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160、内覧

 



 皆にお土産を渡したり、賃貸の話をしたりした日の夜。子供達をそれぞれでお風呂に入れた。

 私が寝かし付けるからバウンティは主寝室で休んでて良いと伝えていた。


「ただいまー」

「ん、やっと寝たのか?」

「うん、絵本読んだら興奮させちゃった……」


 毎度毎度反省である。


「バウンティ、ちょっと調子良さそうだね?」

「ん、段々慣れてくるのかもな」


 ベッドの中から手を伸ばして呼ばれたのでトテトテ近付くと引きずり込まれ、後ろ抱きにされた。

 今日はほぼ放置だったので寂しかったのかも知れない。


「明日、不動産屋さん行けそ?」

「ん、大丈夫だ……」


 首筋辺りに妙に粗い鼻息がかかる。が、大人しく寝なさいとアイアンクロウして落ち着かせた。




 翌日、皆で不動産屋さんに来た。が、予想外の事態に陥った。


「えっ、大きいお屋敷は扱ってない…………」

「申し訳ございません。コーディネーターの紹介は出来ますので、どちらかでお会いされますか?」

「あ、はい。……バウンティ、家で良い?」

「ん」


 バウンティに確認していたら、従業員の人が接客担当の人にスッと紙を渡していた。


「ふむ……本日の二時にならお約束出来るそうですが、どうされますか?」

「お願いします。住所は――――」

「把握しておりますので大丈夫ですよ」

「ですよね。じゃあ、よろしくお願いします!」


 不動産屋さんを出て家に帰る事にした。


「いやー、知らなかったよー。でも紹介してもらえるのは有り難いね」

「ん、俺も知らなかった」

「あたらしいおうち、かわないの?」

「家にコーディネーターさんが来てくれるんだよ」

「「ふーん」」


 うん、分かって無さそうだ。取り敢えず家に帰る事は理解出来たらしく、お昼に何を食べるか話ながら帰った。




 ――――コンコンコン、ガチャッ。


「不動産のコーディネーターさん来られました」

「はーい、どーぞ」


 リビングに案内してケイナちゃんにお茶を出してもらった。


「始めまして。私、不動産コーディネーターをしております、ジェレマイアと申します」


 真っ赤な髪を七三に固め、銀縁の眼鏡をかけた五十代のピシィッとした男性がジェレマイアと名乗った。身長はこちらではそんなには高く無さそうで、百七十センチくらいのようだ。

 銀縁の奥に光る、紫色の瞳がとても綺麗で見入ってしまった。


「……あ! カナタです。よろしくお願いします」

「バウンティだ」

「カナタ様、バウンティ様、ご家族で住めるお屋敷を検討中との事ですが、ご希望の間取りや立地等、ご予算をお伺いしてもよろしいですか?」


 間取りは個室が四つ以上、各部屋にトイレとお風呂、リビングは出来れば広めが希望だ。

 立地は中町であれば特に希望は無い。予算も特には無い。


「……プール」

「あ、プールもあればで!」

「プールですか……市外の別荘ならあるのですが…………」


 どうやらプール付きの不動産は市内にはあまり無いようだ。

 五件の間取りと外観の絵を見せてもらった。一件だけプール付きがあったが、ちょっとボロいらしい。


「んー、私はここと……ここがいいかも」

「……そうだな、こっちは?」


 バウンティが気になっているのは三階建てのお屋敷。だがしかし、断固拒否である。


「階段が嫌!」

「三階くらい大丈夫だろ?」

「……妊娠してた時、二階でも辛かった」

「っ、ん! ここは無しだな」


 拒否されたのにニコニコになるバウンティ。今日の夜が面倒な事になりそうだ。

 

「では、こちらの二軒の内覧をされますか?」

「はい!」

「直ぐ大丈夫ですか? 少し歩きますので、お子様も同行されるのであればタクシーなどご利用されますか?」


 中町であれば大丈夫だと伝える。アステルもイオもたぶん私より体力がある。

 皆で歩いて移動していて思い出した。


「そう言えばアダムさん達が来てないけど、護衛はもう良いの?」

「ん、ここら一帯はもう大丈夫だ。家の警備はもう暫く続けるが、二ヶ月ほどの様子見で大丈夫だろう」

「そっか!」


 早く気兼ねなく自由に動き回れるようになりたい。


「大通りを左折して直ぐにあるこちらのお屋敷が一軒目です」

「おぉぉ」

「おーきい……」


 今住んでいる家より二倍以上大きいお屋敷だった。

 門は赤茶色のレンガ製、中に入ると草は延び放題だったが、テニスコートくらいの全庭がある。

 建物も赤茶色のレンガ風で、二階建て。観音開きの黒い鉄製の玄関を入るとエントランスホールがあり、正面奥に『く』の字で薄茶色の階段があった。

 全体的に茶色いイメージの家だ。

 一階の右にリビングとダイニングとキッチン、左に広めのサロンとプレイルーム、奥の方にメイド部屋やトイレ、メイド用のお風呂、洗濯室などがあった。

 二階には主寝室の他に個室が三部屋、クローゼットルームが二部屋、執務室があった。


「こちら築八十年で、以前は貿易で財をなしたシルバーの男爵様が別荘として使われていました。この十年ほど空き家になっており、家具等は全て撤去しております。金額は、白金貨八十六枚です」

「おっふ……」

「手入れと改装に時間がかかりそうだな」


 色々と見て回った後、次のお屋敷に移動した。


「アステル、こっちがいい!」

「グランパのおうち、ちかいね」


 二軒目はシュトラウト邸に五分も掛からずに着きそうな距離のお屋敷だった。

 塀ではなく柵と生け垣で出来ており、先っぽが尖ったアーチ状の金属門があり、ちょっと狭めの全庭があり、そこには薔薇が植わっていた。

 外観はクリーム色の石壁で、横広い二階建てのお屋敷だ。中央、右、左と三つの建物で構成されており、左はとんがり屋根の付いた八角形の建物がくっ付いたようになっていた。屋根は青緑色が青空に映えてとても綺麗だ。

 玄関は観音開きで、下半分は焦げ茶色の木で、上半分は木枠にガラスとアール・ヌーボー式とか言う感じの鉄柵で構成されていた。

 玄関ホールに入ると、正面の二階中央から両サイドに向かって弧を描くように階段が降りて来ており、天井にはシャンデリアがぶら下がっていた。壁は全体的にクリーム色のようだ。


「……シャンデリアですよ。オサレだね……」

「ママ、おくちあいてるよー」


 シャンデリアとか見たら口も開くだろうよ。

 エントランスホールから右の方にダイニング、キッチン、トイレとお風呂、四畳半ほどのメイド部屋が三部屋、洗濯場がある。そこから裏庭に出れるようになっていて、裏庭には洗濯物を干したり、家庭菜園が出来そうな庭が広がっていた。広さ的にはテニスコート二面くらいありそうだ。

 建物の左の方は手前に八角形のサロン、奥にはプレイルーム、執務室、図書室みたいな壁一面棚になった部屋があった。

 真ん中の階段の下は、だだっ広いリビングになっていた。


「サロン、可愛いね」

「ママ、サロンってなに?」

「え? お客さんとかを対応する部屋、かな?」

「ねー、リビングは?」

「えぇっと、家族や友達がのんびり過ごす所、かな?」

「「ふーん?」」


 理解してない感じの反応だ。しかしながら、これ以上の説明能力は持ち合わせていないので放置でいい。

 二階に上がる。階段から二階にかけて深い紺色の絨毯を敷いてあるのが見えた。今は床全体にシートを敷いて保護してある。

 二階の右側に主寝室、少し広めの来客部屋が二部屋。

 左側は八角形の部分で一部屋と、奥に六畳くらいの部屋が三部屋あった。それぞれにトイレと小さなお風呂が付いている。真ん中にはウォークインクローゼットが二部屋と用具入れの部屋があった。


「こちらは、まだ築十年ほどで、以前はゴールドの伯爵家の方々が住まわれていました。大きいソファやベッドなどの、一部家具はそのままになっております。金額は、白金貨二百枚です」


 色々と予想を上回るお屋敷だった。築年数が浅い事もあって修理などは大丈夫そうだ。


「バウンティ、どお?」

「ん、ここ良いな。お手伝いかメイドを雇う事になりそうだが、カナタは良いのか?」

「うん、大丈夫。シュトラウト邸も近いし、アステルとイオはもうここで決定みたいだし、ね?」

「「うん!」」


 コーディネーターさんに購入の旨を伝えた。

 

「え……あ、ありがとうございます。え? はい、お支払が確認出来て、契約書をご記入いただいた後なら、直ぐに鍵をお渡し出来ますが……」


 では、早速。とサクサク進めていき、あれよあれよと言う間にお屋敷が我が物になっていた。




 またもや即日購入のカナタさん。

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