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163、引っ越しパーティー①

 



 朝十時少し前、ポツポツと招待客が現れだした。


「ようこそおいで下さいました、ラセット様、奥様、お坊っちゃま。ご案内いたしますので、こちらのサロンにておくつろぎ下さい」


 玄関ではセルジオさんが来客のお迎え兼案内役をしてくれていた。

 

「リズさーん、マシューくん、いらっしゃい! あ、ジュドさんも」

「はいはい。俺はついでなのね」

「えー? えへへ。バウンティ、家を案内してー」

「ん」

「マシュはぼくがあんないする」


 リズさんは手土産を冷蔵庫に、との事でキッチンに案内する。


「引っ越しパーティーするって言うから、この一ヵ月わざと来なかったけど……アホみたいに豪邸ね」

「えー? シュトラウト邸の方がアホみたいですよ?」

「ラセット亭から考えなさいよ」

「あー、まー」

「うわっ、キッチン広っ。何この冷蔵庫……」


 冷蔵庫は日本から運んだ。凄く不格好だったけど、運べた。

 資金は、とーさんが知り合いになった宝石商の人にカリメアさんおすすめの宝石を買い取ってもらってゲットした。多少マネーロンダリング感が否めないけど、犯罪ではない。たぶん。きっと。


「業務用と最新式なんですよー。最新式はなんと、氷が二分で出来るんですよ!」


 一センチ角の少し小さめの氷だけど、ゴロゴロ出来上がる。引き出しを開ける度に増えていく氷に子供達が大喜びだった。

 最新式の冷蔵庫や新たに増やしたエスプレッソマシンなど説明する。と言ってもエスプレッソマシンはセルジオさんがお気に入り過ぎて、操作を完璧に覚えてしまった。今は作るのも清掃も全部お任せしている。


「カナタ様、そろそろ揚げタコ作りますか?」

「うーん。皆が揃ってからで良いかなぁ」

「そう言えば、今日は『結構来る』としか聞いてないけど、何人の予定なの?」

「二十五人くらい?」

「……結構来るのね」


 なので、今日はリビングを片付けて、立食パーティー形式にしている。

 リズさんと話していたら続々と人が集まりだしたとプリシラちゃんから言われた。二人でエントランスに向かうと、ゴーゼルさんとカリメアさんとイーナさんとアダムさん、クラリッサさん、ベリンダさん、マーサちゃんが来ていた。

 

「マーサちゃん! 久しぶりー」

「カナタちゃん、おじゃましまぁす。これねぇ、工房からのお祝いー」


 冬用のフッカフカのスリッパを家族分もらった。ありがたい。冬に重宝すること間違い無しだ。

 受け取って喜んでいたら、色々と開発を丸投げしていたおじいちゃんが来てくれた。


「おじいちゃん、いらっしゃい!」

「よぉ……お前さんが内輪のパーティーだっつーから……作業着で来ちまったじゃねぇか……」

「えー? 内輪ですよ?」

「まぁいい……ほれ、引っ越し祝いだ」


 ガチャっと工具を見せられた。ポカンとしていると、おじいちゃんがニンマリして「十個までタダでコンセントを付け替えてやるよ」と言った。あまりにも嬉しくて抱き着こうとしたけど、後ろから襟首掴まれてグエッっとカエルのように鳴く羽目になった。


「……カナタ、落ち着け。じじいは手を広げるな」


 バウンティが家の案内を終わらせて戻って来たらしい。

 

「なんじゃい。減らんだろ」

「減る」


 ――――減らんわ。


 その後も続々と来て、時間になったのでパーティー開始した。

 



 リビングで思い思いに過ごす。


「あれ? カンは? 昨日到着じゃ無かったっけ?」


 ジュドさんがカンさんがいない事に気付いたらしい。カンさんのいつもの休暇でこちらに来て、ウチに泊まる予定にしていたのだけれど、嵐だか何だかで船の出港が一日遅れたと連絡があった。ちなみにエズメリーダさんとダニエレくんも同じ船で来る予定だったので同じく到着していない。

 一応、今日の朝には到着すると聞いていたのだけど、まだ来ていないのだ。


「あ、だからニールもいないのね」

「ん、もうすぐ着くってさっき精霊が来たぞ」

「ほんと? おじさんとおばさん元気かなぁ」


 カンさんのご両親は王都に長期滞在中だ。お二人とも徐々にフィランツ語を覚えてきているらしい。バウンティがどっぷりとその状況に浸かった方が覚えるのが早いと言っていた。そして、日本語がなかなか覚えられないともグチっていた。協力出来なくて申し訳無い。


「ってか、ホントに王女も来るの?」

「元な」

「うん! 誘ったら来てくれるってー」

「えー、高飛車で我が儘なんでしょぉ? 大丈夫ぅ?」

「大丈夫だよ、マーサちゃん。イジったら真っ赤になって可愛いんだよ!」


 そこかしこで王女をイジったら駄目だろうとか大人な意見が出たけど、無視無視。シュボボボボと真っ赤になるから楽しいのだ。

 

「カナタ、コレなに? パスタ?」

「冷やし中華」

「ヒヤシチュウカ?」

「……冷たい、ラーメン的な?」

「へぇ。美味しい! 麺がプリプリしてる」


 そうだろう、そうだろう。わざわざ日本のスーパーで買ってきたからね! チルドコーナーにある一袋三十円くらいのを。


「ピーマンカップも美味しいけど、横に何か変なのもあったわよ?」


 ベリンダさんが指差す方を見てみると、ピーマンカップの種類が増えていた。が、明らかに何かがおかしい。近付いてよく見てみると、なぜかピーマンカップに青椒肉絲が入っている。


「コレ……誰が作ったの?」

「え? カナタじゃないの?」

「いや、ピーマンづくしって……」

「え? 追加で青椒肉絲を入れてと伝言を頂きましたが……」


 追加の食材を持って来たシエナちゃんからの衝撃の告白。誰が伝言してきたんだと思ったが、犯人はヤツしかいない。


「アステル!」

「なーにー?」

「青椒肉絲出来てるよ」

「おぉぉ! ピーマンづくし。みどりのほうせきばこやぁぁ」

「…………ま、いいか」


 勝手な注文で困らせるなと怒ろうと思ったけど、パーティー中だし、本気で喜んで食べていたので諦めた。あと、普通に美味しかった。

 そして、青椒肉絲を皮切りに、追加の食べ物が中華に移行しだした。シエナちゃんは辛いのは苦手だけど、中華が得意なのだ。


「エビチリうまー。酢豚もうまー。ご飯が食べたくなってきた……」

「今キッチンでケイナがミニおにぎり作ってますよ」

「ありがとー。ちゃんと休憩したり、食べたりしてる?」

「してますよー」


 シエナちゃんが指差す方を見たら、プリシラちゃんがお口をモグモグさせながらお皿に料理を盛っている途中だった。


「……唐揚げ山盛りだね」

「唐揚げとディップさえあれば給料はいらないとか言ってましたよ」

「……野菜も食べるように言ってね」

「かしこまりました」


 我が家のパーティーは全員参加なのだ。因みに、空いたお皿などの片付けは皆が率先してやってくれる。どんなに大人数でも我が家のパーティーはやっぱり我が家流になるんだなとエビチリを頬張りながら感心した。




 ピーマンinピーマン。焼いたピーマンカップに青椒肉絲を入れただけ。

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