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170、それから。そして、これから。

 



 エズメリーダさんとダニエレくんの観光兼視察の案内も完了し、特に問題も起こす事無く送り出した。

 老人ホームではエズメリーダさんだと紹介した瞬間、いつぞやの全カーテシーを体験しアワアワしたり、リズさんのケーキに舌包みを打ち、食べすぎたり。楽しく過ごせた。

 それから二週間後にはカンさんとご両親も王都に帰って行った。カンさんのご両親はこのまま定住する予定だ。


「日本に用事があるときは言って下さいね」

「や、妊婦で飛ぶの駄目だろ……」

「ホーネストさんが安定期に入ったら大丈夫だって教えてくれたんですよ」


 アステルもイオも転移酔いせず、何回やっても平気だから何でだろうと聞いたら、精霊王に確認してくれた。渋々教えてくれたらしい。お礼にグラノーラクッキーを寄越せと言われたらしく、ホーネストさんが持てる最大量持たせた。それ以来、時々催促される。

 精霊王が予想外に現金だった事が一番の衝撃だった。




 それから暫く経った五月五日、男の子を出産した。

 なぜかまたもや公開出産をさせられ、見学室にアステルとイオまでいたのには正直引いた。誰だ入れたのは。隣で鼻水垂らしてるバウンティか!?

 思いの外安産でするりと産まれて来てくれたが、その場が騒然とした。子供の髪の毛が藤色なのだ。ピンクとも紫とも言えない、そんな色。目は焦げ茶だった。

 この世界には色んな髪色の人が多いし、バウンティの家系に藤色の人がいたのかもしれないな。そんな事を思いつつ見学室にいたバウンティを見ると無表情になっていた。

 また盛大に何かを拗らせているのだろう。




 多少すったもんだがあったものの、無事に『ウィスタリア』という名前に決まった。五十音順ではない。決して意図はしていない……はず。だって名前付けたのバウンティだし……ね?

 子供達にはウィスタリアは長すぎたようで、今のところ『ウィズ』で定着している。何で『ズ』になるんだと不思議でならないが、そういうものらしい。


「リズだってそうじゃねぇか」

「え?」


 リズさんはリズさんではなかったようだ。本名は『エリザベス』らしい。本人が永くて面倒だからと『リズ』のまま通しているとバウンティが教えてくれた。知り合って六年以上たってからの新事実だった。




 それからは子育てに翻弄されつつも、公園に遊具を設置したり、王都での孤児院設立などに協力したり、シュトラウト家の祖父母が立て続けに亡くなったり、楽しい事、悲しい事が沢山あった。

 そうして、気がつけば五年もの月日が流れていた。


「ママママママ!」

「ハイハイハイ?」

「遅刻する! 送って!」

「いや、ずっと起こしてたじゃん? 起きないアステルが悪いよ。イオはもう走って行ったよ? 急いで行けばギリ大丈夫でしょ」


 イオも寝坊してたが、十分前に寝癖モサモサのまま走って出ていった。アステルは何か必死に身だしなみを整えていたから出遅れている。

アステルは一昨年から、イオは去年からローレンツにある学園に通い出した。普通の勉強から貴族的な勉強まで色々と学んでいるのだ。


「おーねーがーいー! 今日最初の授業、礼儀作法のテストなの! 赤点だったら一週間居残りなのぉぉ!」

「……はぁ。行儀とかうんぬん以前の問題のような……」


 どうしようかと悩んでいるとアステルは私の横にいるヤツに狙いを変えた。


「パパ! お願い!」

「ん、走れば間に合う」

「走ったら髪の毛がグッチャグチャになるの! 赤点とったらパパの誕生日に早く帰って来れな――――」

「カナタ! すぐ送ってやれ!」

「チョロいなオイ!」


 エメラルドグリーンの瞳が四つ、キラキラとギラギラで見詰めてくる。


「あー! もうっ。はい、掴まって」


 手を差し出すとアステルが「ありがと! ママ大好き!」と言いながら抱きついてくる。バウンティが「え、俺は?」とか言っているが無視で良い。サッと学園の裏庭の木陰に飛んで、アステルを送り出す。アステルとイオが寝坊した時用の安全策として私が飛べる場所を学園内で探していた。小狡い。

 ペナルティを考えよう。


「ただいまー」

「ん、おかえり」

「ママー、おかえりー」

「おー、ウィスタリア起きてきたのー。ただいま、おはよー」


 トテトテ走ってくるウィスタリアをバウンティの膝の上で抱き抱える。相も変わらず、バウンティの膝の上に着地のこの仕様。


「ハァ……」

「ん? どうした?」

「いーえー。幸せの溜め息ですよー」

「ん! 幸せだな!」


 ――――チュッ。


「ウィズもちゅー! しあわせー?」


 ――――チューッ。


「うははは。幸せ!」


 きっとこれからもドタドタ、わちゃわちゃしながら幸せな毎日が過ぎて行くんだろう。

 

 ―― fin ――




 えー、急に駆け足で最終回です。


 出逢い編をごっそり削除してムーンライトノベルズの方へ移行させたりと、色々ありました。

 急に思い立って書き始めて一年。どうにか続けてこれたのは読者の皆様のおかげでした。

ありがとうございました!

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