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158、ただいま!

 



 日本観光最後の朝、皆でゆっくりお茶。朝ご飯はオエオエするから無し。服装もラフに。


『なーんか、締まりが無いのぉ』

「いや、寝込むだけじゃ無いですか」

「ゲロ袋も用意してるし。握って帰国……ぶふふふ」


 かぁさんのツボに入ってしまったらしい。震えて机に突っ伏している。


「奏子さん……。袋作ってたのは優しさじゃ無かったのかぁ」


 昨日の夜、ビニールの中に新聞紙を敷いてゲロ袋を作ってくれたらしいが、優しさ半分、面白さ半分だったようだ。ちょっと最低な母親で申し訳無い。

 

『ソウコ、リュウタ、とても楽しかったわ。リュウタは仕事があるから難しいだろうけど、こちらの世界に来たら全力でもてなすわ……と、言っても技術も文化もこちらには届いて無いものばかりだけれど』

「ありがとうございます。いつか、必ずそちらにお伺いします。それと、それぞれの文化にはそれぞれの良さがあると思います。奏多が言ってましたよ、ローレンツは空気や水が物凄く美味しいし、海は感動するくらい綺麗。何より、夜は静かで夜空には星が溢れかえっていると」


 そうなのだ。工業が発展していないし、車も外灯も少いから夜は静かだし、海に人工的なゴミが浮いて無いのだ。


『あら、カナタはそんな事言ってたの?』

『確かにのー。発展して先ず犠牲になるのは自然じゃのぉ』

「はい。海も空も綺麗で、友人もいっぱい出来て、フィランツ王国が大好きなんですよー」


 バウンティがヒシッと抱き付いて来て小声で『俺は?』とか場違いな事を聞いてきたので、ひっぺがしながら「バウンティが一番ね」と小声で答えておいた。

 

『全く、目の毒ね……。さっ、帰りましょうか』

『そうじゃの』


 先ずはゴーゼルさんとカリメアさんをシュトラウト邸に連れて行く。その後、私達は私達の家に。


「じゃ、行ってきます!」

「うん、気を付けて……ってのも変だけど。気を付けてね」

「荷物届いたらメールするからね」

「よろー」

『世話になった』


 珍しくバウンティがとーさんとかぁさんにハグをしていた。そして、アステルとイオも半泣きで抱き付いていた。


『またきていい?』

『いい?』

「うん、いつでもおいで」

『『うん、バイバイ』』


 手を繋いで、皆で目を閉じる。目を閉じていた方が酔いが少いとホーネストさんが教えてくれた。一度目を開けたまま飛んでみたら時空の歪みで眼痛が凄かったのだ。


 ――――ローレンツの家へ!







******

******







 ――――ドサドサッ。


「「ただいまー!」」

「オゲェェ…………ウグゥッ……」

「「ゲロゲロだね?」」


 やはりバウンティ一人ゲロゲロ星人になった。アステルとイオはピンピンしている。


「……ウグッ……トイレ、行っでぐる……」


 バウンティはフラフラと消えて行った。


「カナタさん、お帰りなさい。皆さんは二時頃来られるそうです」

「ただいまケイナちゃん、皆に連絡ありがとうね。あ、荷物も展開してくれてたんだ! 助かるー」

「あー……昨日の夕方、イーナさんとシエナさんが苦笑いしながら来て助けに来てくれました」

「おっふ。後でお礼言っとく」


 カリメアさんが買った反物とか運んだ後かな。シュトラウト邸のメイドさん達が「お土産は嬉しいけど、またこんなに……」ってショゲてたもんな。

 私は全部リビングで荷物展開派だけど、カリメアさんは荷物を各部屋にって指示していたのだ。アホみたいに広いので運ぶのも大変なのだ。重いのはゴーゼルさんに運んでもらえば? と言ったら全員に怒られた。なけなしの威厳が無くなるそうだ。それ、もう威厳が無いって言ってないかな? とかは言えない雰囲気だった。


「朝ご飯、お願いしていい?」

「はい、キノコと野菜のゾースイと軽いおかずを用意してます。すぐ運びますね。バウンティ様はどうしましょうか?」

「んー、部屋で寝るだろうから放置でいいよ」

「解りました」


 どうせゲロゲロ星人継続だろうし。




 ご飯食べた後は今回買って来た物で、それぞれ用に箱詰めしていく。


「キーラ様にあげる分はこれで全部かなぁ?」

「おそろいのくつとー、アクセサリーとー、おもちゃとー……うん!」


 詰め込んで行く途中で気付いた。


「いやー、流石にマシューくんにあげる物が多すぎるね……」

「マシュ、いっぱいあげるの」

「マシューへのあいは、いっぱいなのー」


 愛用になりつつある特大キャリーケースにパンパンになった。ジュドさんも来てくれるらしいけど、家電類もあるし後でラウルさんにお願いしないと駄目だろうな。

 カリメアさんからもお土産があるらしいので、受け取ってからサクッと届けよう。


「……酔わないし、着いてくる……よね?」

「「いくー、いくー!!」」

「おーけー。ちょっくらシュトラウト邸から荷物受け取って来るから、バウンティに報告しといて?」

「「イエッサー」」


 


 シュトラウト邸から戻ると、リビングのソファにバウンティがぐったり倒れ込んでいた。流石に着いては来れないので見送りだけするそうだ。


「お昼には帰って来るからね。行ってきます」

「ん」


 ――――王城のパーティー用サロンへ!







******

******







 ――――ドサドサッ。


「いだだだ」


 相も変わらず、お尻着地。アステルとイオは両手を横に広げ、体操の十点満点みたいな着地をしていた。


「何度見てもいきなり現れるな」

「ウォーレン様、おはようございます! ちょっくらもう一往復して荷物持ってきます」


 一度では運べなかったのだ。


「うむ、では戻ったら皆をこちらに移すとするか」


 流石に転移する場面を何度も見せるのも……と言う話になり、一旦大サロンでお茶をしてくれているらしい。




「おはようございます! お久し振りです」


 それぞれに挨拶するのは面倒……ゲフン。大変なので、配給制にする。


「先ずは王様、結石用のお薬とお茶と痛み止め、服用方法はバウンティが書いてるんでそれ読んで下さい。あと、ダウンはカリメアさんから。老眼鏡はゴーゼルさんから」

「結石のっ!! 感謝する!」


 王様は物凄い勢いで服用方法の紙を読んでいた。また出来てるのか? まぁ、いいか。


「はい、次。フォード様とキャシー様、ウォーレン様とサーシャ様」


 フォード様とウォーレン様にはバウンティから薬局の紙袋……。キャシー様とサーシャ様には、私とカリメアさんから美顔になるローラーと化粧品、柄なワンピース、スキニーパンツ、ミュール、運動靴。


「何か、我らだけ妙に少なくないか? 紙袋?」

「あ、出さないで!」


 全く。なぜに私が説明しないとなんだ。二人に近寄り小声で話す。


「バウンティがアホの伝道師やってるんですけど……ハァ。まず、男性用の避妊具。サイズは知らないから各種。……大人のオモチャも入ってるそうです。使い方はニコニコしながら書いてましたんで、女性や子供のいない所で確認お願いします」

「……我々は少し話し合う事がありますので、少しの間控えの間に下がらせて頂きます」


 フォード様とウォーレン様が二人並んでササササッと消えて行った。


「あ、ダニエレくん」

「おう。何だ?」

「君もこれを持って控えの間に行っておいで。アホの伝道師がダニエレは特別だとか何か言ってたよ」


 王族二人よりも妙に大きめの紙袋を渡す。中身は知っている。なぜって、夜中にかぁさんとバウンティがネットで注文していたから。私ととーさんはドン引きで見ていた。


「お、おぉん。俺にまであるのか。ありがとうな?」


 ダニエレくんは良く解らなさそうな顔をしつつ控えの間に早足で消えて行った。


「次、エズメリーダさん! こっちゃこーい」

「はいはい。何よ?」


 エズメリーダさんには私からワンピースやラフな部屋着やダウンなど、下着、ミュール、インスタントカメラと専用フィルム。気が早すぎる気はしたけど、かなり高機能なベビーカー。


「凄い量ね……ありがと」

「ベビーカーは状況によっては嫌みっぽくなるかもと思ったけど……開発の為に何個か買って来たから、エズメリーダさんの物にしてもいいし、開発に回してもいいってカリメアさんからも言質取って来たよ。開発、販売する時は王都限定にして頂戴ってさ」

「っ……ほんと、カナタは甘いわね!」


 ツンツンしてるけど、頬を染めてるので嬉しいのだろう。ツンデレご馳走さまです。


「ふぇーい。次はお子ちゃま達ー」


 皆がサカサカ歩いて来たかと思ったらヨージくんとキーラ様は普通に座っていた。


「こら、そこの二人もお子ちゃまですよ!」

「「えぇぇっ」」


 なぜにビックリするのだ。子供だろうに大人振りおって。フェイト様なぞルンルンで一番前に並んでるのに。見習いたまえ。


「はい、フェイトさまー。あのね、おそろいなんだよー」

「む、イオとお揃いか。……何だと! このブロックも我が物か!」

「これ、ヘラちゃんのはこだよー。おそろいいっぱいなの!」

「む! 何だこのキラキラの靴は! クリスタルか!?」

「あ、クリスタル風ね。風! 女の子は皆でお揃いのやつだよ」


 後ろで羨ましそうに見ていたオルガ様とキーラ様とミレーヌちゃんがパァァっと笑顔になっていた。クリスタル風のサンダル人気な様でよかった。

 そして、なぜかキャシー様とサーシャ様も羨ましそうにしていた。

 ヨージくんやフィリップくんにもお土産の箱を渡し、最後はオスカーさん。


「私、凄く場違いな気がしておりましたが……」

「オスカーさんには滅茶苦茶迷惑かけたし、バウンティの記事も助けられましたもん! って事で、私とカリメアさんからデジタル一眼レフカメラとプリンターと写真用の用紙。インスタントカメラと専用フィルム」

「っ、これは…………ありがとうございます!」


 オスカーさんが一眼レフを全方向から眺めて大興奮していた。設定はとーさんが、簡単な使用書はバウンティが書いてはくれたが、説明は私なのがちょいと不安。

 一度一眼レフを借りて、皆がそれぞれのお土産を見せあいっこしている写真を撮る。


「ほんでー、ここのボタンが転送なんですけど、プリンターとコネクトさせてるので、ここをこーして、サイズを選んで……ポチっとな」


 ――――ウイーン、シュッ。


「はい。出来上がり!」

「「…………」」

「「ハァァァァ!?」」


 えー、皆がプリント出来た写真見て、軽く怒られました。なぜだろう? 技術の進歩が何百年もとか聞こえた気がするけど気のせい気のせい。カリメアさんの許可あったし。そもそも、選んだのカリメアさんだし。ワタシ、シラナーイ。

 アステルとイオがちょっとだけ皆と遊びたいと言うので、一時間の許可を出した。




 バウンティは時々だが、アホの伝道師になる。

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