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161、新しい家

 



 新しいお屋敷を手に入れ、ルンルンでゴーゼルさんとカリメアさんに報告した。軽く呆れられつつ、内装や家具の手配をしたり、日本に行って子供達と子供部屋の家具を選んだりと精力的に活動して、気付けば一ヵ月でお引っ越しが完了した。


「ルドルフさーん、ありがとうね! 凄いねぇ!」


 トナカイの精霊、ルドルフさんにお願いして最後の荷物を運び終えた。ルドルフさんの胸毛に顔を埋め、左右に振る。もふもふだ。太陽の匂いがする。


「カナタ! 浮気は駄目って言った!」

「でへへ。ホーネストさん、ヤキモチですかぁ? 可愛いなぁ」

「カナタ、落ち着け」

「バウンティ、お前も注意しろよ!」

「ん、もう諦めた」


 諦められていたらしい。もふもふ堪能していいのなら有り難い。

 ルドルフさん達を見送って新しい家に一番に入る。


「むふふ。おかえりバウンティ、今日からここが家だよ」


 振り替えって、両手を広げてバウンティに笑いかけると、久し振りの破顔が真上から降ってきた。


 ――――チュッ、クチュッ。


「……ん、ただいま。はぁ、部屋に籠りたい…………」


 何かのスイッチを押してしまったらしい。ハグだけでよかったのに。グイッと押し退けて子供達にも言う。


「アステルとイオも、おかえり。今日からここがお家だよ! 今日からお世話になる皆に挨拶しようね」


 エントランスホールで待っていてくれた新しいお手伝いさん達に挨拶する。と言っても半分は顔見知りだけど。我が家のお手伝いさんはカリメアさんの許可が無いと駄目なのだ。

 家令としてシエナちゃん、メイドとして継続してケイナちゃん、以前お手伝いさんの面接をして最終選考に残っていたプリシラちゃん。黄緑色のロングヘアーを後ろでピッシリ一つ結びにしていて、瞳は緑がかった黄土色で不思議な色合いだ。

 何よりも驚いたのはセルジオさんがいた事。カリメアさんから引き抜かれていたらしい。

 セルジオさん、実は賞金稼ぎにも登録しており、紫石らしい。色々な国を巡り、色々な人にも会うので護衛術に特化しているそうだ。

 カリメアさんがセルジオさんを連れて来た時、実力を測るとか言い出して、バウンティがセルジオさんと素手での打ち合いをした。組み手のような打ち合いが三分ほど続いたので、バウンティから子供達の護衛としての許可も下りた。




「対バウンティで三分持つヤツ久しぶりに見たぜ! 俺ともやろうぜ! なーなー、セルジオー、やろうぜー?」

「ア、ダム様……ちょ、ちょっとお待ち下さいっ……」




 アダムさんがキラキラした顔で、ヘロヘロのセルジオさんの袖を引っ張って強請っていたのが今でも思い出せる。


「皆さん、よろしくお願いします!」

「「よろしくおねがいします」」

「ん」

 

 ――――バウンティよ、『ん』は挨拶では無いぞ。


 ジト目で見つつ、それぞれに声をかけて、リビングへ行く。


「…………無駄に広い」

「ん」

「あと、テレビが妙な違和感」

「ん」

「デーブイデー、みるー」

「あ、はいはい」


 リビングは五十畳ほどあるらしい。広さの換算したらそのくらいだとかぁさんが教えてくれた。

 葉子にもらったテレビは張り出した暖炉の上に設置した。アニメのDVDを再生し、最後に持ち込んだ荷物を整理する。


「カナタ様、お着替えはご自身で片付けられますか?」

「うん。荷物はほとんど生活用品だから放置でいいよー。シエナちゃん、家電の使い方は皆大丈夫そう?」

「はい、バウンティ様の説明書きもありますので大丈夫ですよ。プリシラが少し戸惑ってはいますが、その内慣れるでしょう。それよりセルジオの順能力の高さが怖いですね……」

「ははっ、コツを掴むのが得意なんですよ」


 セルジオさんはシエナちゃんの下の立場なのでシエナちゃんはセルジオさんを呼び捨てにしている。シエナちゃんは初めは敬語で話しかけていたらしいが、セルジオさんからタメ口、呼び捨てにするようにと言われたらしい。

 まだまだ慣れないらしく、少しドギマギしているのが何だか微笑ましい。




 新しい家で過ごす初めての日、どこに何を置いたっけ? など、ワサワサしたりしつつも無事一日がもうすぐ終わる。

 色々と葛藤はあったがシエナちゃん、セルジオさん、プリシラちゃんはここに住む事になった。ケイナちゃんは実家から通いだ。

 ここの部屋はめっちゃ狭いから、裏庭を半分潰して従業員寮みたいなのを建てようか? と言ったら全員にドン引きされた。あの狭さは普通らしい。

 しかも、リビングもダイニングもプレイルームも好きに使って良い、食事も私達のと全く同じ、食べたい物があれば食材も勝手に使って作って良い。七時始業、五時終業、週休二日、なのにシュトラウト邸と同じ給料などあり得ないと四人から説教された。

 あれ? 私雇い主じゃないのかな? とか思いつつ謝ったり、宥めたりした。


「ふふふ。船の生活も好きでしたが、こちらもとても楽しめそうでワクワクしておりますよ」


 セルジオさんが楽しそうで何よりだ。特にプレイルームがお気に入りらしい。プレイルームと言う名のトレーニングルームだしね。

 一ヵ月ほどして生活が落ち着いたらリビングで引っ越しパーティーでもしようと皆を誘った。アダムさんとクラリッサさんはそれに参加してから王都の方に移動するらしい。転移で届けようかと言ったが、ゲロゲロで二人共動けなくなるのは遠慮したいとの事だった。


「はぁ、今日は疲れたねー。おやすみ」

「ん」


 程よい疲れと、フカフカ新品のマットレス。直ぐに深い眠りに落ちた。




 サクッと引っ越ししました。

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