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143、タワー!

 



 今日は朝からゴーゼルさんがソワソワ。子供達にまで感染してソワソワ。


『落ち着きなさいな』

『うむぅ』


 子供達には内緒にしているが、今日は日本で一番高いタワーと遊覧ヘリ、空港に行く予定なのだ。道順的にそう決まったのだが、空港が先の方が良かったような、そうでもないような。ま、いいかという気分。

 車に乗り込んでちょっと渋滞にはまりつつタワーに到着。スマホで下から見上げるようにして記念写真を撮る。


『みせてみせて!』


 見せてやると満足したのか早く中に入ろうと言い出した。昨日の残りの四十万ちょいと今日も下ろした五十万とで百万円近く持っている私としてはドギマギだ。人混み怖い。だがしかし、人混みに混じらないと入場券が買えない。あと、かぁさんは障害者手帳で割安だった。

 色んな施設利用料が安くなるので本人的には『儲けた!』って気分らしい。


「はーい、入りますよ。アステルとイオは手を繋いでね」

『またぁ? パパとつなぐ!』

『じーじ、だっこ』

「はいはい。よっ」


 イオはとーさんに抱っこをねだっていた。何でゴーゼルさんじゃ無いんだろうなと思っていたら『グランパ、こうふんしてる。いっしょにまいごなるの、ヤ!』と的確な判断をしていた。確かに今日のゴーゼルさんは危なそうなソワソワ感が出ている。


『ワシ、はぐれんぞ!』

「はぐれるに百円」

「あはは、はぐれるに一万!」

『俺、はぐれるに白金貨』

『あら、私も白金貨』


 ――――こんな賭けに百万円も賭けるな!


 とーさんが「賭けになってないよ」と笑っていた。

 



 タワー内で入場券を渡し、同フロアのおみやげ屋さんをちらっと覗く。


『お菓子がほとんどのようね』

『コレは何に使うんじゃ?』

「キーホルダー……って無かったですっけ?」

『あぁ! こんな主張の激しいのもあるんじゃの』


 確かに、十センチほどのマスコットが付いてるけどね。記念というか、思い出的な役目だと思う。

 ササッと見終わらせて展望台行きのエレベーターに乗る。


『なんのれつ?』

『イオイオ、みんなちいさいへやにはいってる!』

『ちいさいへや?』

『ぎゅうぎゅうだよ!』


 ――――ぎゅうぎゅうだろうね。


 暫くして私達の順番が回って来た。

 前の人達がエレベーターに乗り込んで行くのに続こうとしていたが、従業員さんにチラリと見られ話しかけらた。


「お連れ様は何名様ですか?」

「あーっと、そこの厳つい外人のオジサンまでです」

「すみません、次のでも大丈夫でしょうか?」

「大丈夫ですよー」


 従業員さんがお辞儀しながら頭を下げて後ろにいたカップル二組を先に乗せた。


『……厳ついオジサン…………ぶふふふっ』


 急にバウンティが吹き出した。仕方無いと思う。一番的確な例えだったと自負している。


『ワシら、なぜ追い抜かれたんじゃ? あの小部屋に入りたかったのぉ……』

『カナタ、なぜ何も教えないのよ!』


 うむ。説明が面倒なのと人の目が多すぎて日本語で説明してたら怪しいのだ。ふと、気付いた。バウンティに耳打ちして説明したら良いんだ。

 早速、バウンティに耳打ちするが、ふるふるビクッとして話が進まない。


「あー、バウンティ耳が駄目だったね。カリメアさん――――」


 カリメアさんに説明した。


『……あの小部屋はエレベーターと言って、上の階に機械で上がる道具。人数と体重に制限があり、オーバーすると警告音が鳴って恥ずかしい思いをする……確かにね。…………えっ、結構な重力がかかるから気持ち悪くなる人もいる!?』

『重力?』


 写真を見せて、上にある展望台を指差す。


「ここまでおおよそ一分で着くそうです」

『…………一分で!?』


 うむ。衝撃だよね。フィランツには高くて六階建てまでだった。ローレンツでは役場が一番高い建物なのだ。何度か高層ビルを見ては『この国の者は体力があるんじゃのぉ。上がるの面倒じゃ無いんかのう』とかぼやいてたが、体験してみないと解らないだろうからと説明を全くしていなかった。


「あ、乗りますよー」


 皆がキョドキョドとして乗り込む。見ていた時よりもぎゅうぎゅうに感じた。

 どうやらエレベーターには種類がありるらしい。私達が乗ったのは夏をテーマにしたもので、花火のイメージで内装が施されていた。エレベーター上部の画面には今何メートルか等が表示されていた。


『ママ、おみみがキーンてする』

「あー、鼻を摘まんで、ふんって鼻をかむ時みたいに空気を出してごらん?」

『ん……ふん! ブジュッ』

「…………はい、ティシュー」


 周りからクスクス笑われた。アステルめ。勢い良すぎだよ。

 一分も掛からず展望台に着いた。従業員さんに「走らないで下さいねぇ」と言われるのでゾロゾロ歩く。

 

「うあー、眩しい……」

『『…………』』


 全員が展望台のガラス越しに外を見ながら呆然としていた。

 今やっと、自分のいる高さに気付いたらしい。


『……凄いわね』

『あぁ。凄すぎるのぉ…………』

『まめつぶ』

『くるま、まめつぶ……ごまつぶ?』


 ――――いや、まめつぶでいいよ。


「あ、記念写真コーナーあるよ! 皆で撮ろう?」


 ちょっと高いけどカメラマンさんが撮ってくれるし、日付も入れて焼き増しもしてもらえるらしい。今日は晴れ渡っていて外も綺麗に見えるし、いい記念になる。


「はーい、撮りますよー! はい、終わりましたぁ。こちら引換券です」


 引換券を受け取った。直ぐに別の所にある受け渡し口で貰えるそうだ。皆には外でも眺めてるように言って受け取ってくる。

 支払いをして受け取って戻るとゴーゼルさんが何か騒いでいた。


『嫌じゃ! ワシ乗ったら割れるじゃろ!』

『グランパ、われない。へーき。のって!』


 何してるのかと近付いたらフロアの一部が真下が見えるようになっている場所があった。強化アクリルらしい。おおよそ三百メートル下が丸見えだ。

 アステルとイオは乗って下を見ていたけど、カリメアさんは普通の床から覗き込んでいた。ゴーゼルさんは子供達に一緒に乗ろうと言われて断固拒否状態だった。


「こらこら、嫌がる人に無理矢理は駄目だよ。バウンティと一緒に乗りなよ。写真撮ったげるから」

『…………』

『『パパもやだってー』』 

「チキンか。んじゃ、ママと撮ろう」


 ペイッと乗って下が見えるように自撮り。待ってた人に謝ってさっと退散した。ゴーゼルさんは何か腑に落ちない風の顔をしていた。


『カナタは平気なのか!?』

「平気ですよ。強化アクリルですよ? 巨大水槽にも使われてるんですから。数人の体重くらい何とも無いでしょ」

『そうは言ってものぉ。周りが壊れたりのぉ……』


 思いの外慎重派だった。バウンティも同意らしくブンブンと首を縦に振っている。小声で『怖いなら怖いって言えば良いのよ』とか聞こえたけど気のせいかな!? 気のせいにしておこう。




 その後、中のレストランでご飯を食べて、さらに上の展望台に上がって、子供達は更に興奮。


『たっかーい。おうちどこー?』

『ぜんぶ、ごまつぶ』


 イオは『ごまつぶ』が気に入ったらしい。お家は何なら砂粒くらいで見えません。ざっくりした方向だけとーさんが教えていた。


『どこから来たの?』

『にゅ? なに?』

 

 イオがふわふわ金髪少女から話し掛けられていた。


「どこから来たの? だって」

『ローレンツ!』

『ローレンツ? 私、知らないわ。どこの国? あなたフランス語が上手ね! 英語じゃ無くてもいい?』


 少女が視線をこちらに向けて言った事で「しもた!」と思ったが時既に遅し。色々悩んだ末に取り敢えず誤魔化す方向で。

 というか、十歳くらいなのにフランス語と英語が出来るのか! 頭良い子だな!


「英語のほーがぁ、話しやすい、ですぅ」


 他の人に聞こえないように少し声を落として、変なイントネーションにしてみた。そして、とーさんを手招きする。


『ねぇ、ローレンツってどこの国?』

「あー、なるほど。えーと『シチリア辺りです』」

『おー、そうなの! だから言葉が通じないのね! あなたは日本人よね? 英語が上手だわ!』

『そうです。ありがとう、お嬢さん』


 頑張れとーさん! って事で丸投げしていたら、少女が家族に呼ばれたようで手を振って走って行った。


「おつかれ! 流石とーさん!」

「……奏多、キラーパスが酷すぎるよ! 変な汗出たじゃないか!」

「さーせん」


 取り敢えず、シチリア辺りの案、今後の為に採用で。話し掛けられたらこの方法で行こうかなと思ったけどとーさんに睨まれた。あ、ちょっと怖い。

 会社で良く英語で話してるらしいし良いじゃんよと思ったけど、今回のようなキラーパスは駄目らしい。

 ちょっとだけ反省。




 子供達は透明な床にテンション駄々上がり。カリメアさんも誘ったが無言の圧力に屈したらしい。


すみません、暫く不定時更新です。

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