128、ポケットの中には……
夕方、バウンティにアステルとイオを迎えに行ってもらうついでに、ケーキも買ってきてもらった。
そして、何となくそんな予感してたけど、ゴーゼルさんとカリメアさんも来た。
玄関で出迎えて、先ずは謝罪から。
「毎度毎度毎度、お世話かけます」
「いーのよ。お返しは異世界の旅行案内で許してあげるわよ?」
「はいっ!」
「「はい!」」
ビシッと敬礼して了承すると、アステルとイオも隣に並んで敬礼した。
「あ! あと、お花の手配もありがとうございました」
「あら、気付かれたのね」
バウンティに花束を用意するとかいう能力皆無だと思う。思い付いてカリメアさんに頼んだパターンだろうなと思っていた。それでも物凄く嬉しかったんだけどね。
「自分からプレゼントしたいって言い出しただけ成長したわよね」
「ですねー」
バウンティは何となく気まずくなったのだろう、早足でダイニングに消えて行った。私達も後に続く。
「あら、今日の炊き込みご飯は何か……風味が良いわね。芳醇な香りがするわ」
「隠し味? 的なものをいれました」
パタパタとキッチンから酒瓶を持ってくる。瓶に書いてある説明を読む。といっても、果物をお酒に漬け込んで作った果実酒ってだけだけど。ホワイトリカーでレモンとか漬け込んでみようかな。果実の漬け込み酒って、作り方は梅酒と何ら変わらないみたいだし。
そんな事を思いながら炊き込みご飯を食べているとバウンティ「おかわり」と炊き込みご飯を入れていたお皿を出してきた。
いやね、お皿ってどうかと思うんですけどね。スープボウルに入れると漏れ無く『頭大丈夫?』って顔されるからお皿に盛る。
白米はそうでもないけど、炊き込みご飯を平たいお皿に盛ると何か違和感。炒飯は平気なのにな。不思議。
「ごめん、ご飯はもうないよ。白米は今急速で炊いてるからもうすぐ出来るけど……」
「…………師匠のせいか」
バウンティが恨めしそうな目付きでゴーゼルさんを睨んでいた。ゴーゼルさんは何時もの如く視線をずらし、黙々とご飯を食べていた。
どうやらゴーゼルさんが言い出しっぺのようだ。
その後、ケーキを食べつつ日本に行く予定を立てた。数日は寝込むだろうから近くのホテルに連泊するか、今井家に泊まるか。部屋は何とかなる。かな? 両親に要相談だ。
取り敢えず出発は十九日の朝に決まった。ゴーゼルさんとカリメアさんはそこから二週間ほど休暇を取っているそうだ。それぞれ見て回りたい場所があるらしい。二、三日プランを練ってプレゼンする事になった。
玄関で二人を見送り、子供達をお風呂に入れて寝かしつける。
「もーし、かぁさん?」
『なにー?』
「それが、十九日なんだけど――――」
事のあらましをザクッと話して寝る所をどうするか聞くと、家に泊まれの一点張りだった。
『カリメアちゃんのお世話したい! ゴーゼルさんの筋肉さわりたい!』
――――母よ、発言がギリギリ過ぎるぞ。
まぁ、暴走したかぁさんは放置として、とーさんはどうなんだろうかと確認すると、大賛成との事だった。体調崩すならどんなご飯にしようかな? などしょうもない事を悩んでいた。ゴーゼルさんは普通のご飯で良い。たぶん焼肉出されても食べる気がする。カリメアさんは胃腸を労る感じのご飯が良いだろうけど。
色々と計画を話していたら、とーさんが爆弾投下してきた。
『そうそう、前に奏多が金か宝石持ち込もうかなっていってたよね?』
「あー言ったねー」
『宝石店の友人に、奏多が海外の貴族みたいな所に嫁いだ体で話したんだよ。ダイヤ以外なら宝石商が買ってくれるかもって。石だけの方が良いらしいんだけど、見てもらう?』
バウンティに説明すると何かを思い立ったらしく、いつものウエストポシェットを取って来た。
「何して――――」
ジャラジャラとポシェットの中を掻き出す。白金貨とか、何かいっぱい入ってるなーと思っていたら、その中に十個くらい一センチから二センチくらいの青や赤、緑、透明な宝石が入っていた。その透明なもの以外をバウンティがヒョイヒョイ摘まんで渡して来た。
「ん、入ってた!」
「いやいやいや、入ってたって、いつから!?」
「…………十年? もっと前かも」
怖い。この人の適当さ、凄く怖い。てか、時々バウンティのポシェットから拝借……いや、本人の許可は得てからだけどさ。拝借した事もあったけど、まさか宝石まで入ってるなんて気付かなかった。
『あはははは! 豪快すぎる!』
「いや、マジ笑えないよ…………何なのこの『ポケットにあめ玉入ってた!』みたいな渡し方」
『まー、時間ある時に持って来てくれたら友人に渡してみとくよ』
「あー、今持って行くね」
今井家に飛んで、少し話して、ついでに去年の観光案内雑誌も貰って、おやすみを行って戻って来た。バウンティの膝の上に。
「あのー、離してもらえると有り難いんすけどぉ」
なぜかガッチリホールドされている。解放を希望するも完全無視。
「バウンティさーん? バウンティさんや、寝たのかな?」
「…………カナタはすぐ置いて行く。馬鹿」
――――何かまた拗らせてた!
取り敢えず膝の上でぐるりと半回転して向かい合って触れるだけのキス。頭ナデナデ。ギュッとハグ。の三コンボしてみたら、幸せそうに何かボソッと呟いて抱き締め返された。何か色々と出るかと思ったが放置。
そして、バウンティさんがハッスルしてベッドに連れ込まれたのは言うまでもない。
たまに気付かずに小銭とか洗濯しちゃうよね。オムツとか、地獄を見る。
次話も明日0時に公開です。




