135、水族館、後半戦。
水族館でショーを見終わり、お昼ご飯を食べる事にした、
「ここのレストラン、凄いんだよー」
「葉子、来たことあるの? 彼氏とかいたっけ?」
――――ドゲシッ。
「痛い! 脳みそ揺れた!」
全力チョップをくらった。お母さんと来たそうだ。
「……」
「謝られるのもムカつくけど、無言もムカつく!」
「さ、レストランにしゅっぱーつ!」
『『しんこー!』』
レストランはショーの会場から近かった。
それもそのはず、レストランはイルカのプールに併設されていたのだ。
イルカのプールは水深が八メートルもあり、下半分がレストランで食事をしながら見れるようになっているのだ。丁度お昼時だったので込み合っていたが、プールにくっ付いているテーブルに座れた。
アステルとイオはアクリルにベッタリと張り付いてイルカを見ている。
『あ、きたよ!』
『しゅごい、ぴゅーんてきたね!』
「ほいほい、先に食べる物を決めてちょ」
ファミリーレストラン系の食べ物が多かったが、ワンパウンドステーキとか、ガッツリしたものも多かった。
「えーと、役場の近くのレストランよりグレード二つくらい下げた食材……かな。金額としては、オムライス単品が銀貨一枚です。ちょい高めの設定かな」
お祭り料金と言うか、施設内のお店って妙に上乗せされた値段な気がする。
『この写真のオムライスで妥当だと思う値段は?』
「えー?」
周囲を見渡してオムライス食べてる人を探した。
「大きさ的には銅貨六枚が妥当かなぁ」
「えー、あたしは五枚だと思うわー」
『はぁ、ほんと金銭感覚が違うわねぇ。ここの入館料も私だったら金貨払っても良いと思うわ。まさか銀貨三枚もしないなんて』
「いやいや、金貨て。年間パスポート買ってもお釣り来ますよ」
『それよ、年間パスポートの安さも納得出来ないわよ! 年間よ!? 確かに、本人しか使えないとしてもよ!』
カリメアさんがプリプリしている間にバウンティは決めたらしい。
『このでっかいステーキと、イチゴパフェ! 可愛いな』
おっさんがパフェに萌えておりました。可愛いの意味は解らないが、パフェはご飯を食べ終わった後に頼むようにした。
子供達はキッズ専用の玩具につられそうになっていたが、食べ物の微妙さに悩んでいた。
我が家は置いておいて、シュトラウト家や、レストランのを食べ慣れた二人には微妙だろう。
「ふあぁ! 鯖の塩焼き定食!」
「また和風で来たね」
塩焼き! 皆に否定される塩焼き! どうだコラ! メニューに入ってるんだぞ! と熱弁したが、仲間は一人も現れなかった。なぜ日本組さえも引くんだ!
バウンティの生暖かい目が余計にムカ付く。
ゴーぜルさんは鉄板物、パスタ、おつまみの三種類を選んでいた。カリメアさんはボロネーゼドリアだそうだ。子供達はそれぞれ好きそうなパスタを選んでいた。
「いただきま――――うまし!」
「早っ」
一夜干しの鯖の旨味が凄い事。ホクホクなのにじゅわっと旨味がしみ出すのだ。ご飯がすすむ、すすむ。
バウンティはステーキだけで良かったのかなと思っていたら、子供達が残すであろうパスタも食べてくれるようだ。パフェも食べたいと言ってたから、残して良いとは伝えている。
「んー、みんなパフェ食べたいの?」
「うん。カリメアさんはゴーゼルさんのつまむくらい?」
『えぇ。その予定よ』
「ほんじゃあ、ここではちょっと我慢して、帰りにパフェ専門店に行くってのはどー?」
帰り道の寄りやすい所に数年前にオープンしたそうだ。パフェが三十種類以上あるんだとか。
葉子がスマホでメニューを見せてくれた。
『『ここいく!』』
『……パインある』
『あら、こっちの方が美しいわね』
『二個食ってええかのぉ?』
全員、そっちが良いらしい。バウンティはパインだけでなびくのね。チョロい通りすぎてないかな?
「バウンティ、知らない人がパインあげるからって言っても、ついて行ったら駄目だよ?」
『! 行かねぇよ!』
『ママ、このまえ、アステルにおなじこと、いってたー』
『ガキ扱いすんな!』
「いやさ、ちょっと本気で不安になったもので…………」
そんなこんなで騒ぎながらお昼は終わらせた。
少し食休みをしてから、水族館巡り再開。
ラッココーナーでは、雄のラッコと雌のラッコが手を繋いで浮いていて超可愛いかった。
『『ラブラブですなー』』
時々、アステルとイオがおっさん臭いのはなんでだろう? 私のせいではない。はず。
オットセイやセイウチコーナーを通り過ぎ、ペンギンコーナーになった。ペンギンがえっちらおっちら歩いてて萌えた。
日二回、水族館内を隊列組んでお散歩をするイベントもあっているらしい。三十分前に終わっていて見れなかった。
『ママー! でっかいカニ!』
「あー、タカアシガニだねぇ。カニが苦手な人でも食べやすいらしいよ」
『貴女、コメントが毎回食べる事に焦点が当てられてるわね』
「いや、可愛いとか、グロいとかも言ってますよ?」
食欲大魔人みたいに言わないで欲しい。
『このしゃしん、なに?』
「見付かったタカアシガニのギネス……えーと、世界で一番大きいやつの実寸大の写真だって」
『『実寸大!?』』
ゴーゼルさんもカリメアさんもバウンティもしげしげと写真を見詰めていた。
『後ろか爪をもぐ?』
『そうね。無力化するならそれしか無いでしょうね』
あ、脳筋なだけだった。カニって襲って来ないでしょうよ。知らんけど。
脳筋な三人を放置して次のコーナーへ。
「お、触って良いコーナーだって」
『ちびのサメいるよ!』
「背中をそっと撫でて良いですよって。撫でてみる?」
イオはプルプル拒否。アステルはコクコクやる気満々。
『ふおぉぉぉぉ、ざらざらしてるぅ!』
『ほんと?』
『うん! サメはだ! いみわかった!』
そういえば図鑑でサメ肌の説明読んであげた時『サメさわったひといるの? がぶーされるよ? あぶないよ!? どうやってさわったの!?』と、なぜなにの質問がしつこかったなと思い出した。触れて良かったね。
結局、イオも恐る恐る触っていた。
他にも、ヒトデを触れるコーナーもあってかなり楽しめた。
『はぁー、たのしかった!』
『かえったら、ずかん、みよー?』
『うん! おさらいする!』
真面目だな。てか、何がいたかとか覚えてるの? 誰の子だ!?
自分が産んだはずなのにちょっと不安になりつつ、水族館を出た。
『ん、熱いな…………パフェ日和だな!』
「えーえー、パイナップル日和ですね」
軽くバウンティをディスりつつ、パフェ専門店に向かった。
パフェ専門店、わくわくが止まらないバウンティ。
実は葉子が一番行きたかった。なので、水族館でのパフェを内心大慌てで止めていた。
次話も明日0時に公開です。




