145、全力投球した。
空港から帰って来て、今日は家で夜ご飯を食べた。
カリメアさんが運動不足だから軽く走りたいと言われたので、子供達を寝かし付けた後、バウンティとゴーゼルさんとカリメアさんと私の四人で歩いて五分くらいの所にあるスポーツジムに行く事にした。
物凄く近所にあるのに利用した事は無い。利用する気も無かった。
「すみません、大人四人で一日体験したいんですけど――――」
『あら、滞在中に何回か来たいわよ?』
「えっ、何回も? ……あの、一週間程の滞在で何回か来たいそうなんですが……」
「でしたら、回数券のご購入がオススメですよ!」
簡単な入会用紙の記入は必要だが、回数券を十枚綴りで販売しているそうだ。
種類はジムのみ一時間、ジム+プールの二時間、など色んな種類があった。色々体験してみたいだろうから全設備使用可の二時間チケットを買うことにした。
「すみません、ホームステイ中なので、全員同じ住所で大丈夫ですか?」
「あー……うん、はい、大丈夫です」
何か仕方ない感が出たけど入会出来た。こういう時、身分証無しって辛い。
記入が終わり、回数券を購入して四枚渡すと、それぞれにビニールのリストバンドを付けられた。何のチケットかと、利用開始時間と終了時間が書いてあった。トレーニングウェアも借りられるそうだ。私とカリメアさんはティーシャツと短パンを持って来ていたし、バウンティとゴーゼルさんはティーシャツとラフなズボンを持って来てはいた。が、明らかにレンタルのトレーニングウェアの方が良さそうだったので迷わず借りた。男性のみ水着も借りられるとの事でバウンティがウキウキと借りていた。
施設内を一通り案内してもらった。
バウンティはプールへ行くそうなので更衣室などの使い方を簡単に再確認して、私達はジムへ向かった。
「カリメアさんはランニングマシン?」
『ええ! 確か、ここで画像を変えて――――』
ランニングマシンの正面には画面が付いており、ランニングスピードと連動した映像が流れるようになっていた。スピードと時間の操作も教えてもらっていたので放置でも大丈夫そうだ。
ゴーゼルさんは筋肉増強の器具で遊ぶそうだ。私も腹筋とか鍛えたいので、ゴーゼルさんが試すチェストプレスとか言う器具の近くにあるアブクランチなる腹筋をする器具でトレーニングする事にした。
「ふへぇふへぇぇ……」
『カナタ、トレーナー呼んでくれ。負荷を十キロ増やして欲しいんじゃけど』
「またですかぁ!? それ以上ムキムキになってどーすんですか……」
トレーナーさんを呼ぶと、トレーナーさん判断で更に五キロ増やしていた。
「あと十回やったら、少し休憩してくださいねー」
「言っときます」
トレーナーさんが他の人の所に行ったので教える。
『そうじゃの、喉乾いたしの!』
「……喉乾いたくらいなんですね。チッ」
『カナタ!? 何かやさぐれとらんか?』
「きのせいですー」
ゴーゼルさんと一緒に休憩ルームへ行くと、カリメアさんも後からやって来た。
『五キロ走り終わったから、エアロバイクだったかしら? あれに乗ってみたんだけど……楽しいわ! 凄く楽しいんだけど!』
「おおん。良かったっすね」
『ねぇ、カナタ…………』
何かカリメアさんがモジモジしている。汗かいて頬を染めて少し息を乱して……エロい。ものっそいエロいぞ! 直視出来なくて、そっと視線をずらしたらデレッとした顔のゴーゼルさんが見えたのでスンと冷静になれた。
「何ですか?」
『……エアロバイク? って、買えるかしら?』
「……」
『やっぱり高いわよね!? 凄く高級なのよね!? あー、でも欲しいわぁ……カナタ…………駄目?』
ウルッとした目で見ないで下さい。貴女の宝石のおかげで何台も買えます。いくらかは知らんけど。きっと買えます。そして、ゴーゼルさん、何で急にイスに座ったんですか? 何で足組んでるんですか? がに股派ですよね? え? 元気なんですか? とか色々色々言いたいけど。
「買えますよ。家に帰ってネットで見ましょう」
『まぁ! そうなの!? うふふふ。じゃ、私は他の器具も試して来るわね!』
汗をキラッと輝かせながら休憩ルームを出ていった。
「戻りますか……」
『……』
「……」
『ワシ、あと十分ほど休憩しておこうかのぉぉ……』
「……でしょうね」
ゴーゼルさんを置いてプールに様子を見に行った。
――――ザバンザバァン。
赤茶色い頭の人がバタフライで光速移動していた。
「バウンティ」
ちょっと小さな声で呼んでもビタァッと止まってこっちを向くので結構怖い。
『フハァッ……どうした?』
「楽しそうだね? まだ泳いでる?」
『ん、もうちょっとだけ。俺も少し走りたい。カナタは何してた?』
「腹筋。あと、足で重りを動かすやつ。脱プニプニ」
『短期間じゃそんなに効果は出ないぞ?』
「うっさい、ハゲ!」
『ハゲてねぇよ』
「ふんだ。ジムに行ってるね」
『ん!』
ちらっと休憩ルームを覗いたらゴーゼルさんはいなくなってた。
ジムで探すと、二人並んでペダルを踏んで昇降台運動的な効果の出そうな器具でトレーニングしていた。
「あー、これ太股が痛くなるやつだ……」
『負荷を弱めてやればいいんじゃ無いの?』
「……うん」
五分で太股がプルプルになった。
器具に標準五って書いてあったから四にしたのにだ。カリメアさんは何でやってるのかなと見たら七だった。ゴーゼルさんは十。
「……カリメアさんも脳筋だった」
『聞こえてるわよ! 大体、貴女が体力無さすぎなのよ!』
「そんなはず無いですっ! 友達の中では割りと体力ありましたぁ!」
一旦休憩ルームで休憩してから、体力測定コーナーに行っているとバウンティが来たので一緒にやることにした。
先ずは垂直跳び。腰にベルトを巻いて飛ぶやつ。黒板にバァァンじゃ無いらしい。因みに私の年齢での平均は三十九センチらしい。
・私、四十二センチ
・カリメアさん、五十センチ
・ゴーゼルさん、六十五センチ
・バウンティ、七十九センチ
「えっ、皆さん何かのスポーツ選手ですか!?」
「ええっと、海外の軍隊的な事している人達です……」
「えー! そうなんですか」
体力測定コーナー担当のトレーナーさんがびびくっていた。誤魔化し方が酷いが致し方無い。賞金稼ぎって何だってなるし。
次は握力測定。私の年齢での平均は三十から二十五キロ
・私、右三十四、左三十
・カリメアさん、右四十二、左四十五
・ゴーゼルさん、右百十一、左九十九
・バウンティ、右百二十九、左百八
「……ゴリラしかいない」
「ぶふっ……っ、すみません!」
「いや、ゴリラですよね? 私、ヘタレって言われたけど平均よりはいってますよね!?」
「はい、結構凄いと思うんですけど……比べる相手が……ね」
「ゴリラですもんね!」
「あははは」
『左弱い…………この機械欲しい』
「はいはい。後でね」
『ん!』
その後も前屈や上体起こしなどもしたが、私は平均程度、三人はゴリラだった。
シャワーを浴びて家に帰ったら布団にバタンと倒れて一瞬で眠くなった。
『カナタ、寝る前にマッサージしとかないとたぶん筋肉痛酷くなるぞ?』
「筋肉痛やだー、してー」
『ん』
バウンティが寝転がった私のふくらはぎや太股、背中、肩等をマッサージしてくれている途中で寝てしまった。夢現で明日お礼と謝罪をしようとか思った気がする。
子育てで体力は付いたはずなのに……。と凹むカナタさん。
暫くの間、公開時間が遅くなってます。




