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37、ダブルデート?

 



 イオが人生初のデートのお誘いをする。ホーネストさんに来てもらい、イオにバトンタッチ。横でワクワクと見ていた。


「ママ、あっちいって! みちゃだめっ!」

「えー。じゃあ、目を瞑っておくよ。それなら良い?」

「だめー! あっちのおへや、いくの!」

「はーい。あ、どこで遊ぶかだけ教えて? ご用意しなきゃでしょ?」

「……ここ。おへやにしょうたいするの。いい?」

「オッケー!」


 ――――パタン。


「ママママママ!」

「はいはい、ママですよ?」

「わたしも、フィリップさそっていい?」

「フィリップって誰だ!?」


 イオにダイニングから追い出されて、三人でリビングで寛ごうとしていたら、アステルもデートしたいと言い出した。

 フィリップくんは昨日サーカスを一緒に見た子らしい。軽く良いよと言い、ホーネストさんが帰って来たら貸そうと話していると、バウンティが真顔でアステルの前に跪いた。


「アステル、ラルフを貸してやるから、ラルフで連絡しろ。な?」

「え? うん?」


 アステルが不思議そうな顔でメッセージを伝える。


「フィリップに『アステルだよ、きょうは、おへやであそばない? 八〇〇三ごうしつにおいでよ?』っていってきて?」

「うむ、承知した」

「ラルフ、出現した瞬間に吠えろ」

「良いが、なぜだ?」

「男児はカッコイイ方が喜ぶだろ」

「ふむ…………承知した」


 アステルはウンウンと頷いて、カッコイイ方が好きだと納得していたが、私は騙されない。バウンティが私と目を合わせないので、確実にやましいのだ。


「パパきらーい」


 裏声でアステルの真似をしてみたら、バウンティが飛び上がるほどビク付いていた。効果絶大で笑えた。


 ――――ベチコン。


「ギャッ! いったぁぁぁい!」

「馬鹿カナタ」


 バウンティにデコピンされてしまった。弄り過ぎたようだ。


 ――――ガチャッ。


「ママー、ミレーヌちゃんね、九じにきてくれるって!」

「おっ、じゃあ、デートの用意しなきゃね」

「おやつもよういしてくれる!?」

「りょーかい!」


 イオの報告と同時にホーネストさんも入って来たので撫でる。イオがどう誘ったか聞き出そうとしたがルール違反だとホーネストさんに怒られた。


「ちぇっ」

「ただいま戻った。アステルに返事だ『ほんと? すぐいくよ!』だそうだ」

「……チッ」


 バウンティのちっちゃな脅しは効果が無かったようだ。

 



 流石に子供だけ訪問させる訳にもいかなかったのだろう、双方の両親がついてきた。


「急遽呼び出すような形になってすみません、もしご用があるようでしたらそちらを優先させて下さい。ミレーヌちゃんとフィリップくんのアレルギーとか注意点とか、言っててもらえればお時間まで責任持ってお預かりしますので」


 ヴァレリー夫妻は特に無いので、一緒にいるそうだ。フィリップくんのご両親はオペラのチケットを予約してしまっていたので、その三時間だけ抜けたい、との事だった。

 フィリップくんは元々、託児所のような所に預ける予定だったそうなので、そのままこの部屋で預かると申し出た。

 フィリップくんが「ぼく、しらないところより、アステルといたい」と言いながら、アステルの手を握ったのだ。

 激萌えなフィリップくんのお願いは叶えてあげたい。




 取り敢えず、皆でリビングに集まる。


「ご挨拶が遅れました、ブルーノ・モナハンと申します。こちらは妻のマイヤ、息子のフィリップです」


 ヴァレリー夫妻と私達も挨拶し、子供達は子供達だけで、床にシートを敷いて本やオモチャで遊び、大人は座ってお茶と焼き菓子やフルーツをつまむ。


「あら? このクッキーは初めて食べましたわ。ザクザクとしててとても面白い食感ですわね。美味しいですわ! ドライフルーツとナッツと……何でしょうか?」

「あー、オートミール……だけだったかなぁ。コーンフレークも入れてたっけなぁ……思い出せない」

「え? カナタ様が……作ったんですか!?」

「あ、生地だけです。さっき家にいるお手伝いの子に焼いてもらって、精霊さんに運んでもらったので、大丈夫! 焼き立てですよ!」


 数日中にすぐ焼こうと思ってグラノーラクッキーの生地を冷凍庫に入れっぱなしで忘れてたけど、きっとこんな時の為のやつだったんだ。……きっと。

 他のチョコ味や一松模様のも届けてもらった。シエナ様々だ。仕事が早い。 

 

「いえ、そこの心配ではなく……」

「マイヤ、カナタは製菓が趣味だ。まぁ……珍しい菓子が出てくるが気にするな。グラノーラはローレンツでは流行ってるんだがな」


 グラノーラクッキーは地味にカッパーの中で流行っている。貴族にも多少広がっているのだが、カリメアさんがグラノーラの作り方を市外に広めないようにしているらしい。いわゆる、ご当地グルメ的なのを目指しているらしい。


「そう言えば、ローレンツの菓子店は見た事も無いケーキが沢山ありましたわ! カリメア様が力を入れてありますのね。そう言えば、ノンアルコールカクテルと抱き合わせでケーキを売ってあるお店がありましたの。とても斬新でしたわ。一日しか滞在出来ませんでしたので、数種類しか試せませんでしたが、どれも素晴らしい味でしたわ」


 モナハン一家は王都から出発して、航路一周中だったそうだ。ローレンツの寄港の際に市で一泊したのだそうだ。


「あらー、リズさんの所に行ったんですね。もう一軒はクシーナさんの所かな?」

「あら、お知り合いですの?」

「はい、リズさんは友達です。クシーナさんはリズさんの師匠さんなんです。お二人とも凄い技術の持ち主なんですよ!」


 フンフンと鼻息荒く二人のケーキの美味しさを説明する。


「私共もローレンツに寄港の際に下船したのですが、お土産のみ買って直ぐに船に戻ってしまいましたわ。なんと勿体無い事を! カナタ様の説明でお腹が鳴ってしまいそうでしたわ!」

「あははは。お土産は何を買われたんですか?」

「港に置いてある貝殻のアクセサリーですわ」

「あぁ、ローレンツの特産ですね。透明な貝殻は宝石のように美しいですからね。今、王都の若者の間で人気らしいですね」


 知らなかった。ローレンツの人はお小遣い稼ぎに拾ってるだけっぽいもんなぁ。そこら辺に落ちてるし。

 そもそも特産のお土産物って、地元ではそんなに人気にはならないか。


「確かに綺麗ですよねー。私も宝物入れにエメラルドグリーンの貝殻を入れてますよー。バウンティの目の色だなーって思ったら手放せなくて」

「あら、ステキですわね! 瞳の色の貝殻ですか。ふふっ、私も今度機会があったら探してみましょう」

「僕の瞳の色はあるかなぁ?」


 ブルーノさんの瞳は金色だった。


「……生なら?」

「あー、あれ、時間が経っても黒くなるもんな」

「黄色の透明で手を打ちましょう」


 皆でクスクスと笑いあい、色々と話した。かなり打ち解けた気がする。ローレンツ以外であまり知り合いがいなかったので、新しい繋がりは大切にしたい。

 子供達も仲良く遊べているようでホッとした。




 いつも通りジェラシーマックスのバウンティ。


次話も明日0時に公開です。

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