130、到着!
日本観光リストを作り上げ、バウンティの夜の誘いをちょいちょい受けつつ流しつつ、気付けば出発前夜。
不在時もケイナちゃんは来てくれるそうだ。買ったものを途中で運ぶのでいてくれるととても助かる。一応、警備はいてもらうけど、アダムさんとクラリッサさんも顔は出してくれるそうだ。
ご飯や宿泊は自由にどーぞと伝えている。
「ママママママ!」
「ハイハイハイハイ?」
「こうふんして、ねむれない!」
「おぉん。そんなときはー、てってれー、五分で眠くなる、絵本の読み手、バウンティマン!」
「「バウンティマン!」」
「ん、ベッドに入れ」
「「はーい」」
――――ふっ、ちびっ子よ。チョロいぜ。
流石はバウンティの子供だ。寝かし付けている間に荷物の最終チェックをしておこう。まぁ、忘れても取りに来れるけど。旅行って雰囲気は大切なのだ。
荷物のチェックを済ませ、部屋に戻るとバウンティは既にベッドに入っていた。まだ八時ですぜ旦那さん。
本を片手にベッドに向かうと、本を投げ捨てられた。そして、ギュウギュウに抱きしめて頬にキスされた。
「……何日寝込むだろうな」
「うーん。子供達の体力の問題もあるしね、三日は確実かな? バウンティは根性で動いてただけでしょ?」
「ん。でも毒のやつのせいもあったからな、微妙だな。飯は食べずに行くんだよな?」
「うん。あと、吐く用のビニールも準備してもらってる」
「……ふ、ふはっ、ふははは! 確かに、必要だな」
前回、テーブルの上にあったお菓子入れを使ったもんで、かぁさんがションボリしていた。『何となく使い辛い』と棚の奥底に仕舞い込んだらしい。申し訳ない。
「そう言えば、宝石は結局どうなったんだ? 何か、追加で持って行っただろ?」
とーさんの友達が宝石商の友達を紹介してくれて、その宝石商の人と仲良くなったらしい。
持ち込んだ物の出所は色々と伏せてはいるが、決して犯罪的な物には荷担していないと話したそうだ。双方の友人の人となりも加味して信用はしてもらえたらしい。有り難い事に、詳細は聞かずにいてくれるらしい。
そして、石の質やカット技法が素晴らしいので、ジュエリーになったものは無いのかと聞かれたそうだ。バウンティは裸石しか持ってなかったのでカリメアさんに話したら『あら、私達の旅費の捻出なの? コレとコレと――――はい、これね。使わないから持って行きなさい』と指輪やネックレス、イヤリング、ブレスレット等を十個ほどポイポイ渡された。
「いや、あれは恐ろしかった。あんな高価な物、ジャラジャラ持つとか……失禁しちゃうよね」
「失禁好きだな」
「いや、まだしてないし、する趣味も無いよ!?」
例えなのだよ、例え。
話を戻そう。それで、一応とーさんに届けた。買い取られなかったのは好きにしていいと言われた。ふと指輪が気になって指に填めようとしたらサイズが変わった。全員一致で指輪は売ったら色々マズイとなったのでカリメアさんに戻した。かぁさんは死蔵させるし、あんな怪しい機能、バレたら怖い。
後日、宝石商さんに見せて見るとの事だった。それから結果を聞こうとしたが『来た時のお楽しみ』と言われたのだった。
「お楽しみって言ってるくらいだから多少のお金にはなったんだろうけどね?」
「世界が違うからな。上回るのか下回るのかも解らんな」
「ネットで見た限りでは確実に下回ると思ってるんだけど……」
出所不明の宝石とか怪しすぎるらしいし。
みんなが楽しく過ごせる資金くらいになればいいなと思っている。貯金もまだ残ってるから、そっち使っても良いしね。
朝、張り切って起きて、バウンティにキス。子供達の仕度をし、準備万端。
朝ご飯は食べず温かいお茶を飲んでいるとゴーゼルさんとカリメアさんが来た。
「おはよう、準備は出来てるかしら?」
「「はーい!」」
コップを片付けてリビングで準備する。子供達は自分でリュックを背負って、全員で丸く手を繋ぐ。右手にはキャリーを持ったバウンティの手首、左手は同じくキャリーを持ったゴーゼルさんの手首。
「ほんじゃあ、行きますよ? 手はしっかり握りましたかぁ?」
「「はーい!」」
「ええ」
「ファッハッハ!」
「ん」
ゴーゼルさんのテンションが可笑しいがスルーで良いんだろうか。まぁ、いいか。
目を瞑り、両親に宣言したとおり、リビングの開けた場所を思い浮かべる。
――――さあ、出発だ!
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――――ドサッ。バタバタッ。
「いたたたぁぁ」
今日も今日とてお尻で着地。いつか痔になるんじゃなかろうか。
「ふぁー、本当に皆現れた!」
「ん? 葉子?」
「おっひさー。はい、ゲロ袋」
――――そうだった。
「アステル、イオ!」
『『なに?』』
キョトンとした二人が立っていた。
「あれ? 平気? オエオエしない?」
『『しなーい』』
「お?」
『カ、ナタ……吐くわ』
「あ、はい! コレに存分ゲロって下さい」
アワアワとゴーゼルさん、カリメアさん、バウンティに中に新聞紙を敷いたビニール袋を渡す。
葉子がそっと窓を開けに行った。そして三人の回りに消臭スプレーを振り撒いている。
――――鬼かな?
「アステルと、イオ?」
『ソウコグランマ?』
『ソウコグランマなの?』
「うわぁぁ! 本物プリチー!」
かぁさんが半泣きで二人を抱き締めていた。その側でゲロゲロする大人三人。スプレー撒くやつ一人。水を渡すとーさん。
完全なるカオスだ。
なぜか平気だった子供達。血かな? と適当に納得するカナタさん。
バウンティは子供達が本気で羨ましかった。
次話も明日0時に公開です。




