は子供だけで固まりたいとの事だったので興奮し過ぎないようにと注意して許可した。


「むぁっ、今日は海老が多いですね」


 しまった。部屋食にしておけば、バウンティの海老を奪えた気がする。バウンティがニヤニヤしているので、私の思惑に気付いたのだろう。今回は我慢しよう。

 食事も楽しく歓談し、デザートを食べる。チョコレートタルトだった。普通に美味しかったが、アステルとイオは少し不服そうだった。

 部屋に戻り、ダイニングでまたのんびり、モナハン夫妻は十四時よりオペラ座で観劇してくるそうだ。

 子供達にどこかに出掛けるか聞いたが、室内で遊ぶとの事だった。今はお人形とロボットで遊んでいる。


「ママー、のどかわいた。ノンアルのみたい! ……あとね、リズママのケーキもたべたい!」

「さっきタルト食べたじゃん?」

「うん……あのね、なんかね、びみょうだった」


 微妙……普通だった。が、リズさんのを食べ慣れるとそう感じるのかもしれない。


「んー。飲み物は私が作ってあげるから、運んでもらうのはケーキだけにしようか?」

「うん!」


 と言う事で、ホーネストさんにリズさんのお店に飛んでもらう事にした。ゴーゼルさん達にも聞いたら食べるとの事だったので、急遽こちらの部屋に来る事になった。

 リビングからバウンティが机と椅子を運んで設置してくれた。


「ご苦労!」

「「ごくろー!」」

「ん」


 バウンティのフットワークの軽さに皆が引いていたが、いつもの事なのでスルーだ。


「アステルね、モンブラン」

「はーい」

「ぼく…………うんと……タタン」

「俺、焼きプリンな」


 ゴーゼルさんはチョコ餅と言い出したので私も食べたくなった。チョコ餅を頼もう。


「私は……ザッハトルテにしましょう。時々食べたくなるのよねぇ」


 ヴァレリー夫妻とモナハン夫妻、ミレーヌちゃんとフィリップくんにはメニューを説明する。それぞれが決まったのでホーネストさんにお願いした。


「二往復になりそうだね、お願いします!」

「はいはーい」


 一回目の配達で伝言があった。

 チョコ餅はあるが、通常サイズは売れてしまって一口サイズ二十個入りの贈答用しか無いそうだ。ならばと、皆で分ける事にして、私はミラージュのバラ柄、ゴーゼルさんはタルトタタンを頼んだ。


「ただいまー。ふぅ。あ、リズさんからカナタに伝言だよ『ミラージュはカナタなのよね? リニューアルしたわよ。あと、タルトタタンは大きめのにしてますよ』だって」

「むおーっ、流石リズじゃの!」


 ゴーゼルさんは大喜びだ。


「では、いただきましょうか」


 飲み物はバタバタとハチミツとレモンとミントティーを混ぜた。


「「いただきまーす」」


 先ずはチョコ餅から。生チョコと餅のコラボレーション、最高です!


「ん! この、包んでいるものは何ですか? 物凄く柔らかくて伸びる触感ですわ」

「グルテナスライスって分かられますか?」

「ええ」

「原材料はそれです」

「「えぇっ?」」

「炊いて、ついて、お餅と言う食べものを作って、それに色々と混ぜて作るんですよ」


 口内のリセットにハチミツレモンティーを飲みつつ話す。


「え、それは教えても大丈夫なんですか?」

「いいわよぉ、レシピ無料公開してるもの」


 私が出したレシピは全て無料公開で、聞かれれば誰にでも、他国にでも教えている。と言ってもリズさんが、だが。

 何故か謝礼が届くのでリズさんが私に持って来てくれていた。果物類のみ喜んで貰っていたら、どこかで噂が広がったのか、レシピを教えると大量の果物が届くようになった。流石に箱は消費しきれないので最近は全部お断りして、リズさんの所とノンアルの人で分けてもらっている。


「まぁ、では私共のシェフが連絡したとしても教えて頂けるんですの?」

「はい、基本の分量と作り方のみですが。そこからのアレンジは力量?」


 そう言いつつミラージュのバラを愛でる。


「んー、やっぱ綺麗! ゴーゼルさんのおかげです!」

「むほほ。じゃろう? ワシ、中々の仕事をしたよな?」

「え、ゴーゼル様が何か貢献されたのですか?」

「これ、デザインしたのゴーゼルさんなんですよー」


 全員が驚きケーキを見詰めた。気持ちは解る。こんな厳ついおじさんが何をファンシーな柄作ってるんだと、びっくりするもの。

 ケタケタ笑いつつ、ミラージュを一口食べる。

 ふわりとバラの香りが鼻から抜けた。


「へ?」

「どうした?」


 バウンティにあーんでミラージュを食べさせる。


「ん! バラの香りがするな」

「ね!」


 カリメアさんも味見をしたがったのでお皿を渡すと「あの子はいつまでも研鑽するわね。脱帽だわ」と唸っていた。


「あら、もうこんな時間ですのね」

「申し訳ありません、一度退席させて頂きます。フィリップ、ご迷惑をお掛けしないように」

「はい!」


 モナハン夫妻はオペラ座での観劇に向かった。

 子供達はおやつを堪能してネムネムしているので仲良くお昼寝をさせる事にした。

 大人はのんびりお喋りして起きるのを待とう。




 甘いは正義!


次話も明日0時に公開です。

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