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134、ショーを楽しむ。

 



 そろそろイルカのショーが始まる時間だ。

 場内放送が鳴り出し、ステージにお姉さんが出てきた。


 ――――パチパチパチ。


「こんにちはー! 水族館へようこそ!」


 アステルとイオは既にソワソワだ。ゴーゼルさんは無視でいい。

 先ずはアシカの芸。前ヒレと後ヒレをヨチヨチと動かし歩いて来る。踏み台の上に前ヒレを使いひょいと乗った。


『『ふぉぉぉ』』


 歩いて来ただけで興奮している。

 芸は続く、と言うか始まっても無いけど。前ヒレで全体重を支えたり、鼻の先にボールを乗せたりして拍手を誘った。


「さぁて、今からお客さんにお手伝いをしていただきましょう! 輪投げを手伝ってくれる人ー?」


 観客の子供達がキャアキャアと手を上げて参加表明している。もちろんアステルとイオも。ゴーゼルさんは無視でいい。


「そこの青い帽子を被った男の子と……一番前の列の、彼女と来ているお兄さん!」


 ステージに呼ばれた二人がアシカに向かって輪を投げる。


「三個ともアシカくんの首に入ったらプレゼントがありますよぉぉ!」


 会場から「おおぉ!」と歓声が上がった。

 先ずはお兄さんから。難なくクリアでアシカのぬいぐるみをもらっていた。

 次は青い帽子の少年。一個目はちょっと外れかかったが、アシカくんの合いの手でスポッと入り歓声が上がる。二個目は綺麗に頭に入った。三個目で結構な手前に落ちてしまった瞬間、「あぁっと、お姉さんの目にゴミが入って目が開けられないなぁぁ」とかわざとらしいセリフ。

 その隙にアシカくんが踏み台を降り、輪っかをくわえてクルリと回して自分の頭を入れる。そしてまた踏み台に登った。


「あー、目がぁぁ」


 などとお姉さんが適当な事を言っている。すると、アシカくんが「オゥオゥオゥッ」と鳴いた。


「え、あれ? 輪投げ終わってました? 私、目にゴミが入って見てなかったんですけどぉ。入りましたぁ?」

「オゥオゥオゥッ」

「え? 入ったの? オゥっとか言われても解んないんだけど」


 お姉さんの無茶振り。するとアシカくんが頭を下げて頷く動作をする。


「入ったの?」


 ――――コクコク。カランカラァァン。


「あ、入ったんだね。って、輪っか落ちたし! 少年もプレゼントゲット! はい拍手!」


 アシカくんと観客で拍手と爆笑の嵐だった。


『ふははは。このショーは面白いし、よう考えられておるのぉ!』

「臨機応変に対応も出来るみたいですねぇ」

『アシカ、かわいい!』


 アステルはアシカくんにメロメロのようだ。イオはキャハハハと楽しそうに笑っていた。


「さぁて、アシカくんの次は、セイウチさんの腹筋自慢コーナー」


 三メートルは越しているであろうセイウチが現れた。のっそのそと歩いて来る。

 こちらもお手伝いさんを募集しておじさんと若いお姉さんが選ばれた。

 先ずはおじさんから、セイウチの後ヒレを押さえて上げるとセイウチが本当に腹筋した。フンフンフンと。しかもおじさんの顔に妙に近付く。


「おおっと。セイウチくん、その勢いだとキスしちゃうよぉ?」

「ブフフン!」


 何か、結構な汁が飛んだ。


「あらぁぁ、男の人は嫌だと!?」


 ――――フンフンフン!


 セイウチくんが力いっぱい頷いた。会場中大爆笑だった。

 次にお姉さんの番になると、セイウチくんの腹筋のスピードが尋常じゃなく早くなった。


「おーっと。明らかにさっきのお父さんの時とヤル気が違います! 綺麗なお姉さんに褒めてもらいたいのでしょうか!?」


 またもや会場中大爆笑だ。そして、協力してくれた二人にセイウチのぬいぐるみを渡して、客席に戻る瞬間。セイウチくんがお姉さんの後に付いて行くというストーキング炸裂。トレーナーさんが止めてアワアワするという小ネタまであった。


『キャハハハ! パパみたい!』

『ママがみてるときだけ、はりきるやつね!』


 何か二人にディスられているが、まぁ間違って無さそうだしスルー。

 とうとう、大本命のイルカのショーになった。

 イルカは全部で六頭。バンドウイルカとカマイルカだ。

 バンドウイルカはたぶん一般的にイメージするイルカそのもの。頭は丸く口元で段になっている。口先は少し細長くなっていて突き出ている。口を開けると笑っているようにも見える。サイズは三メートル強で迫力がある。

 カマイルカは口先は少し細くはなっているが頭まで綺麗に緩やかなカーブを描いていて、段は無い。背ビレが鎌のような形になっているのが名前の由来らしい。サイズはバンドウさんより小さく、二メートル程度だ。小さいがバンドウさんよりジャンプ力があるようだ。


『ふあぁぁ! たかぁぁい!』

「おぉ、六メートルだって」


 バンドウさんは器用で、口先で小さなフラフープを回しながら尾ひれだけで立ち泳ぎして、しかも後退していく。


「さて、イルカさんと、パフォーマンスの協力をしてくれる人ー?」


 アステルとイオも『『ハイハイ!』』と手を上げていた。ゴーゼルさんは無視でいい。


「二番目の列にいる、赤い髪の女の子! あとは、そこのアロハシャツの男の子!」


 ――――二列目の赤い髪?


「あ、お母さんも一緒にどうぞ」

「ふおっ。アステルの事だったらしいよ!」

『きゃー、いくー!』


 アステルはイオとハイタッチして喜んでいる。ゴーゼルさんはへこんでいるが無視でいい。

 ステージに行くと名前を聞かれた。


「のぶです」

『アステル、デス!』

「のぶくんと、アステルちゃん、二人にはイルカさんにパフォーマンスの合図を送ってもらいます」


 トレーナーさんから三種類教えてもらい、先ずは男の子から。次にアステルの番。

 先ずはステージからプールの方に手を真っ直ぐ出して握手するポーズをとる。すると、プールからイルカさんがニュンと飛び出して来て、前ヒレでアステルと握手した。


『ふおぉぉぉ!』


 嬉しかったのだろう、なぜかその場で足踏みし、手は太鼓を叩くように上下でしゃかしゃか振っていた。

 次は立ち泳ぎの指示。両手で向こうに押しやる動作をすると、尾びれで立ち泳ぎをしてくれた。

 最後はジャンプの指示。右手をパーにして、左から右へ半円を描くように振った。次の瞬間、六頭皆で同時に幅跳びのようなジャンプ。壮観だった。


『ママママママ!』

「ハイハイハイハイ?」

『アステル、ちょーきょーしになった!』

「おぉん。よかったね」


 そして、協力してくれたお礼のプレゼントはバンドウイルカのぬいぐるみだった。


『アステル、かっこよかった!』

『ふふふん!』

「良かったねぇ」

『カナタよ。ずるいぞ! 付き添いならワシでも良かったろう!?』

「いや、ゴーゼルさん、通訳出来ませんやん……」

『カナタ、カナタ! ちゃんとムービー撮った!』


 うむ、流石バウンティ。褒めて欲しそうなので頭をナデナデしておいた。

 ショーが終わって、かぁさん達と合流。


「やー、アステルが変なダンスをする度に周りがクスクス笑ってて微笑ましかったよ」


 やっぱ笑われてるのか。歓喜のダンスらしいく、本人はいたくお気に入りの模様なので放置でいいだろう。

 ショーを見てお腹も減ったし、ご飯を食べる事になった。




 水族館に行きたくなったけど……ね。

色々と大変な事になりましたねぇ。仕事が忙しくなった方も、仕事が出来なくなった方も、無理せず、お過ごしください。


次話も明日0時に公開です。

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