129、観光リスト作り
誕生日の翌日はいつも通りマシューくんを預かる。リズさんに力いっぱい謝った。そして、十九日から暫く留守にする事を伝えると予想外の返事が返って来た。
「王都に行ってる間、特別任務してたじゃない?」
「ぼく、すごいがんばったよ!」
「うん、いっぱいお手伝いしたんだってねー。頑張ったんだねぇ」
にへらっと笑ってマシューくんの頭を撫でた。胸を張るちびっ子カワユス。
「それでね、最近手も掛からないし、ラセット邸もウチもマシュー見に来るお客さんが増えたのよ。マシューもお手伝い継続したい――――」
「おてつだいちがうよ、とくべつにんむ!」
「はいはい、特別任務がしたいそうなのよ。今まで頼ってばっかりだったのに、こんな風にこっちの都合の良い事言うのもどうかと思うんだけど…………」
「良いですよ! もしどうしてもの時は連絡もらえればいつでも歓迎しますよ!」
「もう! 最後まで言わせなさいよ!」
「怒られた! 理不尽!」
そんなやり取りでマシューくんは明日からは特別任務遂行らしい。寂しくなんか無いもん。
子供達を寝かし付けて、バウンティと旅行計画を立てる。昨日話そうと思ったが、絡み絡まれ色々とあって出来なかった。
「高いタワーとか登りたいかなぁ?」
「……は? こんなに高いのか?」
「あれ? 病院から見えなかった? こんな感じで――――」
スマホで画像検索して見せる。
「あ、あったな。そんなに大きいとは思わなかった」
「近くからだと、首がゴキッてなるくらい大きいんだよ。あと、上の展望台はね、曇ってたら下が見えないらしいの!」
バウンティがキョトンとした顔をして、「らしい?」と聞かれた。実は、いつか展望台に上ろうと思ってたら、こっちに来たもんで上った事が無かった。
「んはは。行きたいんだな?」
「……うん」
「じゃあ、そこも予定に組み込もうな」
「やったー!」
次は何が良いかなと思っていたらバウンティが飛行機に乗ってみたいと言い出した。
「おっふ。身分証明書が無いから…………乗れない」
「そうか…………」
解りやすくシュンとしてしまった。そう言えば飛んでいる飛行機見てちょっと興奮してたっけ。窓に張り付いて口開けて上見てたもんな。
「空港……飛行機が飛び立つ場所があるの、目の前で飛び立つの見れるけど、見に行く?」
「ん!」
やることリストに書いてもらう。
ふと思い出した。たしかヘリコプター遊覧が……。
「あったー! バウンティ、ここ!」
「これ、ヘリコプターか? イオの玩具より丸いな」
「あれは戦闘機、これは遊覧用なの。ちょっと高いけど、大人六人まで乗れるってよ。飛行機よりは低いけどね」
「高いのか? こっちの金額では白金貨何枚だ?」
「……すんません、庶民……カッパー的にです。はい」
二十分遊覧で十六万円だった。しかも『~』! からってなんだ。何か追加料金があるのか? からって表記が怖い。
――――いや、高いよね? 普通に海外旅行に行けちゃうよね? 手取りの給料くらいはあるよね!?
「なんだ」
たかがそれだけかみたいな顔されたからギッと本気で睨んだ。
「あ、いや、でもそうだな。高いよな! 二十分だけだもんな!? 金貨十六枚あればいっぱい肉食えるもんな?」
なぜに比較が肉なんだ。まぁ反省したようだから許してやろう。
ヘリコプター遊覧も一応リストに入れた。
観光雑誌をペラペラ捲る。
「ん、遊園地か?」
バウンティが指差したのは大きい公園の遊具施設。絶対に遊園地とは認めない。いや、ロープで『あーああー』ってターザンみたいなやつとか、障害物レース出来そうな丸太の遊具とか、巨大なジャングルジムとか楽しそうだけどさ。
こっちの公園に遊具とか無い。ただの野っ原と運動しやすそうな土のグランドだけだから勘違いもするんだろうか? 写真の写し方が上手いとかの問題かもしれない。
動画で無いか探したら三分程の施設案内動画があったのでバウンティの隣に移動して一緒に見る。
何かフンスフンス鼻息が荒いので横のヤツの顔を見たらキラキラしてた。物凄く輝いていた。
――――やってみたいのかぁ。
つか、ここの公園に作っちゃえば良くないかな。とか先程『庶民』とか言い張った人の言う事じゃ無い気がするが、アレはアレ。コレはコレ。
「駄目だ、本物見ておかないと、ちゃんと設置出来てなくて危ないかもしれないだろ? 視察は必要だ」
とか、キリッとして言ってるけど、口の端がちょっと上がってる。
「行って遊びたいんなら『遊びたい』って言わないとリストに入れてあげないよ?」
「っ! ここで遊びたい! アステルとイオと遊びたい!」
「はいはい、リストに入れましょうねぇー」
「ん!」
ちゃんと言えたのでナデナデしておいた。
遊具施設で遊ぶんなら、テーマパークも行くだろうか? ネズミさんの所は人混みが凄いし、待ち時間も長い。そして日本は既にこちらより暑い。
――――無しだな。
スパンとページを飛ばして行くと、色んなブランドショップが集まって町みたいになっている施設の特集が書かれていた。かぁさんはコレが読みたかったのだろうページの端が折り曲がっていた。
「お店か?」
「うん、色んなお店が寄り集まって一つの町みたいになっている所だよ。お洋服屋さんとか家具屋さん、玩具屋さん、アクセサリー、食べ物、何でも揃いますよーって感じかな」
「ふーん。カリメア好きそうだな」
「あ、やっぱり?」
かぁさんがチェックしているお店が妙にカリメアさんが好きそうな化粧品とかあるお店や雑貨屋さんだったし。何気に二人の趣味は合うのだ。金銭感覚はチョイずれてはいるけど。
「どのみちお買い物はしたいだろうし、ここもリストに入れておこうか?」
「ん、そうだな」
あふあふと欠伸をして時計を見ると〇時を回っていた。今日はここまでにして寝ようかと言うとサッと抱き上げられた。
「ベッド、すぐそこですけど? 何したいのかな?」
「ん?」
――――チュッ。
「可愛がりたいなと思ってな」
「……健全な方で?」
「…………夫婦で健全に、な?」
キラッキラの笑顔で『な?』とか言われても。三日連続じゃないっすか。未だに痺れと闘ってる癖に。
「疲れるとまた痺れが酷くなるよ?」
「疲れない!」
「…………明日」
「約束するか?」
「…………明日以降で」
「明日!」
暫く口論したが明日で決定らしい。何だこのするかしないかで予定を決めるの。全くムードが無い。
「はあぁぁ。何か、ただの性欲処理の予定決めみたいに感じるよ。自慰の道具でも買う? 薬局に売ってたよ?」
「っ…………約束、無しでいい! 二人の気持ち、重なった時でいいっ!」
なぜか半ベソで抱き締められた。あと煩い。情緒不安定はまだ続いてたらしい。
ゴーゼルさんはコンビニに連れて行けば満足だろうと二人の意見は一致した。
次話も明日0時に公開です。




