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35、サーカス

 



 子供達がお昼寝をしている間に、窓際のテーブルでのんびりとお喋り。


「そう言えば、これって前に乗ったのと一緒だよね?」

「ん」

「カンさんが私達の結婚式に来た時に乗ったのもコレ?」

「ん、そうだぞ」

「なるほどねー」

「何がなるほどなんだ?」

「豪華すぎて落ち着かなかったって」


 バウンティがキョトンとしていた。何か不思議な事でもあっただろうか?


「豪華か? 普通じゃ無いか?」

「おぉん。まぁ、うん。バウンティだしね」

「何だよ、説明しろよ! 説明っ」

「えー。好きだね説明。しないけどね?」


 説明や擦り合わせが面倒なのでスルーする。


「ねーねー、ミレーヌちゃんがね、シルバーの地位しかないけどイオと遊びたいって言ってたの。ねぇ、地位が違うとお友達とかになれないの?」

「あー、ミレーヌと両親達は王都に住んでるだろ――――」


 王都の人達は、地位の違いをかなり気にするらしい。強かと言うわけでも無いようだ。そう言えば、カンさんが出逢いが無いと言っていた。そういう意味だったのだろうか。王都で聞いてみよう。

 冷蔵庫に常備されているカットフルーツをつまみつつ、バウンティにパインをあーんして食べさせていた。


「バウンティ様、カナタ様、イベントのお知らせが届いております」

「イベント?」

「はい、毎夜イベントホールで催しが行われるのですが、今夜は八時よりサーカスだそうです。また、毎夜十時からは二等客室以上のお客様のみに解放されているカジノもございます」


 セルジオさんから予定表をもらう。

 明日の夜もサーカス。三日目のベイレンツに停泊中は有名な歌手さんによるオペラの上演が朝から複数回公演。四日目のお昼はレセプションパーティー、その夜はマジックショーとの事だ。


「こんなに色々あってるんだ? サーカスとマジックショーは見たがるだろうね」

「ん。こういう時くらい夜ふかししてもいいか」

「そうだねー」


 いつもは八時が寝る時間だけど、こういう機会でしか見れないだろうし、お昼寝を長めにしておけば寝落ちも無いだろう。




 五時になった。プールでかなり体力を消費したのだろう、最近は一時間程度で起きるようになっていたアステルさえも起きて来ない。六時辺りから夕食らしいので、起こして着替えさせる。


「アステルはワンピースね」

「はーい」

「イオはスーツ着とこうか」

「うん! かっこいい?」

「格好良いよー。男前っ!」


 着飾ったアステルとイオがゴーゼルさんとカリメアさんの部屋に見せびらかしに行きたいとの事なので送り出した。送って行こうとしたが付いて来たら駄目だと怒られたのだ。『ひとりでいけるもん!』だそうだ。


「二人じゃんよ」

「……ふたりでいけるもん!」

「あ、はい。ちゃんとノックするんだよ? あと、夕飯に行った後はサーカス見に行きますって伝えて?」

「わかったぁー」

「サーカス!」


 イオがパァァっと笑って、パタパタ走りながら出ていった。反対側に走ってるなと思ったら、セルジオさんが慌てて「逆ですよ!」と叫んでいた。


「どんだけ嬉しかったんだか」

「ハハハ。シュトラウト様のお部屋のドアを凄く叩いてらっしゃいました」

「あははは」




 ――――コンコンコン。


 部屋に帰ってくるのが遅くなりそうなので、子供達の寝間着や自分達の服を用意していたらノック音がしたので寝室から出ると、ゴーゼルさんとカリメアさんがリビングに通されていた。


「何かしていたの? 食事に出るんでしょ?」

「はい、行きましょうか」


 アステルはカリメアさんと手を繋いで、イオはゴーゼルさんに抱っこされてレストランへ向かった。

 レストランに着くと直ぐに席に案内された。席もきちんと大人四人、子供二人で用意されていた。


「「いただきます」」


 夜ご飯は、前菜のサーモンとクリームチーズのカナッペ。プチトマトと葉野菜のサラダ。オニオンスープ。サワラのような魚のアクアパッツア。牛肉のステーキ。デザートはピーチ味のシャーベットだった。


「ふあーっ。お腹イッパイ! なのにシャーベットはツルツル入っちゃうね」

「シャーベット、とろとろしてるー」

「ん、とろっとしてるな。不思議だな」


 確かに。アステルが言うように、まろやかなとろみが感じられる。ただ冷凍しているだけとは違うのかもしれない。今度調べてみよう。


「ママ……サーカスね、ミレーヌちゃんもさそいたいの……」

「うぉぅ、今!?」


 イオがモジモジしながら俯いていた。

 ずっと言いたかったけど、ちょっと恥ずかしい。でも誘いたい。迷いに迷ってお願いした。そんな風に見えた。


「ミラさんに聞いてみるね?」

「うん!」


 ホーネストさんにお願いして聞いてみると、ミラさん達も家族で見に行く予定だそうだ。ならばと、イベント会場入り口で待ち合わせする事になった。


「ヤッタァァ!」

「んははは。良かったねぇ」

「? そんなに嬉しいのか?」


 鈍感なバウンティに耳打ちで教えてあげる。


「イオはミレーヌちゃんに初恋中なんだよ」

「…………は? もうか?」


 もう、だろうか? わりと普通な気がするが。


「あー、バウンティの初恋は二十八だもんねぇ。ふふっ」

「ん!」

「おおぅ、張り切って返事した!」

「ハイハイ、イチャイチャはそれくらいにして、イベント始まるまで少し腹ごなしに歩きましょうか」

「「おさんぽする!」」


 子供達も賛成のようなのでレストランを出る。


「船内庭園でも歩きましょうか」

「「はーい」」


 


 暫く庭園を散歩したり、座って花壇を愛でたりしつつ時間を潰した。

 時間ちょっと前にイベント会場に向かうと既にヴァレリー夫妻とミレーヌちゃんがいた。


「ミレーヌちゃん!」


 イオがトテトテと走ってミレーヌちゃんの前まで行くと、右腕をスッと出して紳士ぶっている。

 ミレーヌちゃんも嬉しそうに微笑んでイオの右腕に左手を添えていた。


「んあー、可愛いなぁ、もぉ!」

「ふふふ、小さなカップル誕生でしょうか」


 イオが格好良く歩き始めたが、入り口で止められていた。


「あ、親御様でしょうか?」

「はい!」

「大変失礼しました。ご入場大丈夫ですよ」


 子供だけでの入場は不可なのだろう。


「アステル、ともだちできなかったよ!」

「あ、うん」


 アステルの体力と、貴族にはない気の強さ、ハッキリ言う性格が災いしたのか男の子達が妙に引いてしまっていたのだ。明日に期待しようと慰めた。

 会場は割りと人が多かったのだが、私達が行くと言っていたのでセルジオさんが前列に六席確保していてくれた。


「んー、そしたら、ゴーゼルさんとカリメアさんに子供達を任せても良いですか?」

「おー、えーぞぉー」

「よしっ、アステル、お昼遊んだお友達、一人見付けて狩ってこい!」

「わかった!」


 アステルがフンフン良いながら会場を走って行った。


「私達はそこら辺に座ろ?」

「ん」

「ご家族の団欒を邪魔して申し訳ありません」


 ダミアンさんが頭を下げていたが、気にしないで欲しいと伝えた。子供達が楽しいのが一番だ。


「ママー、つれてきた!」

「前列にイオ達座ってるから。見付けれる?」

「ん、だいじょうぶー!」


 昼、プールで遊んだ同じ年齢の子を連れて来たらしい。向こうも手を繋いで笑っているので、まぁ、無理矢理でも無いのだろう。


「あいつ、どこのどいつだ」

「ぶははは! ジェラってやんの!」

「……煩い」


 バウンティが可愛いくて笑いながら背中をバシバシ叩いていたら、電気が消えて、カラフルなライトがくるくると動き出した。


「始まりますわね!」

「ですねー」


 初めは団長さんの挨拶。それから、ジャグリング。マラカスのような物を何個も投げていた。

 次は天井からぶら下がったリボンを使った種目のようだ。男性と女性がダンスを始めたと思ったら、腕だけでリボンを昇ったり、体に巻き付けながら天井まで昇ったかと思うと、シュルシュルと落ちてきて床直前でピタッと止まった。ハラハラした。


「おほぉぅ。ビックリした!」


 次はフラフープ、始めは数本を回しているだけだった。腰、始めは右手右足、左足でそれぞれのフラフープをバラバラに回している。段々と増えていき三十本も落ちずに回っていた。

 次に出てきたのはムキムキのお兄さん二人だった。これはあれだ、ムキムキ二人がアクロバットするやつだ。バウンティがちょっとしらけている。凄いと思うのだけれど、バウンティにすれば「俺も出来るし」だそうだ。

 まぁ、ソレはスルーするとして、拍手!


「俺も誉めろ」


 ――――馬鹿な人は放置!


 最後はブランコだった。端と端にブランコがあり、地上からは十メートル以上離れているようだ。

 片方から片方へと飛び移る度に大きな歓声が上がった。

 一人が膝裏でぶら下がり両手を垂らす。もう一人がその手を目掛けて飛び移る。そしてタイミングを見計らって、元のブランコに飛んで戻った。

 手に汗握るサーカスだった。スタンディングオベーション、拍手喝采だ。


「凄かったねぇ、久しぶりに見たよ」

「俺も」

「ママー、たのしかった! みた?」

「おん、全部見てたけど……イオくん? ミレーヌちゃん置いてきてるよ?」

「あっ!」


 随分興奮している。今日は寝かせるのが大変そうだ。




 ちょいちょいジェラるバウンティは放置が一番。


次話も明日0時に公開です。

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