137、思い出すのはソレばかり。
百円ショップで爆買いした後、帰宅した。
『アステルとイオ、寝かせてくる』
「うん、お願い」
二人は車の中で爆睡してしまった。水族館でもパフェ専門店でも百円ショップでも興奮しっぱなしだったので疲れたのだろう。
「ボチボチ夕飯の準備するかぁー。カリメアちゃん達、体調万全じゃ無いなら、お昼寝しといたら?」
『そうね、ちょっと仮眠しようかしら』
ゴーゼルさんとカリメアさんも二階で、少し仮眠する事になった。
「おばちゃん、ご飯はリビングで?」
「そーねー。予備のテーブル二台出しといてー」
「了解!」
「……って! 何か葉子の方が娘っぽい! 何か手慣れてる!」
どうやら、私が消えてから、ちょくちょく友人達が纏めてお見舞いに来てくれたりの時、葉子がセッティングなどやってくれていたらしい。
「おっふ。大変お世話になりまして」
「いーえ。この前、ホーネストに助けてもらったのでチャラにしてあげるよ」
ここに来るちょっと前にホーネストさんと葉子の実家のワンコをビデオ通話で対面させた。
****** 回想
「ホーネスト様、よろしくお願い致します」
「うむ! 我が力、見せてしんぜよう」
『えっ、ホーネストってそんな話し方なの……取っ付き辛いわー』
「葉子だね、よろしく。カナタに付き合ってるだけだよ?」
「あれ? 何か目頭が熱いな…………」
『はいはい。そーゆーのいーから。はい、我が家の末っ子、ポメラニアンの三郎です。お座り!』
画面の中で三郎が横座りした。お座りって聞こえたのは気のせいだろうか。いや、座りはしたしアリ、なのかな?
「よー、三郎、よろしくな。俺はホーネストだ。お前、葉子が帰る時、引き止めてるらしいけど、何で?」
『キューン。ワフン。アゥアゥアゥ、ワゥン』
うん。ワウワウしか聞こえない。ってかこういう風に吠えるの? 普通に喋ってるの? 謎過ぎる。
「あー。なるほどね」
『何なに、ナニ?』
「群から二郎ってオスがいなくなって、葉子まで出て行って、どんどん寂しくなる。でも時々、葉子が帰って来る。けど、また出ていく。寂しい。だから、群に戻って来てってお願いしてたんだって。あと、二郎に帰って来てって言って欲しい、ってお願いもしてたって」
『二郎…………大好きだったもんね』
「二郎って?」
画面には三郎しか見えないけど、葉子の声が少し悲しそうな感じに聞こえた。前に飼ってた犬は違う名前だったし、メスだったしな。誰だ?
『あー、じーちゃん。三郎、じーちゃん死んだんだよ?』
『…………グルルル』
「死んでない、こんなに匂いするのにって…………あー。お前、気付いてるんだろ? ソレに関しては、もしかしては無いからな! ちゃんと受け止めろよ」
『キャウン!』
『あ、こらー! じーちゃんの部屋かなぁ。何か言ってた?』
三郎が走って逃げてしまった。こんな感じの時はおじいちゃんの部屋に逃げ込むらしい。
一昨年、おじいちゃんが亡くなったと聞いたのは覚えてる。遊びに行くとお菓子やお菓子やお菓子を大量にくれたおじいちゃん。柿ピー率が多かった。梅味やわさび味、チーズ味、チーズコーティングのやつ。黒糖味の『何か違う』感はおじいちゃんと爆笑しながら食べたのを覚えてる。おじいちゃん、二郎って名前だったんだ。
「柿ピー懐かしい」
『いや、じーちゃんを懐かしめ! 柿ピー野郎だったけどさ! 仏壇にも柿ピー常駐してるけどさ!』
「何味?」
「ひつまぶし味。お土産でもらった」
鰻の匂いなのかな? 蒲焼き的な匂い? ちょっと気になるな。
「えーと、三郎だけどさ、二郎とちゃんとお別れ出来てないの?」
『あー。うん。お葬式は斎場でやったから、三郎お留守番してたんだよね』
「ちゃんと、ゆっくり言い聞かせてあげてよ。すっごい寂しくて泣きそうなイメージが伝わって来たよ。あと、葉子は別の所には住んでるけど、ちゃんと群の一員だって言ってあげて」
『日本語ってか、人語でいいの?』
「うん。ちゃんと理解出来てるよ。目を見て伝えてあげて。二郎の事は何となくは解ってるんだよ。でも、まだ認めたく無いだけみたい」
『解った。言い聞かせるよ。ホーネストありがとうね』
「いーよー」
****** 回想終了
「……柿ピー食べたくなった」
「…………懐かしみ方っ! 可笑しくない!?」
「や、おじいちゃんのせいだって。尋常じゃ無いほど柿ピー食べてたし。私が悪ガキだったら間違いなくおじいちゃんのあだ名は『柿ピー』にしてたと思う!」
「…………まぁ、思うよね。私さ、じーちゃんにイラついて『うるさい柿ピー野郎』って言った事あんの。家族全員爆笑してたよ」
「ちょ! 皆酷い」
――――おじいちゃん、こんな思い出し方でごめんね。
天国で柿ピー食べているであろうおじいちゃんに謝っておいた。
「で、何の話だったっけ?」
「リビングで机の準備!」
「あはははは!」
『どうした? 楽しそうだな?』
子供達を寝かせて戻って来たバウンティがキョトンとして可愛かったのでナデナデしておいた。
『『いただきまーす』』
今日の夜ご飯はトンカツ、肉じゃが、ゴーヤチャンプル、にんじんシリシリ、わかめと玉ねぎの味噌汁、白米。
「全体的に茶色い」
「にんじんあんでしょーが!」
きっと、かぁさんも茶色いなと思ってにんじんシリシリ出したんだと思うけど。突っ込んだら更に怒られそうだから黙った。
『ん!? カナタ、苦いぞ! 毒か!?』
「あー、苦い瓜です。毒違います。瓜の苦味と卵の甘さを楽しむ炒め物です」
ゴーゼルさんはゴーヤは駄目だったらしい。カリメアさんは結構好きらしい。バウンティと子供達はゴーゼルさんの反応を見て手を出すのを止めたようだ。
ゴーゼルさんは見た事無い物を真っ先に食べようとするのは癖なんだろうか?
「見た事無い物を何なのか聞かずに食べるって勇気有りますよね」
『馬鹿なのよ』
カリメアさんが一言でぶった切っていた。
そして、今さら気付いたけど、皆床に座ってご飯食べてた! 初じゃ無いかな? 何も確認してなかったけど。
「あの、今更なんですけど、床で良かったんですか?」
『え? こうやって食べるって貴女が前に言ってたでしょ?』
「? 言いましたっけ?」
昔、日本の紹介動画やらを見せた時に話していたらしい。何か知らないけど昔の私、グッジョブ!
わさび味は時々泣きそうになる。ツーンじゃなくてヅーンってする。
次話も明日0時に公開です。




