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165、引っ越しパーティー③

 



 エズメリーダさんの握力に引いたり笑ったりしつつ騒いでいると、シエナちゃん達がささささーっとテーブルの上を片付けだして、おかず系を四分の一ほどにして、デザートを並べだした。

 リズさんはプチケーキを大量に持って来てくれていた。


「可愛いー! 一口サイズだぁ」

「テッサも手伝ってくれたのよ」

「ほんと? ありがとーテッサちゃん! テッサちゃんも引っ越しで忙しかっただろうに……」

「どういたしまして。あ、バウンティ様にはアレね」


 指差された物を見て笑ってしまった。ミニカップに入ったパインゼリー。流石テッサちゃん。


「あらー、俺もかき氷機持って来た方が良かった? いや、でももう肌寒くなってるしねぇ」

「ハミルトンさんはチーズと生ハムのおつまみくれたじゃないですかー。あのチーズ美味しかった!」

「お、本当かい? 頑張った甲斐があったなぁ」

「あはは。男三人で凄くムサかったよな!」


 ハミルトンさんとノランくんともう一人の弟くんのレクスくんがケタケタ笑っていた。

 テッサちゃんが教えてくれた。大の男三人でキッチンに立って生クリームから手作りしてくれていたそうだ。


「いやー、嬢ちゃんの置いて行った調理道具、まじ最高だったよ。入り浸りそうだよ」

「いや、兄貴、引っ越しの手伝いと称して三泊目じゃんか。すでに入り浸ってるし」


 テッサちゃん達は数日前に元我が家に入居した。そして、なぜかあの家は『イマイ邸』と呼ばれている。私もう住んでないのに。そこはテッサ邸かノラン邸で良くないかなと思ったけど、家主が私だからイマイ邸らしい。借家名でも考えて登録してしまおうかとも考えたが、如何せん私のネーミングセンスはゴーゼルさん並み。潔く諦めた。


「皆様、デザートの準備が出来ました。オリジナルパフェはこちらで作って下さい」


 テッサちゃんが左から右へ、テーブルに並んだデザートの説明と、オリジナルパフェの説明を始めた。

 大きいパックに入ったアイスはバットに入れた氷水に浸けてなるべく溶けないようにはしている。見た目はちょっと悪いけど、ホームパーティーだから赦して欲しい。


「――――このように、好きなものを選んで層にして、飾っていきます。こちらに写真を用意していますのでご参考にどうぞ」


 こちらの世界にはゴテゴテしいパフェは無い。アイスを果物で飾ったりしたのは多少ある。

 テッサちゃんが作ったのを見て皆がキラキラしだした。思いの外男性陣も食い付いてる。


「では、どうぞ――――」


 言うやいなや、皆がこぞってパフェ作りに集まったので、私は悠々とリズさんのケーキをお皿に盛る。隣でバウンティがニコニコとパインゼリーを取っていた。


「テッサちゃんが作ってくれたってよ。後でお礼言ってね?」

「ん、もう言って、頭撫でた。何でかノランに自分はクリームチーズ作った、自分も撫でろって言われた」

「……撫でたの?」

「ん、カナッペ美味かったし」


 ノランくん、どんな趣味だ。時々テッサちゃんと競ってたりするんだよね。仲良しだな。

 あと、カナッペは確かに美味しかった。蕩けるようなクリームチーズが最高だった。ミニトマトをくり貫いて中にクリームチーズ入れたやつも美味しかった。刻んだカリカリベーコンと乾燥バジルが混ぜてあって面白い食感だった。


「手土産がオシャレで豪勢……。私か出したの居酒屋メニューが多いんだよねー」


 餃子とか、チーズタッカルビとか、揚げタコとか、エビチリとか、酢豚とか……あれ? ほとんど茶色いな。


「あ、ニラ玉とヤマイモの鉄板焼食べたい」

「ニラとヤマイモねぇ、こっちに無いんだよね。ニラは育てる?」


 以前カリメアさんにお願いしていた色んな野菜の種は順調に育って収穫が始まっている。大根はちょっと細かったけど、とても美味しかった。テンション上げて夏におでん作るほど美味しかった。

 山芋は何か育てるの大変そうだし、ちょこちょこ買いに戻るかなぁ。最近は『また来たの?』とかぁさんに呆れられるんだよね。ちょっと前に感動の再開を果たしたのにどういう事なんだろうなとは思うけど、『ちょっくら豆腐買ってくる』とか言って飛んでるから何も言えない。


「ニラ玉! ワシも食べたいのぉ。多めに買って来てくれ」

「はーい」


 山芋……とろろって手が痒くなるんだよなぁ。とろろ…………胡麻鯖とろろ!


「うん! 胡麻鯖とろろが食べたい!」

「「は?」」


 バウンティとゴーゼルさんに急に叫ぶなと怒られた。だって『とろろ』って思ったら食べたくなったんだもん。

 九州の親戚の家で出てきた魅惑のおかず。私はアイツは無限に食べれるおかずだと思っている。叔父さん達が酒のツマミだと言うけれど、ご飯にかけたら美味しいし。アイツはおかずなのだ。

 鯖のさしみを醤油とミリンと擂り胡麻と生姜に半日ほど漬けて、お皿に出した後とろろを上からかける。漬けダレをちょっとかけてもよし。


「あぁぁ。食べたくなって来たぁ」

「…………たぶんウケないぞ」

「だろうね!」


 どうやっても生魚はウケないのは気付いてるんだよ! ウケるのサーモンオンリーだもの。鯛のカルパッチョも実はそんなにウケてはなかったし。『思ったより美味かった』程度だったし。鯛めしする時に毎回作ってたら、毎回は作らなくても良いとやんわり言われたし! くそぅ。


「私だけ食べるもん!」

「……一応味見はする」

「やんないよ! ハゲ!」

「ハゲてねぇよ」

「何ケンカしてるのよ全く……」


 パフェを片手に持ったカリメアさんが溜め息吐きながら戻って来た。


「わ、綺麗ですね」

「んふふ。なかなか上手く出来たでしょ?」

「おぉぉ、ワシも作ってくる!」


 ゴーゼルさんがバタバタと走って行った。入れ替わりでリズさんが来て相談があると言われた。


「ねぇ、このスプーンはどこの工房の物? 発注したいんだけど」


 パフェ専用に買って来た柄の長いスプーンをリズさんがマジマジと見ながら聞いてくる。答え辛いけど、言うしか無いんだろう。


「…………百円ショップです」

「百エン?」

「あぁ、銅貨一枚よ」

「えっ!? 一本で銅貨一枚!?」

「…………四本でです」


 カリメアさんが「あら、そうなのー」とあちらの感覚に慣れてしまった感じで返事をしてくれたが、リズさんは駄目だった。


「また……また常識はずれのモノを…………職人が泣くわね……」

「いや、ばらまきはしませんよ!? 売り出すんなら開発に回してもらって、こちらの販売価格に合わせますって。今回はパーティーで使う事になったんで急遽買って来ただけですよ」


 あっちに持ち込んだ宝石は法律的に微妙な感じだけど、向こうからこっちに持ち込むとしても、現物を売る気は無い。プレゼントはするけど。欲しいなら開発してこちらの製造ラインに乗せて作って欲しい。


「持ち込んだものを売るだけじゃ、この国は潤わないから。ってカリメアさんと約束したし」


 ケーキは……まぁ、値下げしてもらってたけど…………。

 私に報酬を出さない分を販売価格から下げてもらったのと、クシーナさんとリズさんが薄利多売でカッパーの人達にも広めたいってのに賛同してくれたからの実現だった。


「まぁ、コレなら工房の職人に見せて普通のデザートスプーンの柄を伸ばしてもらうだけで良いんじゃないかしら?」

「そうですね。開発者はカナタで良いですか?」

「えっ? リズさんが欲しいんだからリズさんでいいよ」

「「…………」」

「ま、ソレで良いわよ」


 カリメアさんが話は終了とばかりに許可を出して、鼻歌を歌いながらパフェのお代わりを作りに行ってしまった。

 リズさんは茫然自失な感じで白目になりかけていた。




 次でパーティー終わります!

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