159、相談と大勝負。
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――――ドサッ。
「いたたただいま」
「「シュタッ」」
子供達が口で言って本当にシュタッと着地している所がバウンティ遺伝子なのだろうか。憎たらしや。
「お帰りなさい。バウンティ様は二階で寝られてます。お昼はどうされますか?」
「何かすぐ出せるのある?」
「おにぎりかサンドイッチでしたら直ぐに作れますけど」
「……カップ麺にしちゃおうか?」
「アステル、ヤキソバ!」
「ぼく、トンコツ」
「私もトンコツかなぁ。ケイナちゃんはカップ麺する? サンドイッチか何か食べたいもの作る?」
「えっ……あの、ショウユいただいても?」
「いーよー。おにぎりも作ろうか!」
二個ほどラップを掛けて主寝室のバウンティにも届けた。
ご飯を食べた後はのんびり荷物の片付けをしつつ、ケイナちゃんに買って来た色んな物の説明と説明書きをお願いしていた。
――――コンコンコン。ガチャッ。
「ジュド様方がいらっしゃいました」
玄関から声がしたのでビックリしたけど、玄関に警備の人雇っていた事を思い出した。
「おひさー。また色々買って来たねぇ」
「イオー、アステルー、おかえり」
「マシュ! おみやげ、いっぱいあるのー!」
「ほい、これマシューくんのお土産です」
「「多い!」」
――――ですよねー。
「いやはは。愛が溢れまして」
「まぁ、ありがとう? かしら?」
「あはは。お礼を言われるとこれ渡し辛いなぁ……」
ジュドさんにバウンティからの紙袋。
「うおっしゃぁ! 流石バウンティ。解ってんじゃぁーん!」
「…………」
リズさんのジト目が痛い。
「……すみません」
「はぁ。何なのかしら、バウンティがアホに感じるわ」
「いや、アホですよ。わざわざ注文までしてましたもん……」
多少どころか全力でかぁさんも加担していたけど、ソコは伏せておこう。
「ねー、カナタ、話って何?」
「あ、テッサちゃん! ノランくんも、ちょっと座ろうか」
リビングのテーブルに二人を呼ぶ。ジュドさんとリズさん、ジョシュくんとユーリちゃん、クリフくんにはそれぞれにまたお土産を買って来たのでそれぞれにコーナーを作ったので、勝手に開けて見ててと丸投げする。
「テッサちゃん、前に二人で住める家を探してるって言ってたじゃん?」
「うん、なるべく中町に近いところで探してるんだけど、予算が合わないまでは話したっけ? 何かいい物件でも見つけたの?」
「個人的にはいい物件だと思うけど……退去までに少し時間が掛かるかもなんだよね」
「へぇ。どのくらいですか? 俺達的にはあと半年が目安なんですけど」
テッサちゃんもノランくんも、いい物件に巡り合いたいから、と時間を掛けて探すとは言っていたけど、期限は半年程度にしたようだ。不可能では無いかな。何せ私はその日に家を買えた実績があるし!
「ここ、どお?」
「「は?」」
ポカーンである。二人とも埴輪の様にポカーンとした顔だった。
「いやね、引っ越す事にはしたんだけど、この家をどうしようかって話しててね。売るか、そのまま空き家として保管していつか使うようにしておくか、で迷ってたの。で、二人が賃貸で探してるって言ってたの思い出してね!」
「カナタ、その前にここ、中町だよ!? 私達カッパーは住めないよ!」
「大丈夫!」
そこはちゃんと調べた。そもそも、そのルールがあった事を忘れてたけど。バウンティと住む為に家を買った時、私はカッパーだった。でも、バウンティと結婚するという話が巡りに巡っており、不動産屋さんからは役場の方に購入申請と法的な確認がされていたそうだ。
――――翌日、既にカリメアさんにバレてて、しかもキレてる訳だよ。
あの時、婚姻申請の許可が下りていたからこそ購入出来たのだそうな。
そして、現在の家主は私である。その家主の許可があればどのような立場の人にでも賃貸可能なのだそうな。
家主の信用問題もあるらしいのだが、私の地位なら百パーセント問題無いらしい。
因みに、テッサちゃん達が外町で探している理由は中町の家賃がパない為。我が家より、狭い、小さい、ボロい、の三拍子の家でさえも家賃が月で金貨三十枚なのだそうな。
「家賃、月で金貨五枚で、いかがでしょうか?」
「「ハァァァァ!?」」
「カナタちゃん、ちょっと待って!」
「ちょ、俺もその話、参加したい!」
「え?」
ユーリちゃんとクリフくんに待ったがかけられた。ジュドさんは気付いたら横に座っていた。
ユーリちゃんとジョシュくんも二人で住める家を探していたそうだ。クリフくんの方は、仕事も収入も安定して来たので父親と引っ越しをするか話し合っていたそうだ。
「ケイナちゃんはどーするの? 帰り道とか、家とか、ストーカー紛いのから守ってたんでしょ!?」
「うん。ケイナも家を出たいらしくて、ルームシェアとか、ハウスシェアとかで探してるらしいの! ここ、三部屋あるし!」
クリフくんと床にしゃがみ込んで小声で話す。
「それ、先ずケイナちゃんの意見聞かないとでしょ!?」
「…………全部整えてから……言う」
「ちょ、クリフくんもストーカー紛いになってるよ!」
「なっ、酷い!」
「二人とも何やってるんですか?」
「「ヒギャッ!」」
小声でワーワー言ってたら真横にケイナちゃんが立っていた。
「クリフは冷たいお茶でいいんだよね? カナタさんも冷たい麦茶、席に置いてますよ」
「う、うん」
「ありがとー、ケイナちゃん」
取り敢えず席に戻る。
「ほぼ聞こえてたけど内緒話終わったぁ?」
「さーせん、終わりました。あれ? ジュドさん議長な感じ?」
「俺が一番中立でしょ?」
何故か『この家を借りたい! アピール大会』に発展したらしい。
取り敢えずクリフはケイナちゃんに賛同してもらわないと参加させない。
クリフくんとケイナちゃんがリビングの隅で二人でモショモショ話している。
――――ズパァン。
「痛っ! ケイナ! 行儀悪いから!」
クリフくんがケイナちゃんにモモパンもとい、太股へのローキックをされていた。
「何かムカつくわー。でも、条件いいし。まぁ、良いわよ」
「ホント!? やった! えへへへ」
クリフくんがケイナちゃんの手を引いてテーブルに戻って来た。
「俺達も参加します!」
クリフくんがニコニコしてて可愛いので頭を撫でているとケイナちゃんに甘やかさないでと怒られた。家主シューンである。
何か皆がやいやいアピールするが、面ど…………ゲフンゲフン。甲乙付けがたいので、ジャンケンでとなった。元々テッサちゃんに持ち掛けた話だけど良いのかと聞いたら「いいよ、皆友達だし。こういうの運って言うか運命的なのもあるし」と優しかったので頭をナデナデしておいた。
「そう言えば、家主は貸すにあたって何か注意や求める事は?」
「あー! ごめん言い忘れてた。家具はほぼ間違いなく置いて行くので気に入らなかったら処分してね? たぶん冷蔵庫と洗濯機も置いて行くかなー。あと、出来れば土足禁止を続けて欲しいかな? 別に強制じゃ無いけど」
「はい、えー、更に好条件が加わりました」
どこが好条件なのかと思ったら、家具家電付きでしかも殆ど高級なやつとの事だった。
「や、家具は元々備え付けだったし。冷蔵庫も洗濯機も中古だよ?」
「はい、えー、常識がズレた家主は放置して! ジャンケン大会じゃー!」
「「おー!」」
六人全員でサドンデス方式の勝負。同チームでの出す手の打ち合わせは禁止にした。
一回目、全員バラバラ。二回目、またバラバラ。三回目、テッサちゃんとノランくんとクリフくんが残った。
「おおっと、これはクリフ陣営は窮地に立たされましたねぇ。我が妹夫婦は情けなくも同時敗退です」
「そうですね、しかし勝負の方法はジャンケン。しかも、同チームでの相談は禁止しています。起死回生の可能性はまだまだあります」
「おっと、解説のカナタさん、そろそろ四回戦目が始まろうとしてますよ」
「……楽しいの?」
ジュドさんと解説ごっこしていたら、子供達の面倒を見てくれていたリズさんに呆れられた。
因みに、楽しい!
「「ジャンケン、ポン!」」
「だぁっしゃぁ!」
勝利のガッツポーズ。
「なななんとぉ、初めから勝者は決まっていたかのようだぁ! 勝負の女神が微笑んだのはテッサ、テッサちゃーん!」
「流石、強運の持ち主ですね。一時は娼館でも良いとか馬鹿な事を言った割にきちんと生計を立てて、慎ましく生活しているテッサちゃんが優勝ですか。なかなか感慨深いものです」
「ちょ、カナタ! ソレをネタにすんなって!」
テッサちゃんが真っ赤になって恥ずかしがっている。
「トガって、イキがってた事も認めないと大人の仲間入りは出来ないんだぜ」
ジュドさんがテッサちゃんの肩をポンッと叩いて渋い風の顔をしている。
「アイツはどこ目線で話してるのかしら?」
「ジュドさんにトガってた頃とかあるんですか?」
「無いわよ」
――――無いのかよ。
取り敢えず、貸す相手は決まったので、お家探しをしなきゃだ。バウンティが復活したら不動産屋さんに行こう。
バウンティは寂しく二階でおネンネ。




