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151、成長

 



 部屋に戻り、子供達が寝静まってから、バウンティがリビングサイドのソファに座り横をベチベチと叩いて来いと言うアピールをしてくる。

 何を話したいのかは解っているが問うてみる。


「どーしたの?」

『…………ケチ』


 まだ言うか。あと、ケチとかケチじゃ無いとかの問題では無いのだ。海外では一時期、小学生が妊娠するのが流行ったとか理解しがたいニュースがあった。クラスだか学校の中で早熟がステイタスみたいな流行りがあり、避妊せずに事に及んだのか、避妊を知らなかったのかは解らないが、倫理観が崩壊していた事件だった。

 小さなコミュニティでは浸透するのも早いから怖いのだ。

 ローレンツで保健の授業を初めて五年、最近は捨て子が少し減ったと聞いている。授業に参加した中の希望者には避妊具やアフターピルも無料配っている。

 配る条件は、色々と取り決めている。年齢確認はもちろん、講師による簡単なアンケートとカウンセリングなど。

 授業代は無料、運営資金は市の予算と寄附で。私とバウンティそれぞれのプレートからも年単位で一定額の寄附をしている。

 色々としていても、子供が捨てられているし、孤児院への相談も無くなりはしない。


「バウンティ、寂しいのは解るけどさ、子供達の事も考えよう? カリメアさん達と入らなくなったのは何で?」

『……』

「色々と気付いたか、気付かれたかしたんでしょ? バウンティは環境もあって慣れてただろうし、自制も出来てたんだろうけどね?」

『……ん』

「興味が出るまでスルーして、スルーし続けて、『あ、しまった』になってからじゃ遅いでしょ?」

『……ん、そうだな』


 しょんぼりしてるけど、やっとこさ納得はしてくれたらしい。子供が大好きになってくれたのは嬉しいけど、極端なんだよなぁ。まぁ、可愛いかな。と横に座っているバウンティの頭を撫でていると、むぎゅっと腰に抱き付いて膝枕で寝転がりだした。


「どーしたの」

『……難しい。この前までは早く大きくなって欲しかったけど、このままでいて欲しい気持ちも出てきた』

「あー。解るー。いつでも、今が一番可愛いって感じるよね。だけど、大きくなったら一緒にやろうって思う事も増えて来て、早く大きくなって欲しいなとも思うよねー」


 アステルが初めて立って、一歩二歩と歩いた瞬間、今が一番可愛いと思った。走れるようになったら公園で追いかけっこしたいな。とか思いを馳せもした。

 

『はぁぁぁ。こんなに色々と考えなきゃいけないのか……親って凄いな』

「うん、凄いよね!」

『…………カナタ』


 急に真剣な顔で見上げて来たけど、所詮膝枕。あまり威厳は無い。


『ありがとな』

「へ?」

『家族になってくれてありがとう。あと、怒ってくれてありがとう。教えて、諭してくれてありがとうな』

「えっと、うん。バウンティも色々と考えたり、努力してくれてありがとうね」


 なんだか死亡フラグを立てたような会話だけど、大丈夫なんだろうか。そんな事に気を取られていたら、チュッと軽く唇が合わさっていた。軽いキスを何度かやって、ベッドに入りに、他愛もない会話をしながら眠った。





 ――――チュッ。


「バウンティ、朝だよー」

『ん』


 昨日は穏やかな雰囲気でしっかりと寝られたので妙に眼がランランとてしている。

 子供達も起こして、昨日やっていなかった荷物を纏めて、チェックアウトに備える。

 朝食は出るので、待ち合わせをしている一階の食事処に向かった。

 今日も昨日の朝食と似たような内容ではあったがそれでも美味しかった。蓮根の金平をポリポリと食べて幸せいっぱいだ。

 食事をしながら、帰りにどこかに立ち寄るか、真っ直ぐ帰るかなどを話し合っていた。


「あら、それでしたらお子様向けの体験が出来る所がありますよ?」


 食器を片付けつつ、食後のお茶を運んでくれていた旅館の人が教えてくれた。


「ここから車で二十分の所に牛の乳搾りや山羊の乳搾り、バター作りなどの体験が出来る農場と、そこの近くで八種類のぶどう狩りをやっている農家がありますよ。ぶどうの種類は時期によって増減しますけど……」

「ほうほう。乳搾りに、手作りバターかぁ……ジュルッ」


 お茶を飲みつつさっき教えてもらった話をしてみると、それぞれニヤニヤしだしたので、両方とも行くことに決定した。




「よーし、忘れ物は無いね?」

『『じゅんび、ばんたーん』』


 フロントに行き、追加の代金を支払って車に乗り込む。旅館の人達が玄関前で手を振って見送ってくれた。アステルとイオが千切れんばかりに手を振り返していた。




 日に日に遅くなっている……。

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